8.死の女神(2)
世界を守るために救うために戦ってきた。一人で、過去も未来も守ろうとした。救おうとした。一人でも多くの人を守ろうとした。
でもヘルは、騙した。救いの女神アストを殺してしまったビオラは、絶望した。後悔をした。苦しんだ。そして、自分を犠牲にして、未来へと来た。ザルクルフが生まれ変わる時代へと行くことにした。
感謝される事をしていない。憧れる事なんてしていない。むしろ恨まれた方が楽だった。
「これがパパの気持ち…あたしが救えなかったパパの痛み…あたしが守れなかったパパの苦しみ…」
ビオラは、自分の父親にトラードと似たような言葉を言った。そして、父親は、苦しんで、苦しみから逃げるように自殺をした。
同じ苦しみを初めて知ったビオラは、座り込み涙を流した。こんなにも父親を苦しめたのだと、悔やんだ。
「ビオラちゃん!」
「ザックくん…」
振り向くとザックだけではない。ミウにトラード、ラルク、ルリラナまでいる。
恨んでほしい。恨まれた方が良い。
「恨まれた方が楽だって思う事もあるけど…じゃけどそれでビオラちゃんは、幸せなん?ビオラちゃんは、それでも平気なん?」
「幸せ、だよ」
「違う…それは、幸せじゃない。そうやって自分を犠牲にして、苦しんで…人に甘えることも知らない奴が幸せじゃない。
ワシは、知っとる。一人で苦しんでも一人で努力しても一人で犠牲にしても…幸せなんかなれん。他の誰でもない自分自身のことは、自分が誰よりも知っとるんじゃけん。
一言でも良いけん。ワシらに弱音を吐いてくれ…」
弱音を吐いてくれ。言えない。ずっと、ずっと自分を誤魔化していた。騙していた。嘘をついていた。
ザルクルフが生まれ変わったて、救いの女神アストが生まれ変わったら今度こそ守ろうって、そして、自分のせいで不幸になった人たちを幸せにしようと思った。
弱音なんて言えない。言えない。苦しいって悲しいって言えない。今までもこれこらもずっと、ずっと一言も言えない。
ビオラは、微笑み皆を見た。
「ザックくんが言う通りあたしのことは。あたしがよく知っている。だから、弱音なんて言わないよ」
「まだ、そう言うか?…何も解っとらんガキが何でも知っている顔して偉そうにしとるじゃあねぇよ…!ワシは、知っとるじゃ!そうやって何でも背負って苦しんどる奴をよく知っとるじゃ!じゃけんワシは、お前をほっとけれんのんじゃ。ビオラちゃん。笑わんといて、心で泣かんといて…」
「悲しいときには、一緒に泣いてあげます。笑いたいときは、一緒に笑ってあげます。ビオラさん…僕達は、貴女に出会った事で皆に…貴女に出会った。僕たちを頼って下さい」
そう言ってトラードは、手を伸ばした。そしてミウは、ビオラを優しく抱き締めルリラナは、ビオラにデコピンをして目をそらした。
「その…あんたを攻めた事と叩いたは、謝るわ。あんたが言ったことは、間違ってないもの…だから、ごめんなさい」
「…多分きっと此処にいる皆、自分の弱音を言うなんてできる人なんて、居ないと思います。でも、それでもビオラは、一人で何でもし過ぎなんです。何でもしようとして、自分を自分の手で傷つけて、苦しめようとし過ぎなんです」
頼りたくない。救いを求めなくない。父親と同じ苦しみを知った今なら解る。苦しい…苦しくて吐き出したい。なのに涙が止まらなかった。
「無理だよ…言えないよ…皆を苦しめたあたしが…助けてなんて…死ぬのが怖いって…悲しいって…苦しいって…簡単に言えないよ…パパに会いたいって…もっと生きたいって言えないよ…」
悲しいよ。苦しいよ。寂しいよ。怖いよ。会いたいよ。生きたいよ。死にたくないよ。此処にいたいよ。でも、帰りたいよ。帰りたいよ。
「簡単に言えないよ…そんなの言えないよ…もう無理だって解ってる。もう戻れないって解ってる。あたしが我慢すれば皆を幸せになるんならこのぐらい平気なの。このぐらい当たり前なの。あたしのせいだから…あたしの罪だから…だから、あたしを許さないで、恨んで…あたしを憎んで…」
「それは無理だ」
その言葉に驚き前を向くと皆、ビオラを見つめていた。
憎まれた方が楽だった。違う。違う。それは、自分を守るための良いわけだ。
「……あたしの頼みをきいてくれる?」
ビオラは、弱々しい声で皆に言った。
「…あたしがバラバラにしてしまったこの世界を元の世界にしたいの。アストがいた世界にしたいの。それには、死の女神を倒さないとダメなの。死ぬかもしれないしもっと苦しくて悲しい不幸になるかもしれない。
でも、あたしは…」
あの人の約束を忘れなかった。あの人の記憶を忘れなかった。あの人を思う心を失いたくなかった。
「この世界を美しいくて素晴らしいって言った人を裏切りたくないの…だから…お願いします。こんなあたしだけど…――」
「一緒に世界を救おう」
ラルクは、そう言って微笑んだ。その笑顔は、知っている。やっぱり生まれ変わりだからだろうかザルクルフに似ている。
「はい!当然です!ボクは、神子ではないですが…世界を守るためら全力投球で頑張ります!」
「えっと…僕ができる事なら何でもしますよ。例えば…美味しいスープとか作るとか…っ!ってそれは違いますね?えっと…ルリラナさんも良いですよね?」
「たく…仕方がないわね。解ったわ。ただしラルクとトラードのために私は、着いていくだけだらね。世間知らずの二人だから心配だもん…」
「カッカッカ!と言うわけじゃ!ワシは、この4人の保護者じゃけんビオラちゃんが嫌がろうとワシは、行くけんな!」
ずっとずっと一人で戦ってきた。ずっと、ずっと自分を犠牲にしてきた。ずっと、ずっと一人で守ってきた。ずっと、ずっと仲間が欲しかった。ずっと、ずっと自分を騙していた。ずっと、ずっと知らない顔をしていた。
「ありがとう…」
ビオラは、涙を流しながら本当の笑顔で言った。そして、初めて仲間と言う存在による優しく強い言葉に心が救われたのだ。
するとビオラの頬から落ちる涙が輝き出した。




