16.闘技場と狐と機械都市!(7)
強く願った。願った。また守るために願った。でも、同じ過ちを繰り返さない。繰り返さない為に戦う。
すると、懐かしい声が聞こえたような気がした。
『ビオラ』
その声は、もう二度と聞けない声。もう二度と会えない人の声。しかしその声によりビオラは、勇気付けられ決心をした。
「あたしは…どんなことでも諦めない…逃げないって…決めたんだ…」
石に強く願った。一瞬でも良い。強く、強く願った。最後の願いを願った。
「解ってる…目が見えないのは、あたしが生まれつき見てないから。動けないのは、あたしが人間であることを諦めてなかったから…」
怖い。でも、もっと怖いことがある。ビオラは、深呼吸をして、耳をすませた。
そうだ。人間であることをやめよう。人間と精霊の狭間でいる事をやめよう。
もう捨てた諦めた事なんだ。もがいても無理なんだよ。
「死ね…死ねシネ視ね詞ねシネ死ねシネシネ四ね子ね死ね死ねしししし死ねえええええ!!!!」
剣を降り下ろすエルフだがビオラには、当たらなかった。しかしビオラは、その場から動いた様子はない。
「無駄だよ」
ビオラは、目を開けエルフを見て今まで立ち上がる事が出来なかった筈なのに普通に立ち上がった。
「あたしは、死なない。まだ死ねない。ヘルを殺すまでは、あたしは、負けたりしない…」
もう、諦めない。もう、逃げない。もう、目をそらさない。もう、間違わない。もう、迷わない。
もう、誰も死なせない。
ビオラの中で何か切れる音がした。
「剣を返してもらうね」
そう言ってビオラは、にっこり微笑み剣の刃の部分を握った。強く握るためポタポタと血が垂れる。しかしエルフは、引くことも押すことも出来ない。微動だもせず顔色も変わらないビオラを見て、更に恐怖を感じた。
「何なんだよ!?お前は…っ!化け物かよ!」
「……」
エルフの腹部と腕を蹴り剣を取り返した。
それを見ていたルリラナは、何か可笑しいと思いながら観客席から目を細めた。
ビオラは、滴れる血を見て自分の魔法で怪我を治し何事も無かったように歩き始めた。そして、エルフの腕を一瞬で斬ったのだ。
「うわああああ!」
大量な血が流れ落ち猛烈な痛みが体に走る。エルフは、座り込み切り落とされた腕を持った。叫び声が耳に残る。
「あの姉ちゃん、突然どうしたんだ?」
道化師の格好をした人が立っていた。エメラルド色の髪色。ルリラナは、不思議そうに道化師を見た。
「解らないわ」
ビオラは、強いって知っている。でも、何か違う。何時もの温厚な彼女ではないような気がする。
「少しだけ聞いても良いかしら?この近くに精霊の森があるかしら?」
「ある…だが行くには、難しいな」
「どうしてですか?」
道化師は、空を見て少しだけ考えた様子であの皇帝陛下をみた。
「あの森は、イフティナがいるって言われているが、守る御子とその騎士がいる」
「御子と騎士…ええ。知っているわ」
「その御子があの皇帝陛下で、騎士がその兄だ。皇帝陛下は、すでに人の心を無くしている。だから、無理なんだ」
人の心を無くしている。では、何だろうか?ルリラナは、皇帝陛下をみる。そして、道化師を見て考えた。
「あいつは、操られている…あいつを止めるには、あいつを救うためには、オイラしかいない」
「え?」
道化師は、目をそらし少しだけ考え歩きその場をあとにした。
「きゃあああ!」
突然の叫び声。振り向くとエルフの首は、落ち体から大量の血が吹き上がり、ビオラの黄色の瞳から赤色の血の涙を流し立っていた。
「ビオラ…」
ビオラは、不気味に微笑み次の相手を見つめた。次の相手は、ケバい化粧の女性。ティファニーだ。
「あの時のホニマー!」
「ってことは、朱獅子の目が此処にいるって事ですねっ!」
朱獅子の目。ザンロッタが此処にいる。ラルクとミウが危ない。しかし、あの中には、入ることが出来ない。
「ルリラナさん。ホニマーについては、ビオラさんに任せましょう。僕たちは、他に朱獅子の目が要るか探しましょう」
「そうね…」
でも、任せても良いのだろうか?嫌な予感がしたルリラナは、静かにビオラを見た。
血の涙。赤い血。不吉な色。目の辺りに怪我をしている訳でも無い。目から流れ落ちている。そして、その涙を気にもせず無言で、ティファニーを見つめているビオラ。
「今度は、女同士の戦いか」
「でも、あの人間の女の人は、突然に何があったのか顔色も一つ変えず殺したな」
「“普通の人”なら怯えるのにな。人殺しでもやってたじゃないか?」
ビオラは、普通ではない。ルリラナは、知っている。彼女は、あらゆる時代、あの人を見てきた。勇気も悲しみも強みも苦しみも知っている。年齢は、知らない。しかし彼女は、あの体であの目で、多くの時を知っている。
自分を捨て、自分の強みも感情も捨てて精霊になった彼女の心の叫びが聞こえた。
「…ビオラ…ビオラーっ!」
ルリラナは、大声でビオラの名前を呼んだ。すると、観客席の皆は、黙り混みルリラナを見た。
「ルリ…ちゃん…?」
ルリラナの声に我に戻ったビオラは、目から流れ落ちる血を拭き息を整えようした。力が抜け足も震え立っているだけでやっとだ。
そして、今度は、血の涙ではなく透明な何も雑じり気もない涙が流れ落ちた。
「…大丈夫…まだいける。まだ殺れる…だから、力を貸して…カガリ…」
そう言って黄色の瞳を押さえ歩いた。目が霞む。
「大丈夫なのかしら?バルキニー“様”」
「!!…どうして…それを?」
ティファニーは、微笑み指をまっすぐ観客席を指した。其処には、黒のローブを着た人が二人座っていた。
「……そんな…」
「お分かりかしら?あの方は、ずっと見ていたの。いえ、見張っていたの。幾度も変え宿主て、見張っていたの」
ティファニーは、歩きビオラの前に立った。
「フェニックスを目覚めさせ、精霊の剣を再生させ、本当の力を取り戻させない為に見張っていたのよ」
深くフードを被っているが顔が隠れているが、解る。一人は、ザンロッタ。そしてもう一人は、
「我が主様…死の女神ヘル様よ」




