21.心の花(2)
ビオラ・ハピナ・ランヴェル。昔々に居た奇跡を呼ぶ盲目姫。しかし見えるようになった事で、奇跡を起こす瞳も同時に無くなった。なので彼女は、姫ながら医術に興味を持った。その医術は、天才と言われるほどの難儀と言われていた物も、不可能を可能にし続けていた。
天才で鬼才の奇才で秀才で、誰も彼女の真似ができない歴代の奇跡を呼ぶ姫と言われた。
天才の彼女の性格は、誰よりも正しく誰よりも勇敢で、誰にも優しくて、正義の味方と言ってもいいほど、勇者と言ってもいいほど、有能で、優秀で、雄材で、誰もが憧れる姫だった。
「俺が知っているアイスローズ王は、残酷で非情な王だと聞いている。どんな人だったんだ?」
「みんなが知っている通りだよ。娘であるあたしの才能を疎ましく思っていたからね」
そう言って、悲しい笑顔でミコトを見た。ふとミコトが目線をサンに向けるとなんか青ざめている事に気が付いた。
「どうした?サン」
「あの、あの〜その〜えっ〜とビオラ様、大事な話があるって言っていませんでしたけ?」
「サンくんこれも大切な話だよ。あと“様”と敬語は、無しでお願いね」
ビオラは、そう言って、窓から指をさした。
「あの部屋にトラードくんたちが捕まっているの。多分あたしの予想では、主催者は、マスコ大臣」
「ック…!やられたか」
「ミコトちゃん、サンくん。今すぐ、トラードくんたちを助けた方が良いけど、頭がいい人は、きっと次の手を考えていると思う。だから、あたしたちは、更にその先の事も考えないとダメなの」
そう言って、ミコトを見た。ミコトは、考えた。そして、ビオラが言いたいことが何となく解ったミコトは、こう言った。
「マスコは、戦争を企んでいると言いたいのか?」
「うん、そう。あたしの仲間には、今ヨモギくん…うんん、フィンドット殿下がいる。フィンドット殿下の反逆者として、あたしたちを利用するつもりだと思うの。でも、そこで、ミコトちゃんが口を出したら反逆者の肩代わりをしたと言われるからあたしたちを庇えない」
「だったらどうした…」
「自分で考えて、発言をする」
ビオラは、ミコトの手を握った。
「でも俺の言葉なんて…」
「ミコトちゃん。あたしは、正しすぎた。あたしのパパ、アイスローズは、間違いすぎた。だから君は、あたしたちのようになったらダメなの。
君の意思は、理想となり、君の言葉は、言霊となる。君の勇気は、皆んなの希望となるの。だから、大丈夫。強い言葉は、皆んなの心を動かす力となる」
「………俺に出来るだろうか?」
その言葉を聞いてビオラは、微笑みくるりと回り花が舞い上がった。
「君は、君が思っているほど弱くないよ。前を向いて、今やるべき方向へ向かって歩くの。時々振り向いても良いし足跡を確かめても良い。転けたって挫いたって、また歩けるようになるまで立ち止まっても良い。
君なら出来る。あたしは、君を信じてるから」
そう言ってビオラは、微笑んだ。
間違いを間違いだと気づけば良い。ムリして正そうとしなくていい。ありのままで、自分を信じて進めば良い。
「君は、あたしたちが出来なかった事をしてるんだよ」
ビオラが出来なかった事。それは、ミコトは、知っている。昔、歴代の王の事を調べたことがある。女王として、過去の偉大なる王を知ることで、彼女は、学んだ。
そして、ビオラとビオラの父アイスローズの事を知った。確かに非情な王アイスローズの間違いを正そうとしたビオラは、父の罪を許した。その許しにより、彼女の偉大さと民が彼女に向ける信頼。そして、勇気を目の当たりにした王は、その罪の大きさに押しつぶられ自殺をした。
「………言葉は、言霊となり力となるっか…強い言葉は、俺の力になるなら勇気となるなら戦争にならないよにしてみせよう。
ビオラ、力を貸してくれ」
「良いよ。でもね、そのかわりあたしの仲間を助けてくれないかな?」
「ああ。そうだな…俺の友達を“解放”する。サン」
