15.闘技場と狐と機械都市!(6)
久しぶりで一人で戦う。息を整え目を閉じる。ラルクから借りた剣を強く握りしめた。
「……本当は、使いたくないけど……勝つためだもんね」
目を開け魔物を見る。精霊の剣じゃあ無いけれど、負けない気がしたビオラは、手加減もしないで一瞬で魔物を倒した。
観客の歓声が鳴り響く闘技場。ミウとラルクは、冷静にビオラが戦っている姿を見ていた。
「ラルク」
「何だ?」
「ボクたちの元々の目的を忘れたわけは、無いですよね?」
「……」
元々の目的。それは、龍王の欠片を集めてザルクルフに残る負の感情を消すこと。女神を探すこと。
ビオラの話では、救いの女神アストは、死んでいるがこの世界の何処かにいる。そして、ザルクルフは、自分であること。
しかし未完成であるこの体は、何時、負の感情が暴走しても可笑しくない。
「忘れてない。そのためにビオラの願いと俺たちの目的も果たすんだろ?」
「…ラルク…あれは…」
突然、ミウは、目を細めて観客席を見つめた。ミウが見つめる先にエメラルド色の髪をした青年が座っていた。
あれがこの帝国の皇帝陛下だ。しかしミウは、それを気にして見ているわけではない。
「ザルクルフの欠片…あの瞳…しかも両目もろとも龍王の欠片です。
負の感情が強く受けあの人は、本当の感情を失っていますっ!ラルク!大変です。あのままだと負の感情に飲み込まれ暴走しても可笑しくないですっ!」
ミウは、慌てて言うが此処から出ることを許されない3人は、何も出来ない。かといってトラードたちに連絡をするにも何処にいるかさえ解らない。
ラルクは、考えた。どうやったらあの皇帝陛下のところまで行くことが出来る事を考えた。
「ラルくん!ミウちゃん!避けて!」
その言葉に反応して、前を向くと黒い玉がこっちに飛んできていた。ラルクは、慌ててミウを庇うように避けビオラを見た。
ビオラの相手は、ごく普通のエルフ。ビオラは、剣を使わず戦っていた。どうやら魔物以外は、使いたくないようだ。
「大丈夫か?」
「はい…」
ミウは、エルフを見て少しだけ考えた。
「ラルク…あのエルフ…様子が可笑しいです」
「?様子が可笑しい?」
「機械都市と言われているせいでしょうかあの人は、動きがぎこちないです。まるで機械のように動いています。操られているように感じられます。心が感じないです」
ラルクは、再びエルフを見た。確かにエルフをよく見てみると解る。動きが可笑しい。
「どうして、勝てないんだよ…どうして人魚じゃあないんだよ…どうして…どうして…」
「??」
突然狂ったように呟くエルフ。ビオラは、不思議そうに見て少しだけ距離をとった。
「こんなに改造してきたのにサイボーグになってまで強くなろうとしたのにどうして人間に勝てないんだよっ!」
無数のナイフがビオラに向け飛んできた。ビオラは、軽やかに全てのナイフを避けた。
それを見たエルフは、剣を取りだしビオラに向かって走った。ビオラが、指をパチンと鳴らした瞬間に花が舞いエルフが剣を振り回すがその場には、誰もいなかった。
「隠れるなんて卑怯だ!何処に行ったんだ!出てこい!」
「此処だよ」
エルフが振り向くと真後ろにビオラが立っていた。何時から其処に居るのか感じなかった。エルフは、剣を再び降るが簡単に交わされ足を蹴られバランスを崩した。
「どうしてだよ…エルフじゃあないのに魔法が使えるんだよ…どうして…こんなにも強いだよ…人間のくせに俺たちをバカにしやがって…許されない…許されない…っ!ゆ、ゆ、ゆゆゆ、ゆゆゅゆゆユゆュuuゆゆUゆUゅユルセナイ」
何か可笑しい。何か壊れたようにぎこちない動きがさらにぎこちない。ビオラは、少しだけ考え剣を見た。
「どうしてケンをツカわないんだ?オレヲなめてるのか?」
「違うよ。君は、人だから使わないだけ。あたしは、もう、剣で人を傷つけいって決めたから」
少しだけ考えたが、其処には答えがなかった。何故なら勝つためには、この剣を使って、彼の首を斬ることしか無い。しかし、ビオラは、それが出来ない。過去を思い出して、一度決めた覚悟を捨てられなかった。
「あたしは、剣を握って戦うのは、嫌だけ…本気で戦うのは、嫌だけ…誰も傷つけたくないだけ…」
精霊の剣が脆くなった理由も折れた理由も解っている。
ビオラは、深呼吸をして、剣を邪魔になら無い場所に置いて自分の顔を叩いた。
「ブキヲ置くなんて…ふざけルナっ!」
「ふざけてない。あたしは、とっくに剣を捨てた剣士。剣士って言えないあたしだけど守るものは、あるんだよ。勝つために必要だった。だから、仲間に剣を借りたの」
でも、今は、必要ない。使わないものを持っていても邪魔なだけ。人に向けて、あの時のようになりたくないだけ。
「でもね、君は、人だから…魔物とか怪物とかじゃあないから…生きているから心があるから…でも、負けたくないから…今のあたしの戦い方で、君を倒すから、コレが邪魔なだけ」
「剣士がケンを捨てテどうやッてタタかうんダよっ!?
ブキガなかっタから何も出来ないダロ!?」
ビオラは、微笑みエルフを見た。そして、指を鳴らし瞬間移動をしエルフを背中から蹴り飛ばした。
「出来るよ。あたしは、君と違って戦う術を知っている」
エルフは、やっとビオラに恐怖を感じた。強すぎる彼女は、手加減すらしていない。剣を使ってないのに簡単な魔法なのに何故かあの黄色の瞳が怖い。
怖い。エルフは、ビオラを直視出来なかった。しかし、ビオラを倒さないと負ける。負けたくない。負けたくない。エルフ息を飲んで、ゆっくりポケットに入っていたあるものを掴み静かに呟いた。
「マレディツィオーネ」
その言葉と当時にビオラは、力が抜けたように座り込んだ。
「???」
立つことが出来ない。指を鳴らすが花も舞うこともなく瞬間移動も出来ない。目が霞む。力が入らない。
「魔力が…」
自分が持っている魔力が抜けていくような感じたビオラは、エルフを見た。
「あと一回使える。人魚を捕まえるためなんだ。殺す。殺してやる…人魚が出るまで殺してやる」
ゆっくりとエルフは、ビオラが置いた剣を持ち近づいてくる。ゆっくり、ゆっくり睨みながら近づいてくる。
しかし、ビオラの体は、びくともしない。動けない。逃げないとって思っても動けない。戦うことさえ出来ない。
死ぬ。死にたくない。ヘルを殺すまでは、死にたくない。負けたくない。
「負けるな!ビオラ!」
「諦めないで、下さい!」
ミウとラルクの声が聞こえた。ビオラは、薄れ霞んで見える風景を見て目を閉じた。
「カガリ…あたしに力を貸して…」
そう呟きネックレスについている小さな石を握りしめた。




