5.親子の愛(5)
メデューサの物語。聞きたくないとトラードは、耳を塞ごうとしたがうまく体が動かない。何かを言おうとするが
「あ、そうそう…君たちどうして動けないかどうして喋れないのか、不思議だと思っているだろうけど、その理由は、簡単だよ。ぼくの相棒であり、ぼくの一番の親友であるこのウサギの耳がお洒落なサラのお陰なんだよ。凄いでしょ?すごいよね?あ、でもバルキニー様には、効き目がないみたいだけどね」
皆が動かない、喋れない。ビオラは、考えた。何の魔法なのか。何の精霊なのか。考えた。すると、少年が合図をだした瞬間サラと言う人形は、ルリラナに大きなハサミの刃を向けた。
「でもいくら喋れても、いくら動けてもそれはしないでね。ぼくは、語っている最中に横で口出しされるのが大嫌いだから
もしそんなことをしたらこのエルフの女の子の首がチョキンッて頭が胴体からさようならって悲しい出来事になっちゃうからね」
動いても喋ってもルリラナは、死ぬ。ビオラは、息をのみじっとり少年を見つめた。少年の瞳には、悪意がない。本気で、ルリラナを殺そうとは、思ってはない。しかし、何か違和感を感じる。
「さてと…昔々一人の女性がいました。その女性は、ごく普通の妻であり母親であり普通に暮らしている何処にもいる人間でした。
しかしその女性は、一つだけ普通ではないものを持っているのです。それは“世界で一番の美貌”を持っていたのです。その美しさは、誰もが憧れ、誰もが羨ましく、誰もが妬む美しさのため多くの女性は、彼女を妬み、多くの男性は、彼女にひかれてしまうのでした。
悲しくも苦しくもその美貌は、女神までも妬んでしまい女神は、大きな代償と引き替えに彼女を呪ったのです。
呪われた女性の髪は、蛇となり、牙が生えその牙から毒が溢れるように垂れ、瞳を見た人は、たちまち石化なんてしまう“世界で一番の醜い姿”でした。
どんな苛めでもどんな苦難にも耐え続けた女性は、悲しく辛く大粒の涙を流しこう言ったのです。
「私が何をしたの?何も悪いことなんてしてないわ」
っとすると、女神は、こう言ったのです。
「おのれの事が解らぬなら妾の気持ちも女の気持ちも解らぬだろ。聞くよりも前におのれ自身の事を知ってから妾に聞くがよい」
そう言い女神は、微笑み消えていったのです」
少年は、淡々メデューサの話を分かりやすく楽しげに言いトラードを見た。トラードは、ペンダントを見つめ体が震えた。怖いわけでも無いのに悲しいわけでもないのに苦しくも感じ目をそらした。
「ねぇ?メデューサになってしまった女性の子供と旦那さんは、どうなったか想像つく?つかないよね?愛息子は、目の前でメデューサになった母親を見て恐怖を感じた自分に絶望した。その上父親が目の前で母親に石化と言う殺し方によって心に大きな傷を負った。ここまで、話せば、想像つくよね?」
少年は、サラに合図をだした。すると、トラードだけ体動くようになりトラードは、力が抜けるように座り込んだ。
頭が痛い。苦しい。吐きそうだ。メデューサが憎い。憎い。憎い。不安が消えない。
「メデューサは、誰の母親だろうね?トラードくん」
そう言ってペンダントを渡す。トラードは、恐る恐るペンダントの蓋を開けると、懐かしい女性と男性と可愛い子供が写った写真が貼られていた。それを見たトラードは、涙が溢れるように流れた。
「思い出した…僕は…僕は…――――」
母親を殺したメデューサが憎い。ずっと憎んでいた。でも、母親を殺したからメデューサが憎いのではない。
「どうして…思い出さなかったんだよ…どうして…僕は…あんなにも憎んでいたんだよ…ごめんなさい…ごめんなさい」
弱かった自分が憎い。怯えた自分の弱さが何よりも憎い。メデューサが憎いのではない。憎いのは、自分自身だった。
「母さん…」
すると、メデューサの目玉が光だしトラードの眼帯をしている目の中へと消えていった。