「はい」
サンは、お辞儀をしてビオラに合図をした。ビオラは、ニッコリ微笑みサンの後をついてその場を後にした。
その頃トラード達には、暇をしていた。誰も来ない。歓迎をされていない事は、よく分かる。
「ビオラちゃんうまくいっとるじゃろうか?ワシ心配じゃわ〜」
「大丈夫だと思います。ビオラは、ボク達が思っているほど弱くないですから」
そう言って、ミウは、窓から見える風景を眺めた。ふとある事に気がついて、窓を開けた。
「ヨモギ。あのバラ園、何かに見えませんか?」
ヨモギは、不思議そうに言われるまま窓から外を見た。するとそこに見えるのは、間違いなく魔法陣だ。
「どう言う事なんだ?」
一瞬の狂いもないこの魔法陣は、よく知っている。ヨモギは、吐き気と鳥肌が襲いソファーの所へ向かった。
「どしたん?」
「あの魔法陣は、恐らくザックもよく知っていると思います」
そう言われたことに疑問に思いながら窓を見た。するとザックもまた顔色を変えミウを見た。そんな3人を不思議に思いながら見ていたトラードは、窓を覗こうとするとザックは、それを阻止をした。
「見たらいけん」
疑問に思い口を開いた瞬間、ミウが話を続けた。
「あの魔法陣は、戦争で使われた人間側の最終兵器と言ってもいいでしょうね」
「でも、魔法を使えない人間がどうして?」
するとザックは、息を整えてトラードにこう言った。
「魔力と言うのは生命力なんじゃ。生命力が多いほど魔力も多く長生きをする。人間が魔法を使えんのは、弱い生命力じゃから使えんって訳なんよ」
「でも、多くの生命力を集めればオイラ達のように魔法が使えるって事だ」
ヨモギの言葉を理解したトラードは、止めるザックの手を振り払い園を見た。
薔薇のバラ園は、美しい円を書き真ん中には、祭壇があった。その薔薇の色は赤い赤い薔薇。まるで、血のような赤い薔薇だ。祭壇は、何故か寂しげで、ゾッとする恐怖も感じた。
「多くの命を使って魔法を発動させたと言いたいですか?」
「でも、この魔法陣を使う前にハートイルは、殺されたらしいです。この魔法陣を作ったのは、ある非情な王だと言われた歴代最低な王だと思います。確か名前は………」
「アイスローズ」
ふと振り向くとそこには、ビオラとサンが立っていた。ビオラは、少しだけ歩きニッコリ微笑みくるりと回り決めポーズをした。
「みんなお待たせ、ビオラちゃん参上だよ!」
「ビオラ」
ビオラは、ピースをして指を鳴らした。するとビオラの姿をした人形は、花へと戻り舞うように消えていった。
「どうして、その名を知っているんですか?」
その言葉にビオラは、悲しい顔で、窓から外を見た。誰よりも知っているその名前。誰よりも知っているその人物。ビオラは、何故と言う問いに少しだけ嘘をつきながらこう言った。
「あたしが唯一救えなかった人の名前だもん。忘れないよ」
忘れない。ビオラのその顔は、悲しげで寂しげで、苦しげな顔だ。サンは、ビオラの言葉の意味をよく知っているが、ここに来る途中で、ビオラと約束で、それ以上何も言えない。約束。それは、ミコトと話した内容を誰にも言わない事。
ビオラが昔の国の王女だと言う事。彼女の父親の悲劇の事も誰にも言わない事。それは、仲間である彼らにも秘密だと言う事だ。
「それよりも皆んな大丈夫?」
「大丈夫何も無かった。むしろ暇だったぞ」
「そうなんだ」
ビオラは、少しだけ考え彼らの行動の意味を考えた。ヘルは、ここには居ないことは、よく分かる。でも何故ここに閉じ込めたのだろうか?何かをするためなら既に行なっている。
「もしかしたら、この陣を見せるため?」
ビオラは、再び考え振り向きみんなを見た。そして、自分の考えが少しだけ恐ろしく感じたのか顔色が真っ青にかわった。
「大丈夫ですか?ビオラさん」
「大丈夫、だよ。早くここから出よう。ミコトちゃんから命を受けたから」
そう言ってビオラたちは、城から出て行った。




