19(婚約編)
1話ずつ毎日21時頃の更新予定です。
鏡の前で、私は胸元の赤い印を指でなぞる。夢じゃないわ。ローブを着ると隠れてしまったけど、リアンがくれた御守りみたい。
シーサが複雑に編み込みをし、髪を綺麗に結い上げてくれると、気が引き締まってきた。今日から頑張らないと。
リアンの第一騎士団の詰所より、事務棟は王宮寄りにある。正門で馬車を降りて、リアンが事務棟まで送ってくれる。来た道をリアンが戻っていく後姿を見て、急に不安が押し寄せるけど、胸元の御守りに手を置いて、いよいよと事務棟に入った。
上官が出迎えてくれ、同僚が揃うと自己紹介をさせてもらった。私はフロイト公爵子息の事務補佐を行うと説明を受けた。
ビアンカには2人の兄がいて、6歳年が離れている上の兄のジェイクが、私の直属の上司となったのだ。
私は用意されてあった彼の隣の席に座る。
「ミリオン嬢、今日からよろしく頼む。」
「はい。フロイト公爵子息様、よろしくお願いいたします。」
「私のことは、ジェイクと。私は厳しいからね。」
ジェイクがニコッと笑う…冗談が通じない私は、本気で肝が冷えていた。怖い…どうしよう。
「まず、これ読んで。あと、この束を清書。次、文書室に閲覧しに行って、この項目を調べてきてくれ。」
私は、手渡された手順書をひたすら読んだ。丁寧に書かれており、職務の全体像がうっすら分かってくる。せっせと紙の束を清書してから、文書室に閲覧しに行く。文書室は、学園の図書室に似てて、心が落ち着く。体系的にまとめながら、調書を仕上げていく。
「ミリオン嬢、この一文が分かりにくい。書き直せ。あと、ここは隣国の文献も勘案して、もっと深掘りしろ。」
私は、指摘された部分にすごく納得してしまい、逆にジェイクが聡明な方なんだと気がついた。怖い気持ちは変わらないけど、次期宰相候補と云われる所以なのだろう。文書室に戻り、隣国の文献を読むと自分が見えてなかった部分もあり、無知さを反省した。
「まぁ、及第点だ。今日は帰っていい。」
「はい。明日もよろしくお願いします。」
私は、初日を終えて、へとへとだった。事務棟から出ると、リアンがいた。
「リアンっ!待っててくれたの?」
「ミリィ、お疲れさま。一緒に帰ろう?」
私は嬉しくて、リアンの手を取ると、リアンも握り返してくれる。手を繋いで歩き出す。
「ビアンカのお兄様が上司になったの。」
「ジェイク様が?忙しい方なのに、珍しいね。」
「そうなの。でも、よく見てくださったわ。」
「明哲な方だから。でも、大丈夫だった?」
「えぇ。明日もがんばるわ。」
私は力無く笑う。馬車に乗ると、リアンの肩にもたれて寝てしまった。
新キャラのジェイク登場です。




