25.精霊の母(2)
ラルクは、ザルクルフ。龍王の欠片である目を取り入れる事は、何も問題ない。そう思ったラルクは、歩き続ける。
「おい!ラルク」
「なんだ?」
振り向きラルクは、ヨモギも見た。ヨモギは、目をそらし申し訳なさそうにラルクを見つめる。
「本当に良いのか?」
「ああ。それで、お前の弟が助かるならな」
「…………
お前さんは、死ぬのが怖くないのか?」
死ぬのが怖くないのか?その質問は、何時か聞いたことある。ラルクは、目を閉じ、考えた。
「怖いに決まっているだろ?」
「ならどうして…!」
「俺は、もう…逃げたくないだけだ」
遠い記憶でザルクルフとして生きた時代、多くの人が目の前で殺された。自分を守ろうとした人、自分を憎み恨んだ人、無関係で巻き込まれた人。
知恵を与えた人々の心に闇を作った原因になったと責められ、追い詰められた記憶。
神ではない。ただ人より長生きをしていろんなことを知っていただけで、人より魔力があるだけ。そんな自分を羨まれ、湛えられた。
好きで、城に住んだわけではない。屋根があり雨風を凌げる体を休ます場所が欲しかっただけだった。単なる居場所が欲しかっただけだった。
勝手に従い、勝手に絶望して、嫌われた。でも、人を嫌いには、ならなかった。世界が好きだ。人が好きだ。その気持ちは、生まれ変わっても変わらない。
「この世界が俺は好きだ。ハーフエルフとして生まれて、苛められ嫌われたけど、どんなに周りの人が俺を拒絶しても俺は、この世界が好きだ。だから守りたいだけだ」
ヨモギは、長生きしている筈なのにラルクを見て自分より遥かに長生きをしている気がした。まだ若いはずのラルクは、何を見て何を感じたのだろ?彼が背負ってきた物の重さを知らない。
何も知らない人に龍王の欠片を彼に差し出す事は、弟の為だと思いながらも罪悪感は、消えたりしない。
「オイラは、こんなに良い奴に…」
「ヨモギ。後悔するな。大丈夫だ。元々俺達の目的でもあったんだ。ザルクルフの欠片を集めること。欠片を俺の中に入れること。
まー大丈夫だ。アークルの力による封印は、以前として弱まっているけど無いわけでないから何となる」
「何となるって…」
ミウが、必死に止めようとしている理由は、解る。龍王の欠片には、負の感情が混ざり合うことにより強い魔力を手にいれることは、出来る。しかし、自分の心まで失ってしまう。
ラルクの事は、会ったばかりでどんなやつか知らない。だが、自分を犠牲にして、救って貰うことは、言った本人だが残酷だ。後悔したヨモギは、目をそらした。
「もし、それでも暴走したらお前さん、殺されるんだぞ」
「…ああ」
返す言葉もない。すると大きな湖があり、そこにシルフともう一匹シルフと色違いの妖精ぽいもの白銀とピンクの髪色をした女性が話していた。
「イフティナ!」
「フォン!生きていていたのですわね」
イフティナと言われる女性は、微笑みヨモギとラルクの近くに向かいビオラを見た。
「シルフの言う通り確かにビオラの体から魔力が抜けていますわ。しかし、のよ呪印は、私がなんとか出来る呪印ではないですわ」
「どうしたら良いんだ?」
「鬼は、居ませんか?とくに赤月生まれの鬼族がいるなら助かります」
イフティナは、当たりを見た。しかし鬼族は、いない。赤月生まれの鬼族は、珍しい。ミウは、考えた。ザックの生まれを
「ザックは、たぶん赤月生まれだと思います」
「どうして解るのよ?」
「一度だけエルナとザックの妻子とで誕生日のサプライズパーティを事があるんです。すると、ザックが“最悪な日で生まれたから祝うのは、良くない”って言っていました。鬼族は、赤い月を呪われた日と言っているらしいです」
赤い月は、確かに気持ち悪い。赤、朱、紅。不吉な色。不幸の象徴。朱獅子の色。例えその日にザックが生まれとしても実際にザックは、此処にいない。もしかしたらザックは、死んでいるかも知れない。
「その鬼族は、森の外で戦ってだろ?例え勝っても此処にたどり着けないぞ」
「大丈夫です。ザックは、ボクを探すのが得意なんです」
目を閉じ胸に手を当て言った。そうだあの時もザックは、探してくれた。助けようとしてくれた。守ろうとしてくれた。でも、差忍ばしてくれた手を握る事は、あの頃は、出来なかった。
「ミウ!」
聞き覚えがある声。ミウは、振り向くとザックが立っていた。どうやら戦いに勝ったようだ。ザックの足元には、大きな影。それを見たミウは、涙を流した。ザックは、慌てた顔で、ミウのところへ向かい
「どどどどしたん?ミウ、お腹でも痛いん?」
「お父さんは、笑っていましたか?」
「!!…………ああ」
でも、救えんかった。でも、守れなかった。受け止めることも出来なかった。ザックは、悲しい顔で、そう言いながら白いピアスを見せた。
「これは?」
「トパーズのじゃ」
「お父さんの…」
ミウは、涙を拭きピアスを受け取り耳に付けにっこり微笑んだ。
「ボクは、ザックを恨みます。
だって、ボクは、お父さんとお母さんを知らないですから」
そう言いながらザックの手を握った。
「だから教えて下さい。どんな人だったのか、どんな事をしていたのか、ボクに教えて下さい」
「ミウ…」
もう大丈夫だと思った。あんだけ泣いて、もう大丈夫だと思った。なのに、それなのに泣きそうになった。
「教えてあげるけん。トパーズの事もソフィアの事も…」
初めて会ったことも全部包み隠さず話そう。ザックは、深く深呼吸をした。
「ワシの力が必要なん?赤月生まれとかなんとか聞こえたらけど」
「鬼の子よ。そなたは、赤月生まれですわね?」
ザックは、頷きイフティナの前にたった。
「解りました。では、ビオラの腹部辺りに呪印があります。そこに手をかざし私が言った言葉を唱えてください」
「解った」
そう言って、ザックは、ビオラの前にたち手をかざした。
「ケトヨイロノ。ケトヨイロノ。レクオテイトオイロノ。レクオテックスオチノイノノモノコ。ヨメスムナマルスイアガワ。レクオテイキオバトコノレワ…ーーーー」
「ケトヨイロノ。ケトヨイロノ。レクオテイトオイロノ。レクオテックスオチノイノノモノコ。ヨメスムナマルスイアガワ。レクオテイキオバトコノレワ…ーーーー」
ザックは、言われた通り間違えずゆっくりと唱えた。すると、呪印からヘビが現れ飛び掛かろうとした。ザックは、冷静にヘビの首を掴みイフティナに見せた。
「これが呪印の正体か?」
「ええ。そうですわ」
そう言ってイフティナは、ヘビを受け取り持ち上げたと思ったら尻尾から食べ始め気づけば、あっという間にヘビは、イフティナのお腹の中へと消えていった。
「ご馳走さま」
驚きと唖然とドン引きが渦巻くその場で、イフティナは、優しい笑顔で、そう言った。
呪文の言葉を逆に読むと
我の言葉を聞いておくれ。我が愛する愛娘よ。この者の命を救っておくれ。呪いを解いておくれ。呪いよ解け。呪いを解け
になります




