19.優しい嘘(8)
誰かが泣いている声が聞こえた。ルリラナは、泣き声が聞こえる方へ歩きたどり着いた先にいたのは、銀色の髪をした女の子。
「どうしたの?」
そう質問すると女の子は、涙を拭きながらこう答えた。
「貴女は、まだ知らない。でも、もうすぐ全てを知ってしまう」
女の子は、ルリラナを見た。しかし顔は、見えなく黒く塗り潰された様に解らなくなっていた。しかしルリラナは、何故か見覚えがある様に感じた。しかし思い出せない。ルリラナは、女の子が言っている意味が解らなく返答に困っていると再びこう言った。
「そして、貴女は、選択をしなければならない。貴女の意思で、貴女の心で決めなければならない。それが貴女の役目」
「私の役目?」
女の子は、ルリラナの方へ手を伸ばした。ルリラナは、伸ばす手を握った瞬間、突風に煽られ襲われ思わず目を閉じた。
「大丈夫。貴女なら大丈夫。だから、目を覚まして、貴女を待っている人がいる」
その言葉を聞いて言葉を言おうとすると遮断される様な感覚と何も掴めない事に不思議に思い風が止む頃に目を開けると天井が見えた。そして、横で疲れたのか椅子に座ったままラルクが寝ていた。
ルリラナは、あたりを見て少しだけ考えここは、ラルクの家だと確信をして、そしてさっきのは、夢だと理解した。
しかし夢だとしても生々しく不気味に頭に残っている。
「目が覚めたんだな」
ルリラナが目覚めた事に気がついたラルクは、安心した顔で微笑みながらルリラナを見た。しかしその微笑みは、どことなく悲しげで寂しげで、無理していることは、明らかだ。
「心配かけてごめんなさい。みんなは、どうしたのかしら?」
「別行動してる。でも、もうすぐ此処にたどり着くって鳩便が来た」
「そう、迷惑かけてしまったわね」
ルリラナは、記憶を辿り自分が拐われたことを理解したうえでの答え。ラルクに迷惑をかけたくないと思っているのに結局は、面倒をかけてしまう事に悔しいのか膨れた顔でそう言った。
ラルクは、そんなルリラナを見て少しだけ笑い頭を撫でた。
「俺は、お前なら迷惑かけられようが平気だ。お前が何度狙われようが、お前が何度拐われようが俺が守ってやるし助けにいくよ」
ラルクは、少し間が空き、顔を赤くして撫でる手を隠した。それを見たルリラナは、微笑み起き上がり窓から空を見た。
「ありがとう。でも、私は、守られるだけの“弱い女の子”になりたくないし、“夢を見てただ待っているだけ乙女”にもなりたくないわ。私は、ラルクの隣で、対等にいたいの」
ラルクの隣にいたい。ルリラナは、そう言ってラルクを見た。ラルクは、目をそらし少しだけ考えた。
そんな2人を見ていたナムは、呆れた顔で、ため息を吐いた。
「ラブラブ中悪いけど、少しだけ解った事がある」
「猫が喋ってる」
「うん。もう、このくだりは、良いニャ」
ナムは、ラルクのところへ向かいスノーホワイトを見せた。それを見たルリラナは、本来持っている人であるアディーだと思い何かを察したのか悲しい顔でスノーホワイトに触った。2色に輝く石は、優しく温かく感じた。
「アディーは?」
「…死んだ」
「そう…」
自分のせいでアディーは、死んだと思ったルリラナは、複雑な気持ちで、スノーホワイトを見た。するとナムは、椅子に座りこう言った。
「この神器は、地の魔法が使える神器。だけど、アディーは、氷の魔法を使っていた。それは、アディーの心が凍っていたから本来の力が使えニャかったか、アディー自身が氷魔法しか使えニャいと考えていた。だけど、主人が光魔法しか使えニャいラルクに変わっても氷魔法が使えるという事は、神器の主人がアディーという事が変わっていニャいのか、神器自体の本質が変わったのか、実際のこと解らニャいけど、現時点では、氷の神器に変化したという事にニャる」
「アディーが最後、鎌から剣に変わったのは、どうしてなんだ?」
「それは、アディーの心の変化したから形も変わった。でも、神器の属性が変化するほど心が凍ってしまっていたから、神器が地の神器に戻るのは、出来ニャかったのだと思う」
それほどザンロッタを憎んでいた。でも、アディーは、ザンロッタを許した。セレナーデの思いと願いと一緒に彼を許し、本来の兄妹として彼女は、死んだ。
ラルクは、スノーホワイトを見て少しだけ胸が苦しく感じた。そんなラルクを見て、ルリラナは、心配そうに2色に光る石を見た。
「アディーは、自分がやるべき事を果たしただけなの。だから、悔やまないで。自分を責めないで。あんたは、今やるべき事だけを考えれば良いのよ」
「……ルリ…」
ハーフエルフのラルクではなくザルクルフとして生まれていたら、彼女は、同じ事を言っただろうか?
女神の魂を待つ彼女は、マリカと同じ運命になってしまうのだろうか?
だとすれば、女神を愛したアークルと同じように、マリカを愛したエントのような運命になってしまうだろうか?ラルクは、不安を押し殺して、心配するルリラナに微笑んだ。
「ありがとう」
そんな笑顔も嘘だと思いながら彼女の手を握った。
そして、戦争が始まる。




