19.海に咲く花(1)
プルートが落ち着いた頃、ラルクたちは、ビオラを背負って道化師に連れられある場所へ向かっている。
「で、お前の名前は、何だよ」
「何度も言っているだろ?ヨモギだ」
道化師の名前は、ヨモギ。しかし、何故、何度も同じことをしつこく聞くのだろうかと不思議に思ったミウは、ついにラルクに聞くことにした。
「どうして何度も名前を聞くんですか?」
「不思議だろ?トラードの話によると“精霊の森”は、イフティナの騎士と御子に守られている。その騎士と御子は、王族の双子兄弟である皇帝陛下と殿下。
そして、精霊の森を知っている人は、恐らくその二人のみだと考えると…お前は、行方不明になっている双子兄弟の兄フィンドット殿下だろ?違うか?」
「…………バレたなら仕方がない…確かにお前さんが言う通りだ。オイラは、フィンドットだ。でも、今のオイラは、ヨモギで通している」
そう言って、道化師のメイクをとりカツラを脱いだ。確かにあの皇帝陛下にそっくりな顔だ。違うとすれば髪が長いか短いかの違い。フィンドットのことヨモギの髪の毛は、腰まで長い髪を後ろに結んでいる。しかし、皇帝陛下は、ショートカット。その違いだけの二人。
ふとルリラナは、ヨモギの言葉を思い出した。
「あんた、皇帝陛下を止めるって言っていたわよね?それって意味ってなに?」
「フォンは、操れている。アイツは、あんな闘技場を嫌って、精霊と妖精たちが暮らせる自然豊かで、皆が幸せで国にしたいと夢見て、平和を愛する奴なんだ」
「何があったんですか?」
ミウは、首をかしげながら聞いた。するとヨモギは、思い出しながらこう言った。
「全ての始まりは、ルティス王国の前王ハートイルとホヌ帝国の前皇帝陛下ゼルガル…オイラたちの父親が死んだことだった」
ミリアの父であり王であるハートイル。そして、ホヌ帝国の前皇帝陛下ゼルガル。二人の王は、けして協力をしなかった。
助け合うことも協力も国を平和になることをしなかった二人の王は、民にとって恐ろしく、恐怖しかなかった。
何時また戦争が起きるか解らなかったからだ。そんなある日、同時に二人の王は、死んだ。原因不明の突然死。王が居なくなったことにより不安と混乱があったが、喜びの声も聞こえた。
「まだ幼かったオイラとフォンは、ルティス王国の王女…現在は、王女になったミリアの協力が必要だった。だから、ミリアに頼むためにルティス王国へと向かった。ミリアは、民を愛する強くて優し奴で、オイラたちの話な耳を傾けてくれた。そこで、はじめて二ヶ国は、平和同盟を繋ぎ協力することにしたんだ」
この平和同盟により二ヶ国を繋ぐ街ビーナスが生まれた。いったいこの目の前にいるヨモギは、何歳なのだろうか?ミリアもそうだ。エルフも鬼族も見た目と実際の年齢と違う。若く見てるが解らない。
ヨモギは、空を見てる悲しそうな顔で、目を閉じた。
「…だけど、それを許さなかった人もいる。オイラは、反逆者の罠だと知らずに騙され易々と城から出てしまったことにより侵入を許してしまった。
侵入をした反逆者は、フォンにこう言った。“オイラは、死んだ”“殺した”と言う帰ってくるオイラは、偽者だと言った。その言葉を信じたフォンは、帰ってくるオイラにこう言った」
『兄さんを殺した反逆者め!兄さんに化けるなんて、恥を知れっ!』そう言って、フォンは、ヨモギに向け剣を降り下ろした。やっとのことで逃げることが出来たヨモギは、フラフラな体とショックのあまりに一つの森にうずくまった。
フォンの目の色は、既に違っていた。あの美しい海のような青色だった瞳は、濁っていた。知っている弟ではない。と感じたヨモギは、決意した。
「変わり果てた弟を元に戻す為にオイラは、なんだってやるって決めたんだ。だから、オイラは、進むしか無いんだ」
