14(婚約編)
1話ずつ毎日21時頃の更新予定です。
リアンとキスした。
優しいキス。
息が上がってしまった私に、リアンは「ごめん。」と言った。私の頬を撫で、やっと落ち着いてきた私に、また「ごめん。」と言って、自室に着替えに行ってしまった。
ソファに座って、自分の唇に触れてみる。今までと同じ唇なのに、なぜか寂しい気がする。…初めてのキス…。
今の出来事を思い出しては、ぐるぐると同じ事を考える。だんだん実感が湧いてきて、自分の顔が熱くなってきた。掌で冷やすけど、困ったことに…一向に効き目がないの!
しばらくすると、リアンが戻ってきて、夕食に行こうと言う。ふと顔をあげると、リアンの髪が薄ら濡れてる気がするけど…お風呂に入ったのかしら?首を傾げながらも、差し出されたリアンの手を取り、大広間まで行く。
「せーの!!」
「ルパルト伯爵令嬢様、ようこそー!」
「ミリオン様、コール伯爵家へようこそー!」
と、皆んなが大きな拍手で迎え入れてくれた。
私はびっくりしてしまい、リアンの顔と皆んなの顔を、何度も何度も往復する。
「ミリィ、ようこそ!!俺の婚約者様、びっくりした?」
リアンが意地悪そうに笑う。
「びっくりしたわ!!……皆さん、どうもありがとう!これから末永くよろしくお願いします。」
「皆、今日は無礼講だ。たくさん食べ、飲んでくれ。ディミトリ、始めてくれ。」
ディミトリの合図で、大皿にのった料理がどんどん運ばれて、飲み物が注がれる。
「皆、ミリィをよろしく頼む。乾杯!」
リアンの号令で、我先にと食べ始める。
「すごい量だわ。」
「ははっ。皆、ミリィの10倍は食べるからね。」
「ふふ。リアン、どうもありがとう。」
リアンは微笑んで、ウィンクしてくれる。食べて、飲んで、楽しい夜は更けて行った。
シーサが「ミリオン様、そろそろ。」と呼びにきたので、部屋に戻り、寝る準備をする。
湯浴みでは、シーサが小さく歌いながら頭を揉み揉み洗ってくれ、またもや湯船で寝てしまいそうになる…シーサ、おそるべし。
シーサが私の部屋のベッドを準備しているので、「2人の寝室で寝るのではないの?」と聞くと、結婚式が終わってから使うと教えてもらった。そうなんだ…。
私がよほど不安そうな顔をしていたのか、シーサが「ミリオン様、若旦那様が後から就寝の挨拶に来ますので、大丈夫ですよ。」と言ってくれた。
「シーサ、今日はありがとう。おやすみなさい。」
「ミリオン様、おやすみなさいませ。」
シーサが出ていくと、夜の静けさになる。
慣れない生活、慣れない部屋…明後日から仕事も始まる。がんばりたい気持ちと不安な気持ち。まだ始まったばかりよ、と自分に言い聞かせて、ベッドに入り文官入門の本を読み始める。
ガチャ…。
「…リアン?」
「ミリィ、寝る準備は終わった?」
「えぇ、終わったわ。」
「今日は、朝から忙しかっただろ。疲れてない?」
リアンはベッドの端に座って、私の髪を撫でてくれる。
「疲れて、実はお昼寝しちゃったの。ふふ。」
「うん…。ミリィが眠るまで、ここにいても良い?」
「いいわ。」
私はベッドに潜りこむ。リアンが手を握ってくれる。あったかくて気持ちが良い。
「明日はゆっくり寝てると良いよ。」
「ちゃんと起きるわ。リアンを送り出したいもの!」
「ははっ、分かった。」
リアンが私の額にキスしてくれる。
「おやすみ。ミリィ。」
「おやすみ。リアン…。」
瞼を閉じると、手に心臓があるみたいに、ぽかぽかあったかい。リアンが指を撫でて、ここにいるよって教えてくれる。私は、ほっと安心して眠りについた。




