4.親子の愛(4)
メデューサは、すでに死んでいる。そのぐらい解っている。死んでいる。死んでいる。あれは、人形だと言っていた。
「安心しろ。あそこにいるのは、人形だ。なんだからの仕掛けで動いている人形だ」
くじている暇はない。迷っている暇はない。立ち止まっている暇はない。
「俺たちも行くぞ」
何のために必死なのか解らない。でも、ラルクは、再び走った。そして、やっとたどり着いたメデューサがいると言われる場所。
其処には、すでにトラードたちもいた。
「トラード!」
「ラルクさん!メデューサの様子が可笑しいですっ!」
ラルクは、トラードの隣に立ち異変に気がついた。
確かに其処には、メデューサがいる。メデューサに怯えて目を閉じている人もいる。しかし、誰一人石化になっておらず噛まれている人すら居ない。なぜなら彼女は、目を閉じただ其処に立って居るからだ。
「メデューサ!」
「ん?あら?この声は、私を殺そうとした我が主の心臓をもうラルク・ヴェルクじゃないの?っと言うことは、あの時の少年もいるわね…」
メデューサは、冷静に答えこちらに顔を向ける。何時、目を開けても可笑しくない。
「体がうまくいうこときかないから何時まで耐えれるか解らなかったけれど、貴方に会えて良かったわ」
メデューサは、高いヒールの音を音をたてながらトラードの所へ向かった。そして、顔を近づけ
「私を今すぐ殺しなさい」
「え?」
意外な言葉に唖然としたトラードは、メデューサの胸にあるペンダントを見た。
「私が憎いのでしょ?殺しなさい。ほら、私が無力な状態で、私の首を持っている剣で斬りなさい。そして私の目玉をハルルの娘に移植して、貰いなさい。貴方の目になれば、石化の魔法は、消えるわ。善なる心をもった貴方ならきっと…」
頭が痛い。胸が苦しい。トラードは、メデューサじっと見つめていた。恐怖で動けないのではない。憎くて、戸惑っている訳ではない。何故か動けない。
「大丈夫よ」
一瞬懐かしく感じた。胸が苦しい。頭が痛い。何故、メデューサを見ると懐かしく感じたのだろう。こんなにも憎いのに、許さないのに殺すことを何故、拒んでいるのだろう?
「ぼくの人形を壊さないでくれるかな?」
メデューサの後ろの方から声が聞こえた。ラルクは、目を細目眺めると、ラベンダー色の髪の少年と頭と硬めに包帯を巻き頭に大きなウサギの耳のような物が付いている人形が立っていた。
「メデューサもぼくの命令を無視しないでよ。これじゃあ君の力が解らないじゃないか」
「……」
メデューサは、目を閉じたまま何も答えない。動こうとも口を開けて反論しようともしないメデューサにビオラは、不思議に思った。
「魂を人形に入れる事が出来る魔法…確か…禁止魔法だよね?君は、何者なの?」
「何者なの?それをぼくに聞くかな?“バルキニー様”」
ビオラは、驚いた顔で少年を見た。自分が勇気の精霊バルキニーだと知っている人は、ここの5人しか知らない。知っていると言うよりも自分の存在を理解出来るのは、同じ精霊のみ。しかし彼は、精霊ではない。精霊ではないが人間でもない。エルフでも鬼族でも人形でも亜人でもない。では、何だと聞かれたらビオラでも解らない。
同じ精霊と人間の狭間の存在のような気がした。
「はは!そんなに驚かなくても良いよ!君は、過去から未来までいろんな時代を見てきたから何でも知っているけれど、何でもは、知らないでしょ?」
「……アークルに何か願い事をしたの?」
少年は、ウサギの耳の人形の肩に手をおきにっこり微笑んだ。
「そうだよ。ぼくの願いを意外にもあのアークルが叶えてくれたんだ。“ぼくの過去の記憶の変わりに友達が欲しいっ!100人でも1000人でもたくさん友達がほしいー!”って
だから、アークルは、ぼくに人形に魂を入れる事が出来る魔法をくれたんだ。そして、その魔法のお陰で、人形の中に入った魂の記憶まで、見ることが出来るんだよ?凄いでしょ?」
メデューサの所へ行きメデューサの目を手で隠しトラードを見た。そして、メデューサの目玉をくりぬき動かなくなった人形の体を投げ捨てた。トラードに目玉を見せた。
「驚いた?もう既にこの目の持ち主は、死んでいるか石化なんてならないよ」
スクスク笑い目玉を光にあてじっと眺め目を細目めた。
「こうして目玉だけ見ると綺麗な色だよねぇー…もう真っ黒だよ!光すら通さない漆黒のいろだよね!
知っている?メデューサは、元々人間なんだよ?どうして、あの化け物になったかどうして、メデューサは、人気離れた場所で一人暮らしていたのか。知っている?」
少年の言葉に胸騒ぎがするトラードは、メデューサが体にした人形を見つめた。メデューサが付けていたペンダント。見覚えがあるペンダント。懐かしく感じたペンダント。
「その様子じゃあ解らないみたいだからね。じゃあ変わりにぼくが教えてあげる。哀れなメデューサの物語を…――――」




