15(婚約編) リアン〜side〜
1話ずつ毎日21時頃の更新予定です。
俺は獣かっ!
頭を冷やすため、水を大量に浴びる。
ミリィの艶やかな瞳を見たら、理性を失った。
「はぁー。」
初めてのキスは、綺麗な花畑や月夜の晩みたいな場所でするべきなのに…取り返しがつかない。
柔らかかった。そして甘かった…。
消えろ、煩悩!!と再度、大量の水を浴びる。
これから歓迎会もあるし、時間がない…取り戻せ、理性を。
歓迎会では、ミリィもちゃんと食べてたし、卒業式の頃より顔色もだいぶ良くなった。でも、今日は疲れてるだろうから、早く休ませた方がいいな…。シーサに目配せする。
俺も寝る準備を済ませ、明日の書類に目を通す。
コンコン…。
「失礼します。若旦那様、ミリオン様が就寝されます。」
「分かった。シーサ、今日のミリィはどうだった?」
「はい。今日のミリオン様は、お優しくて、ゆるふわで、すべすべで、あと良い匂いがして、その…最高でした。」
「はぁ。もういい、さがれ。」
頭が痛い。シーサよ、そういうことじゃないんだ。
ミリィの部屋に行くと、ベッドで文官入門を読んでいる。俺に気付いたミリィは、ほっとした表情をした。
手を握るとミリィの指先が冷たい。心配になり、さすっているとだんだん温かくなってくる。瞼を閉じたミリィから、すやすや寝息が聞こえてきた。
こうして見ると、寝顔のミリィは5年前に初めて図書室で見たあどけない少女のようだった。あの頃も、王立学園や煌びやかな王都の生活に慣れずに困っていたが、今もそうなのかもしれない。慣れない家に連れてこられ、慣れない人間に囲まれて、慣れない食事をし、慣れない寝台で眠る。ミリィに負担ばかりかけている。文官の寮は学園の友人達もいるのに、ここに連れてきたのは、少しでもミリィと一緒にいたい俺の我儘だった。
そっとミリィの柔らかい髪に口付けを落とし、部屋を後にした。
次の朝、ディミトリに、今日ミリィが何かしたいと言い出したら叶えるようにと指示し、あと朝食は一緒に食べる旨を伝えた。
2人の居室にあるテラスに、ミリィは座って待っていた。逆行の朝日に照らされて、白金の髪が透け、細い頸が美しい。
「おはよう。ミリィ。」
「おはよ!リアン。」
ミリィは、カイチの作るパンが気に入ったようで、「ルパルト領の小麦の薫りがするし、もっちもちよ!」と喜んでいた。
朝食の後、出仕の準備をする俺を見にきて、「このタイは、私が結ぶわ!」とか「後姿、よーし!」とか、世話を焼きたがった。可愛いすぎる。
「いってらっしゃい。」
ミリィが、俺の左頬にちゅっとキスしてくれる。
「くっ…行ってくる。」
俺は、名残り惜しいまま、出立した。




