23.海に咲く花(5)
自分のせいだ。自分が悪いんだ。独りになって孤独になって本当は、寂しかったのに、平気な顔をした。
辛いって言えるようになったと思っていた。苦しいって言えるようになったと思っていた。でも、大人になるにつれ口に出すのが恥ずかしく感じだ。
ザックの刀は、ついに影に被われ真っ黒くなった。影は、姿を変え小さな子供の姿になった。
「俺が悪いんだ。俺のせいなんだ。全部、全部俺のせいなんだ。俺のせいで、父さんが死んだ…俺のせいで、母さんが可笑しくなった。俺が良い子じゃあなかったからなんだ」
幼い頃のザックだ。ザックは、考えた。
「違う…」
「俺がソフィアを殺した」
「違う」
「俺がトバーズを殺した」
「違う…」
「俺は、幸せになったらダメなんだ」
「違う…違う違う違う違う違う違うっ!
父さんを殺さないとワシは、死んでたかもしれん。母さんが可笑しくなったのは、元からかもしれん。ソフィアもトバーズは、確かに守れんかった。でも、あいつらは、笑っとった。死ぬのに幸せそうに笑っとった。ワシの幸せをいのったんだよ。じゃからワシは、生きるんじゃ。生きることを教えてくれたあいつらの為に…違う…自分の為に幸せになるんじゃ」
ザックは、小さな子供の形になった自分の影をさわり微笑んだ。
「悪かった。独りぼっちにして、悪かった。もう、離さん。何処までも連れていくけん。もう捨てないけん
じゃからワシの所に帰っておいで…」
一度は、トバーズとソフィアの魔法で、切り離された自分の影。影は、スーっとザックの中に入り刀は、普通の姿に戻った。
ザックは、後ろを向き影があることを確認して、目を閉じた。
「お帰り」
“ただいま”と言う声が聞こえたような気がした。ザックは、目を開けるとディランいやトバーズが微笑んで立ち倒れた。
「トバーズ!」
ザックは、慌ててトバーズのところへ向かい手を握ろうとしたが、トバーズは、泡となり消えていった。
「ザック。ボクの親友のザック。君に出会えてボクは、幸せだ。君に出会えて、本当に良かった」
空耳だろか。トバーズの声が聞こえた。しかし、何処にもいない。あるのは、トバーズがつけていた白いピアスのみだ。
「トバーズ…お前は、ワシのために…」
何となく解った。影に操れていたわけではない。きっとトバーズは、ザックの過去を知り自らザックの影をまとい受け入れるように仕向けたのだろう。
“君なら大丈夫”って嘘をついてまで、わざと悪役になったのだ。
ふと、フォルスの意味を思い出した。
*+*+
「フォルスと言う意味は、海にしか咲かない君の髪と同じ色の花びらをしている花の名前なんだ」
「却下。俺は、男だしそれに勝手にファミリーネームをつけるな」
「まーまー話を最後まで聞けってっ!えーっとその花言葉は“幸福”って意味なんだ。良いだろ?」
*+*+
何時もそうだ。何時も勝手で、マイペースで、正義感があり頑固だ。そんなトバーズを優しく包むように見守っていたのが、ソフィアだ。
ザックは、座り込み目を閉じた。
「ソフィアがワシの事が好きだったって言うのは、嘘じゃな。下手な演技をして、結局良い奴じゃな。お前は、本当に優しい奴じゃな。ワシもお前に出会えて良かったんじゃ。お前らに出会えて本当に幸せじゃった」
呟き静かに涙を流した。
少し休んでから皆の所へ行こう。少しだけ休めばきっと。




