5.希望の心(5)
ミウは、夢を見た。それは、何時も見ている夢では、無い。男の子は、はっきり解っている。解っている。解っていた。始めから知っていた。
ミウが立っている場所は、忘却の海の前。ミウは、深呼吸をして振り向き男の子を見た。
「君は、コンバットって言いたいけれど、君は、コンバットじゃあないですね?」
「どうして、そう思ったの?」
すると男の子は、首をかしげミウを見た
「そんなの解ります。君は、何時もボクの側に居てくれた。だから、解ります。
君は、ボクが間違わないように、迷わないように、ずっと導いてくれて、ボクの大切な人になってこうして無くした記憶を思い出さそうとしてくれた」
ミウは、男の子をぎゅっと抱き締めた。強く抱き締めた。
「でも、もう大丈夫です。間違わないし、同じ事を繰り返さない。もう、何も忘れたくないです」
すると男の子は、にっこり微笑みミウを抱き返した。その温もりは、暖かく。やさしく懐かしい温もり。
ミウは、そこで目を覚ました。
「忘却の海へ行きましょう」
ミウは、ベッドから降りザックを見た。心配そうな顔で、不安そうな顔だ。ミウは、にっこり微笑みザックの手を握った。
「大丈夫ですよ。もう、大丈夫です」
「ミウ…」
もう大丈夫。思い出した。悲しみも苦しくても受け入れる。あの頃は、弱かった。父親も母親も居なかったからと言う理由で、寂しさをもがいていた。
誰かに愛されたかった。そして、愛したかった。でも、本当は、愛されていたことに気づいていなかった。
「あれ?ラルクとビオラは?」
「外にいるわ」
「…解りました。あの…ラルクとビオラの二人だけに話があるんです。少しだけ待ってください」
そう言って、小屋から出ていった。
ラルクの正体。やっとミウは、解った。と言うよりもアークルが教えてくれた。
でも、誰にも言えない。言えば、今までしてきたことが否定している事になるからだ。ミウは、辺りをみて、二人の姿を見つけた。
「ラルク!ビオラ!」
「ミウちゃん。もう大丈夫なの?思い出したの?」
「はい。でも、まだやることがあります。だから、忘却の海へ向かわなければいけません」
ラルクは、頷き解ったと言い歩き出そうとしたのをみてミウは、慌ててラルクの手を握った。
「ラルク。君は、何のために龍王の欠片を取り込もうとしているんですか?」
「…?龍王の欠片は、存在したらダメだってお前が言っただろ?俺が器になって死ぬって言っただろ?」
「はい。確かにそう言いました。それが、教会の教えだからです。でも、それが間違いだと、解りました」
ビオラが言っていたザルクルフは、本当は、優しい龍と言うこと。世界を守るために欠片になったと言うこと。そうなると、本来は、ザルクルフが死ぬべき存在ではない。どうして、負の感情がザルクルフの欠片に存在するのか。死の女神ヘルに関係があるのだろうか。
ミウは、考えた。
ザルクルフの負の感情。それは、多分きっとヘルではない。そして、ザルクルフのものでもない。
「ラルクは、解っていますよね?自分が何者かで、何で出来ているかを。そして、それをビオラは、知っています。言わないのは、ボクたちの為ですよね?」
「…何が言いたいんだ?」
「君は、龍王“ザルクルフ”ですよね」
その言葉にラルクは、動揺した。ばれる筈がない。何一つ油断をしていない。しかし、そこで頷いたら黙っている意味がない。
「どうして、そう思うんだ?」
「君は、龍王の欠片である心臓でそして、何と言っても生きているからです」
龍王の欠片。それは、力の塊。力。それは、世界で唯一無二の膨大な魔力を持つ龍王の魔力。
それを体内に入れると言うのは、負の感情だけではない。大きすぎる魔力までも体内に流れ込む。死んだ者が生き返るほど、人形が動いてしまうほど、大きすぎる魔力。
しかしラルクは、生きている。心も、体も正常だ。
「生きている人には、この欠片を取り込むのは、体も心も耐えられない。耐えられるのは、人形や死体ぐらいです。でも、ラルクは、違います。心も体も異常は、ありません。そう考えると、君がザルクルフの生まれ変わりだと言うことしか思い付かないのです」
ミウは、空を見た。龍王の欠片である目を持っているフォンは、既に死んでいる。そして、なぜか動く人形であるサラとララ。これを作ったのは、コンバット。コンバット。ケット・シー。彼が何者かをミウは、知っている。いや、思い出した。だから、会うために今彼がいる場所に向かおうとしている。
ザルクルフの欠片が何なのか。知っていたのに忘れていた。いや、これは、アークルの力によって、忘れていたわけではない。何者かに仕組まれて忘れていた?
「朱獅子の目の正体…もしかして…」
ミウは、顔色を変え走って小屋に戻っていった。ラルクとビオラは、首をかしげ歩いて戻った。




