17.闘技場と狐と機械都市!(8)
ヘルが彼処にいる。こんなに簡単に見つかるとは、思ってもなかった。殺したい。殺したい。今すぐヘルを殺したい。でも、今手に持っている剣は、精霊の剣ではない。ただの何処にもある剣だ。
ヘルを殺したい。でも、此処からでないと何もできない。ティファニーを殺さないと二人を守れない。
いや、そんなものでない。ヘルが此処にいると言うことは、不幸がある。大きな災害がある。やっと、今まで不思議だった答えがわかった。
「だから、ラルくんの身の回りでよく矛盾した不幸があったんだね」
ラルクがザルクルフだから。ザルクルフを恨む人が増えるほどこの世界は、歪んでいく。嘘を大きくすればするほど、元に戻れなくなる。
ビオラは、剣を強く握り息を整えた。落ち着いてティファニーをみる。殺さないと守れない。しかし、さっきみたいに我を忘れて戦うのは、もう嫌だ。
ティファニーは、バグ転をすると別な姿を変えた。その姿は、大きな機械のようなロボットのような物だった。
「ホニマー…でも、弱点までは、変えられない」
「でも、特性と使える魔法は、その物よ」
そう言ってビオラに向け拳を下ろした。ビオラは、ギリギリなんとかティファニーの攻撃交わし剣を降るが斬れない。
「…固っ!」
剣より固い鉄。ビオラの本来の攻撃であるパンチでさえ太刀打ち出来ないだろうと思う固さ。だからといって、魔法を使って戦うにしても花の魔法しか使えないビオラの魔法は、ティファニーにとって弱点でもない。それに現在ビオラの魔力は、別の力に使っている。
「魔法を使わないのかしら?」
「使わないよ」
使えないことは、バレていない。しかし、それも時間の問題だ。
勝つには、ロボットよりも強くて固い刃か、水の魔法。魔法道具も持っていないビオラに勝ち目がない事が解る。しかし図体が大きい割には、動きが遅いロボットの攻撃を交わすのは、簡単だ。
「さっきより弱くなってないかしら?」
「そうかな?」
エルフの時は、精霊の力ではなく負の感情で戦った。負の感情。ヘルにたいしての憎しみによる感情。それでは、アストが願った勇気の精霊バルキニーではない。
解っている。それは、誰も望んでないことだと。
「仕方がないわね」
そう言ってティファニーは、何か合図をした。すると多くの魔物が観客席と戦闘場に現れた。それを見たラルクとミウは、顔を見合わせ頷いた。
「ビオラ!援護をします!なので、ラルクに剣をっ!」
「ミウちゃん、ラルくん…うん、解ったっ!」
そう言ってラルクに向け走った。しかしティファニーは、拳を下ろし邪魔をし魔物は、二人を襲いかかった。
「水月!」
魔物とティファニーに目掛けてミウは、攻撃をした。
「っ~~!痛いじゃないの!卑怯よ!私の弱点を攻撃するなんて!」
「痛いかどうかなんてボクは、知りません。先に卑怯な真似をしたのは、そっちじゃないですか?」
そう言ってにっこり微笑み水の魔法をティファニーに向け攻撃を連打した。
さすが、ミウだ。さすがラルクだ。
そして、観客席で戦っているルリラナもトラードも負けてない。兵士と一緒に戦っている。気づけば、皇帝陛下も既に居なくなっている。
これが仲間って言うもので、これが時代の違い。歴史の流れだ。
「あたしが知っていること全てが世界のあり方じゃあないだね…」
少しだけしか見てなかった。少しだけしか知らなかった。少しだけしか感じなかった。
「ビオラ!」
後、少しでラルクが目の前に来る。ビオラは、剣をぎゅっと握った。
「ラルくん、逃げてっ!ミウちゃんと…皆と一緒に逃げて!」
そう言ってラルクに剣を渡した。
「ビオラは?」
「あたしは…ーーーー」
逃げられない。魔物を皆殺さない限り災害を最小限に納めるために此所で、戦うしかない。
守らないと。助けないと。そう強い思いで一歩踏み出そうとすると目眩で、ふらついた。
「ビオラ!」
「っ…!こんな時に魔力が…っ!」
しかし強くて膨大な魔力で、保っていた体は、力尽き動けなくなった。意識も薄くなりまともに立つことすら出来ない。きっとそれは、あの呪印のせいだろう。
「あたしは…まだ…」
此所で、立ち止まっている暇はない。立つんだ。進むんだ。彼処にヘルがいる。ヘルが彼処で見ている。
ビオラは、ヘルを再び見た。しかし、そこには、誰もいない。ロープを着た人すらいない。
「うそ…そんな…」
一瞬で消えた。跡形もなく消えている。音もなく静かに消えていた。魔法の反応もなく、消えていた。
やっと見つけたのに。なのに見失った。ビオラは、立って探す魔力もない。
だけど、周りには、魔物がいる。ティファニーがいる。ラルクたちがいる。災害が終わったわけでない。不幸が消えたわけではない。
「逃げるぞ」
そう言ってラルクはビオラをおんぶして、走った。しかし、魔物がラルクを狙い攻撃を仕掛けるが、矢とわっか状のものが飛んできた。飛んできた方を見るとルリラナ、トラード、そして、道化師。ラルクは、道化師を見て少しだけ考えた。
「みんな、大丈夫?」
「ああ。ありがとう、ルリラナ」
変な人だ。怪しい人だ。危険な人だ。助けてくれたのは、良いが、明らかに怪しい。ラルクは、ルリラナとトラードを守るように立った。
「なんだお前は?」
「見て解らないのか?教えてやるよ…オイラは…道化師だっ!」
「…………」
やっぱりこの人は、怪しい人だと思ったラルクは、呆れて何も言い換えせれなかった。