「ヨモギ…良い奴じゃなぁ…ずぴー…おじさん…感動した…っ!」
号泣なザックを見て少しでドン引きをしながらもミウは、微笑みこう言った。
「希望は、何時も心にあります。心を忘れない限りない君の願いは、叶います」
「ああ。世の中不思議だ。エルフが、人間と鬼族、ハーフエルフに人魚と旅をしているんだからな」
ヨモギは、ルリラナを見ながら言った。するとルリラナは、目をそらし
「種族なんて、関係ないと思うわ。どんな種族でも心がある。家族もあるし帰るべき場所もあるわ。差別をする人の心こそ醜いものよ」
「…そうだな。そうだよな」
戦争なんて、無い方が良い。殺し合いなんて、無い方が良い。そうだ。そうなんだ。誰も死ぬ理由なんて無い。
「そろそろ、森に着く。武器の準備は、良いか?」
「どうしてですか?」
「精霊の森には、番人がいるんだ」
そう言って、ヨモギは、指を指した。するとそこには、ディランが立っていた。
「番人ってディランのことか!?」
「いや、アイツは違う。イフティナの番人は、精霊だ」
ディランは、ミウを見てにっこり不気味な笑みを浮かべた。
「久しぶり、ジュラン」
ザックは、ミウを隠すように前にたち刀を向け睨み付けた。すると、ディランは、ザックを睨み返しこう言った。
「解っているだろ?ザック。俺が何者で何で出来ているか解っているだろ?ザック」
ディランは、剣を取りだし仮面を外した。仮面を外したディランの顔。ザックは、知っている。
「トパーズ…」
あの日あの時、ザックの目の前で死んだ親友でありミウの父親であるトパーズ・プライ。
ザックは、目を閉じ深呼吸をした。
「やっぱりお前だったんじゃな。解っとった。気づいていたんよ」
でも、あの時トパーズは、死んだ。ソフィアの魔法と共にザックの影と共に死んだ。だから、目の前にいる人は、トパーズではない。トパーズの体を乗っ取ったザックの影だ。
「ラルク。ここは、ワシに任せて先に行っといて」
「ザック…」
「確かに呪印は、鬼族なら消すことが出来る。じゃけど、ビオラちゃんは、精霊じゃけん、無闇に出来んけい精霊の森にそのままの状態で行ってイフティナに頼むことにしたんじゃろ?
じゃったらお前たちは、進むじゃ。ビオラちゃんのために進むじゃ」
何時か、こうなるって気づいていた。解っていたんだ。ディランに初めてあった時にそう感じた。そう思っていた。
「それにディランは、ワシしか殺せん。じゃから、ミウを頼んだ」
そう言って微笑み走ってディランに向け刀を降り下ろした。ディランは、ザックの攻撃を全て受けとめふと先にいくミウを見た。
「まだジュランと一緒にいる。ソフィアだけじゃあない。ジュランまで、神子にして、苦しめた。守れって俺は、言ったはずだ!
なのに、守れて無いじゃないかっ!」
確かにそうだ。間違って居ない。ソフィアも守れなかった。ミウも守れなかった。そして、親友であるトパーズも守れなかった。
「死ねっ!死ね死ね死ね死ね死ねっ!しんで、ソフィアに謝れ!ソフィアは…ソフィアはっ!」
ディランは、ザックに剣を振り涙を流した。そして、ザックを睨み付けた。
「お前の事が好きだったんだよ」
「え…」
初耳だった。ザックは、動きを止め混乱した。ソフィアが自分の事が好き?トパーズではなく自分?
ソフィアは、確かに初恋だった。でも、それと同時にトパーズもソフィアのことが好きだった。だから、悪者だった自分よりトパーズの方が幸せになると考えたザックは、身を引き二人の幸せを願った。
「ほら、なにも知らない。ソフィアの事も俺の事も何も知らないっ!ジュランの事もだ!」
ディランは、ザックの胸を刺した。耳元で囁いた。
「さよなら、親友ザック・フォルス。永遠に眠れ」
そう言って、剣を抜いた。




