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12(婚約編)

1話ずつ毎日21時頃の更新予定です。

 コール伯爵家のタウンハウスに着くと、筆頭執事のディミトリをはじめとした多くの人達の挨拶と紹介を受け、私付きメイドのシーサが私室へと案内してくれた。


 私の部屋は、白とベージュを基調として、アンティークの木製家具が可愛く、赤いチューリップが飾ってある。私の部屋とリアンの部屋の間に、夫婦の居室と寝室があり、白と淡紫を基調として、織物には白金の刺繍が施され、落ち着いた仕様だった。


 シーサに「お部屋はいかがでしょうか?」と聞かれ、とても気に入ったと伝えた。私室で、シーサがお茶を淹れてくれ、やっと「ふぅ。」と一息ついた。シーサ曰く、夕方ぐらいにはリアンが帰宅するという。


「シーサ、お茶がとても美味しいわ。疲れてたので、身体に染みました。ありがとう。よかったら、シーサのこと教えて貰ってもいいかしら?」


「ルパルト伯爵令嬢様、お言葉いたみいります。私は、筆頭執事の娘で、特技は肩揉みと手技でございます。ルパルト伯爵令嬢様より2歳年上で、身体は大きめですが、駿足ですのでご安心ください。何より力持ちなのが自慢で、ルパルト伯爵令嬢様を抱えて、素早く逃げることが可能です。こほっ、こんなにも…お可愛らしいルパルト伯爵令嬢様付きのメイドになれて、光栄至極でございます。鍛錬を重ねて、身の回りのお世話を精一杯しますので、よろしくお願いします。」


 なんだか、聞き馴染みのない言葉が多かった気がする。でも、シーサが頼もしいのは伝わってきたわ。


「…んと…こちらこそよろしくお願いします。私のことはミリオンと。あと、堅苦しくなく普通に接してください。お部屋も素敵だし、シーサとの生活が楽しみになりました。少し休んだら、邸の案内をお願いしたいのだけど、大丈夫かしら?」


「はいっ、ミ、ミリオン様。お疲れだと思いますので、お昼寝の準備をいたします。ぜひ私の指圧をお試しください!」


「…んと…ありがとう。よろしくお願いします。」


 シーサが素早い動きで準備し、私もあれよあれよという間にお昼寝着になっていた。シーサがうつ伏せに寝てくれと言う。


「…んー!…んんー!」

 こ、これは気持ちがいい。すごいわ、シーサ。私は意識が途切れた。


 すっきりと起きると、昼をだいぶ過ぎた頃だった。シーサがスープや新鮮なサラダ、ほかほかのパンなど軽食を持ってきてくれる。


「シーサ、コール伯爵家のお料理はとても美味しいのね。」


「そうなんですよ。若旦那様から今後はルパルト領の農産物を使うように言われてます。」


「本当に?わぁ、嬉しいわ。まず料理長にお礼に行こうかしら。」


 さっそく私は、シーサに案内をしてもらうことになった。まずは、料理長のカイチのところだ。


 伯爵邸は広く、装飾品からも裕福なことが分かる。騎士団長を輩出する名門のコール伯爵家。リアンのお父様も騎士団長だったが、リアンが第一騎士団の所属になったときに引退し、今は領地にいらっしゃる。あっという間にリアンと婚約したけど、私は持参金もなく、しがない貧乏伯爵家の出身。こんなに良く準備して頂いて、コール伯爵家に早く恩返ししなくては。


 邸の中を見ながら、カイチやメイド長のモニカにお礼を言った。庭も素晴らしく、ライラックやアネモネが咲き乱れている。東屋の周りは芝生が広がり、小さな池もある。


「わぁ、素敵!」と、はしゃぐ私を、シーサと庭師のハッチが笑って見ていた。

 リアンもいつも笑顔だけど、コール伯爵家の皆んなもいつも笑顔ね。不安も沢山あったけど、うまくやっていけそうと、ほっと安堵した。


 いつの間にか、夕方になり、リアンが帰ってくる頃合いだとシーサが教えてくれる。地味な私でも、ちょっとは綺麗って思われたいから、シーサと一緒に気合いを入れて準備してみる。


 モニカからリアンが帰ってきたと言われたので、急いで玄関ホールに向かう。外套をディミトリに渡しているリアンがいた。


「リアンっ!あ…」

 階段を駆け下りると、案の定を足がもつれる。

「ミリィ!おっっ、と、あぶない。ははっ。危機一髪。」


「ふふ。おかえりなさい。」

 私は、ちゃんとリアンの腕の中に抱きとめられてた。


「ただいま。」


 こうして、私達の最初の1日が始まった。

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