8.変わらぬ思い(2)
エルナは、ミウを見て目を閉じ深呼吸をした。ミウは、その意味を理解したのか、1歩、2歩と前に進み彼女もまた深呼吸をした。
「強きほうき星よ。我に力を」
そう言ってホウキを取りだしエルナをみた。するとエルナは、大きな大検を構えミウとザックをみた。
「久しぶりね。ミウ、ザック。元気にしてたかしら?ワタシは、この通り元気よ。でも、このタイミングで、合いたくなかったわ」
「それは、嘘です。君は、ボクたちが来るのを知っています。だから待っていたのですよね?」
エルナは、ギロリとラルクたちを睨み付け地面に大検を突き刺した。
「そうね、そうよ。あの人が、此処に来るって行っていたもの。だから、ワタシは、此処で待っていたわ」
「あの人?誰なん?」
「……貴方たちも知りたいのではないかしら?教会の事を」
そう言ってにっこり微笑んだ。しかし、その笑顔は、どす黒く濁った笑顔。ビオラやミウが見せる笑顔とは、全く違う笑顔だ。エルナは、空を見た。
「ザックにも言わないとダメよね?ワタシは、ずっと貴方に嘘をついていたとなるのだから…そうね、まず言えるのは、“ワタシの呪印は、とっくに消えているわ”」
そう言ってスカーフを取るとライオンの絵の刺青が描かれていた。赤いインクで、描かれていた。それは、まるで不幸の象徴である朱獅子を表しているような絵だった。
それをみたラルクは、一瞬で、意味が解った。それは、ラルクが一番の知っていることだ。
「…朱獅子の目」
朱獅子の目。ヨモギは、その言葉を聞いて、顔が青ざめた。後退りをして、一番後ろへと下がっていったヨモギを見てトラードは、不審に思った。
「何時から?」
「10年前よ。ちょうど、ミウが神子になった日。赤い月の日にあの人に呪印を消してもらったわ」
赤い月の日。ミウが神子になった日。ザックは、その日を鮮明に覚えている。忘れるわけがない。目をそらし考えた。
「ちょっと待って10年前の赤い月の日って…」
「どうした?ルリラナ」
「クク・エルメル・ルース…が処刑された日の次の日…」
ルリラナ青ざめた顔で、ラルクをみた。そして、絶対に言わないと決めていた事を思わず口に出したと気が付き口を押さえた。
ラルクは、考えた。クク・エルメル・ルースは、誰なのか。どの本にも書かれていない名前。そう言えば、誰も家の持ち主のことを言わない。師範がいることは、僅かながら覚えている。
クク・エルメル・ルースは、誰なのだろうか?
「クク・エルメル・ルースは、生きているわよ」
「そんな嘘よ!クク先生は、火炙りの刑で、公開処刑されたのよ!私は、この目で、確り見たわ!」
確り見た。目が焼けるほど見た。そして、ラルクは、それを見て、絶望して、この記憶を忘れている。クク・エルメル・ルースの記憶を忘れている。だから、彼は、否定できない。
「嘘ではないわ。嘘だと思うならワタシを倒して、教会の中へ行ってみてごらんなさい。でも、ワタシを倒すのは、貴方ではない」
そう言ってエルナは、ポケットから何か取りだし投げたすると土の壁が現れミウとザックとラルクから後ろにいる人は、行かれないように仕切られた。
どうやら初めから彼は、そのつもりでいたようだ。ミウとザックとで戦うと。
「準備は、良いかしら?」
そう言って、エルナは、大検を抜き構えた。それをみたラルクたちは、武器を取りだし構え警戒をした。するとエルナは、にっこり微笑み走り出しミウに攻撃を仕掛けた。しかしミウは、攻撃を交わした。
「三日月!」
そう言ってミウは、ホウキを横に降ると水の手裏剣のような形をした物がエルナに向け飛んでいった。エルナは、大検で盾のように構えミウの魔法を交わし次の攻撃をザックへと変わった。
「ハンク!わしは、戦いたくないっ!」
