18.闘技場と狐と機械都市!(9)
此処から逃げるには、なかなか難しい。何故ならラルクたちの目の前には、多くの魔物と後ろには、ティファニーがいるからだ。
「どうするのよ…ラルク。あんた、頭が良いんだから良い案とかあるでしょ?」
「そんなこと言われたって…」
魔法を使って魔物を倒すにしても武器を使って戦うにしても多すぎだ。次から次へと魔物が増えてくる。そして、多くのエルフが死んでいく。
「いや…やめて…やめて…殺さないで…」
死んでいくエルフたちを見たビオラは、ショックのあまり気絶をした。
「ビオラ…」
「大丈夫です。気絶しただけです。
それよりもこの残酷な光景をどうにかしないとだめですよ」
そう言って、ミウは、ティファニーに攻撃をした。確かにそうだ。魔方陣を消すのとティファニーを倒すのと魔物を全て殺すまでは、此処から逃げられない。いや逃げたらダメだと思ったラルクは、少しだけ考えた。
「ザックを此処へ行こう」
「しかし、ザックさんは、都市外ですよ!どうやって…」
確かにそうだ。ラルクもルリラナもミウもワープ魔法を使えない。唯一使えるビオラは、気絶している。すると道化師は、にっこり微笑みわっかを向けた。
「青き空、白き雲。我は、誓う。天空の時空の彼方へと導け…ーーーリンクワープ」
何処からか鈴の音が聞こえた。すると、ラルクたちは、わっかに吸い込まれ気づくとザックの目の前にいた。
「うお!?ビックリしたー!」
何が起きたのか解らないザックは、慌てた様子で言った。同時に驚いているラルクは、冷静な顔で、こう言った。
「魔方陣を探せ」
「突然すぎてなんかよく解らんけど…解った」
ザックは、冷静に目を閉じ呼吸を整えた。魔方陣のありかを探すには、魔法感知能力を持った鬼族が頼りだ。しかし、ザックは、首をかしげラルクを見た。
「ダメじゃ。解らん」
「どうしてなんだ?」
「鬼族対策しとる。都市全体に魔方陣のような物があるんよ。それを片っ端ら消すにも多すぎで、見つけるのに時間がかかる」
魔方陣のダミーが多すぎ。ザックは、考えた。今、発動していて、危険な魔方陣を探した。
「なら全部消さば良いだろ?位置を教えてくれ」
「無理じゃからいっとるんっ!」
「出来る。オイラのエンジェルリングなら…」
そう言ってわっかをザックを見せた。すると、ミウが驚いて道化師のところへ向かった。
「エンジェルリング…確かにそれなら可能ですね。ザック、彼に魔方陣の位置を正確に教えてあげてください」
「じゃけど…」
「彼なら出来ます。信じてください」
「…解った」
そう言ってザックは、道化師の所へ向かい地図を片手に説明をした。すると都市の方から地響きが聞こえロボットが見えた。ティファニーだ。
「二人とも後は、頼みましたよ。ラルクも下がって下さい。ルリラナは、ラルクの怪我の治癒をお願いです」
そう言ってミウは、ホウキを取りだしティファニーがいる所へ走っていった。
「ミウ…お前…気づいていたんだ…」
ミウは、気づいていた。でも言わなかった。腕が痛いことも気づいていた。ラルクは、ビオラをゆっくり寝かせ座り腕を撫でた。するとルリラナは、ラルクの腕をつかみ悲しそうな顔で、見つめた。
「ラルク……こんな怪我をして…」
「大丈夫だ。少しだけ痛めただけだ」
「でも、それでも怪我をしているには、変わりないわ。それなのに戦って、ビオラを背負って…無理しすぎよ」
今でも泣きそうだ。ルリラナは、何時もそうだ。子供の頃からそうだ。こうして、怪我をすると心配をする。そんなとき必ずラルクは、ルリラナの頭を撫で微笑みながら言う。
「そんな時必ずお前らが助けてくれるって信じているから俺は、頑張れるんだ」
「ラルクさん…僕も信じています」
そう言って剣を取りだし深呼吸をした。
「ミウさん一人では、大変だろうと思います。だから行ってきます」
大丈夫。皆は、頑張ってる。逃げるわけは、ならない。守る。ミウを守る。あの時、守れなかった。強くなろうと決めたのに、苦しくても逃げない。
トラードは、走ってミウを追った。
「水月!」
都市の中心の方からミウの声が聞こえた。ミウは、大きなロボットに化けているティファニーと戦っていた。
「ミウさん!」
「トラードっ!」
トラードは、周りにいる魔物を殺し走ってミウがいるところまで行った。
「我が主の心臓をよこしなさい!」
「渡しません!」
ラルクの心臓を守る。ミウを守って、ラルクも守る。家族を守る。守れなかった弱かったあの頃の幼かった自分ではない。トラードは、鋭い目付きで睨み付けた。
「何よ…人間の癖にこの私を睨み付けて…生意気よ!」
ティファニーが拳を下ろそうとするが体が動かない。まるで、蛇に睨み付けられた蛙のように動くことが出来ない。
「どうして、動かないのよ…?」
「ミウさん!今です!」
「はい!」
ミウは、深呼吸をしてホウキをクルクル回し降り下ろした。
「三日月」
すると水は、無数の鋭いナイフのような型になりティファニーに向け飛んでいき切りつけた。
「トラード!」
「はい」
体制を崩したティファニーは、化ける魔法が解け元の狐の姿に戻ったことに気がついたトラードは、ティファニー喉に剣を向けにっこり微笑みこう言った。
「僕たちの勝ちですね」
「な、何よ…人間の癖に…人間の癖に…っ!
私は、だからこの世界が嫌いなのよ!」
そう言った瞬間、竜巻が現れティファニーを包み込んだ。竜巻が落ち着いたと思ったらその場にティファニーは、居ない。
「ディランの魔法…」
辺りを見るがディランは、居ない。気づけば魔物も居なくなっていた。どうやらザックたちも終わったようだ。
「トラード…ティファニーに何をしたんですか?」
「え?なにもしてませんけど…」
お互い顔を見て首をかしげた。ティファニーは、動けなかった。その理由考える。
そして、思い当たるのが一つしかない。それは、母であるメデューサから貰ったあの目だ。
「そうか…お母さん…ありがとう」
これで、皆と戦える。迷惑かけず戦える。トラードは、目を押さえ少しだけ涙を流した。
「トラード…」
ミウは、辺りを見た。多くの怪我人がいる。こんなときに皇帝陛下は、何をしているのだろうか?自分だけ逃げたのだろうか?エルフたちは、何故戦わないのだろうか?
武器を使って戦うことをしなかった人々は、逃げるだけたった事に疑問を抱いたミウは、少しだけ考えた。そして、違和感も感じ再び見た。
「武器屋も防具屋もありません。魔法道具屋は、あるのに…何処にも」
武器屋と防具屋は、確か闘技場には、あった。でもそれ以外何処にも売ってない。武器を持っている人すら居ない。そして、なんと言ってもギルドすら無さそうだ。
全て、機械任せのこの都市は、戦うことも忘れてしまっている。ミウは、ホウキをしまって、歩き出した。
「哀れですね」
そう言ってミウは、その場を後にした。