ザックは、エルナの攻撃を交わし続けそう言った。攻撃をする気はない。しかしエルナの攻撃は、止まらない。ラルクは、ザックを助けようとするにも魔法がザックに当たるかもしれない。まして、剣で攻撃をするにもしても隙がない。
それにザックは、戦いを拒んでいる。此処で、助けてエルナを攻撃をすればザックは、エルナの味方をするだろう。そう考えたラルクは、助けようにも助けられないでいた。それをみたミウは、ホウキを構え走って後ろからエルナの横腹を殴った。
「ザック!本気の戦いに迷いも覚悟も無いなら武器を閉まって下さい」
「ワシは…ーーーっ!」
「エルナは、本気です。例え不利だとしても、本気でボクたちを殺しに来ています」
エルナは、ふらつきながら立ち上がりミウをみた。ミウは、ホウキを構え走った。
「三日月!」
「させないわ!」
そう言って、エルナは、地面に円を書いた。
「満月!」
「ミウと同じ魔法だと!?」
エルナは、人間だ。魔法が使えるわけがない。しかし、考えるのは、ただ一つだ。海の神アークルの力。神子の力だ。今のミウは、神子ではない。
「やっぱりエルナが今の神子と言う事ですね」
「そうよ。ワタシが、神子。ミウのように魔力に恵まれては、無いから弱いけれど、ね」
そう言って、今度は、ミウがよく使う水月を使いザックに攻撃をした。
「ザック。何度も何度も言わないでくれるかしら?ワタシは、ハンクじゃあないわ。エルナよ。
そして、ミウが言う通りワタシは、本気よ。本気で、貴方を殺すつもりよ。だから…ーーー」
ザックは、エルナの顔をみた。エルナは、一瞬にっこり微笑んだ後、睨むようにこちらを見ていた。その笑顔の意味。ザックは、何となく解ったような気がした。
「ハンク…もしかして…」
ザックは、誰にも聞こえない声で呟いた。持っていた刀を落とし震える手をみた。
エルナがしようとしていること。それがなんなのか解ってしまった。そしてもう一つのことも
「三日月!」
エルナの魔法がザックの腹部に辺り近くにあった木へ吹き飛ばされた。ザックは、目が開いているがびくともしない。ラルクは、慌ててザックのところへ向かった。
「大丈夫か?」
「ああ。大丈夫、大丈夫じゃけん…」
震える手を押さえながらザックは、立ち上がりエルナを見た。ミウと戦うエルナ。同じ魔法。似たような動き。お互いに本気で戦っている。
「ミウ。“エルナ”の気持ちが解っとんか?エルナは、お前さんの為にしようとしとるんよ。お前さんが神子になるために死を選んどるよ。じゃけど、ワシは…ワシは…っ!」
また逃げようとしている。あの時と同じだ。昔も今もずっと同じだ。変わらない。変わりたい。変わりたい。変わらないとダメなんだ。ザックは、堪らない気持ちが溢れた。
「アホか!」
喉が渇れるほど思いっきり叫んだ。それに驚いたエルナとミウは、動きを止めてザックをみた。
「勝手に悩んで、勝手に選んで、勝手に犠牲面して、勝手に正義だと言って、勝手に死のうとして、アホじゃな。誰も望んでない未来を描く奴等は、皆アホ」
見てないふりをして、犠牲面をして、過去を隠して、押し付けて、逃げていた。
「じゃけど、そのなかでも一番のアホは、ワシじゃな」
エルナは、にっこり微笑み大検を向けた。覚悟を決めたと感じだエルナは、「ありがとう」っと口パクでザックに言った。
するとその瞬間、ミウが付けていたトパーズのピアスが光りだし、光は、玉となりザックの前に止まった。ザックは、その光を持とうと手を前に出すと形を変え光が消えたと思うと刀がザックの手にあった。
「火の神器…不知火…」
ふとラルクがミウが付けていたピアスを見ると琥珀色の石は、燃えルのようなオレンジ色に変わっていた。




