3.親子の愛(3)
トラード達が心配することも解っていたラルクは、久しぶりのビーナスを歩いていた。
この街に住む日々をふと思い出した。しかし、何故か思い出せない事もある。トラードと暮らす前、誰と暮らしていたのか。ルリラナは、知っていても自分が知らない記憶。
遠い過去の記憶は、知っていてもラルク・ヴェルクとしての子供の頃の記憶がない。
「ラルク・ヴェルク!」
後ろから聞き覚えがある声が聞こえた。振り向くと見覚えがる少年がたっていた。そういえば、この街で、よく決闘などを申し込まれた事がある。きっとそれだろうと思ったラルクは、考えた。
何時ものように断ろう。っと
「ここは、魔法禁止区域だ」
「助けてくれ!」
助ける?意外な言葉にラルクは、混乱した。誰を助ける?誰から誰のために助ける?
「メデューサがこの街で大暴れをしてるんだ!その近くに弟がいて、助けようにも助けれないんだ!」
「メデューサが?」
メデューサは、死んだ。目の前で彼女は、死んだ。しかし少年の口からメデューサの言葉が出てきた。ラルクは、考えた。
「ホニマーじゃあないのか?」
「ホニマーなんかじゃあない!あれは、人形ぽっいけど本当にメデューサなんだっ!」
人形ぽっい。動く人形。心をもつ人形。確かミウをさらった奴は、人形ぽっいと言うより人形だった。心をもつ人形“ララ”その仕組みをまだラルクは、知らない。
怯える彼を見て、ラルクは、更に考えた。
「メデューサは、とっくに死んでいる。だから、魂を人形に移すことができる奴が居るって事だ。近くに怪しい奴がいないかお前は、そいつを探せ」
「メデューサはどうするだよ!?この街で一番強いのは、お前だけなんだ!情けないって解っている!けど、俺は弱い。戦っても無駄って解っている。だからお前にしか頼ることが出来ないんだっ!」
誰かに頼られる。トラードとかルリラナではない。街で、最強と言われ天才と言われでも、ハーフエルフと言う理由で、差別をされてきた。いくら勉強をしてもいくら修行しても誰も誉めてくれない。誰も頼ってくれない。悔しかった。自分がハーフエルフだと言う事が嫌いだった。
ラルクは、少しだけ冷静に考えた。
「メデューサは、俺が何とかする。だから、安心しろ」
「助けてくれるのか?」
「お前のためじゃない。メデューサが大嫌いな俺の弟の為だ」
トラードのため。トラードにこの事を知られたら何時かのようになってしまう。
トラードにメデューサを殺させたくない。トラードにメデューサを見せたくない。トラードにメデューサを見つけさせたくない。
ラルクは、メデューサがいると言う場所に向かって場所へ走った。走って、走って、走った。ふと、不安が過った。
「俺…どうして…こんなに…必死なんだろ…?」
トラードのため?あの現場にいる人達のため?この街にまだいる仲間のため?自分のため?
全部違う気がした。でも全部正解でもあるような気がした。誰かのために助けても見返りを望んでも、憎まれるだけで誰も感謝もない。ハーフエルフと言う理由で、差別をされたこの街の為に何をしても良いことなんて無い。
「俺は…俺の…居場所は…」
いったい何処なんだろ?帰る場所は、何処なんだろ?行きたい場所は、ある。でも帰りたい場所は、何処にもない。
足は、立ち止まり意識が遠くに感じたその時声が聞こえた。
「ラルク!」
ルリラナだ。ルリラナは、ラルクを抱き締めそして、思いっきり頬にビンタをした。
「私に黙って、何処にも行かないでよ!もう、何処にも行かないでよ…ラルク…心配…したんだからっ!バカ…」
そう言ってルリラナは、ラルクを抱き締めた。強く優しく抱き締めた。
突然、この事にラルクは、驚いた顔で叩かれた頬を触り少しだけ考えルリラナの頭を撫でた。
「ごめん。ルリラナ…ごめん…俺…」
自分の本当の気持ちが、解らなかったんだ。ザルクルフだった記憶がラルクを苦しめていた。孤独たった記憶。皆に憎まれ役でしかなかった過去の記憶が痛く苦しく感じた。
ほんの少しだけ愛されたいと願った。
悲しくないのに辛くないのに泣きたくなった。それと同時に胸が暖かく感じ張りつめた糸が揺るんだ気がした。
「……弱いから…皆を傷つけて…悲しませるぐらいなら離れた方が良いって思ったんだ…
俺…バカだから…どうしたら良いだなんて解らなかったんだ…」
ラルクの弱音を聞いて、心の叫びを感じたルリラナは、少しだけ考えた。そして、目を閉じ深呼吸をした。
「解らなくても良い。私もトラードもザックもミウもビオラも皆に迷惑をかければ良い。甘えたら良い。ワガママを言えば良い。だってお互い助け合ってやっと解り合えるんだから、ね?
ほら…私たち…親友で仲間でしょ?」
仲間。仲間と言うものは、助け合うのが当たり前だ。
助けなんて、いらないと思っていた。誰も傷つけたくないから独りを選んだ。ずっと、あの時からずっと
「俺…本当にバカだな…」
大切な物さえ忘れていた。大切な人さえ解らなくなっていた。
目を閉じ深呼吸をして顔を叩いたラルクは、ルリラナを見た。
「トラード……皆は?」
「先にメデューサがいるって噂の所へ向かっている。でも、可笑しいわね。メデューサは、死んでいる筈よ」
確かにそうだ。この世で、唯一魔法である死者を蘇らず魔法は、一つだけある。しかし、その魔法を使えるのは、禁断魔法。であり、その呪文を知っているのも一つの貴族により守られている筈だ。そして、その貴族に守られている魔法は、誰も存在知らない。誰も知るわけがない。
「死者を蘇らず魔法なんて…この世でハルル家しか知らないしハルル家しか解読ができわ。でも、パパもママも使える訳がないわ」
「どうして?」
「癒しの魔法が使えないから…」
癒しの魔法。傷を治し体の異常を治す魔法。ルリラナが得意としている魔法。ビオラは、精霊だからと言う理由で癒しの魔法が使える。
しかしルリラナは、違う。ルリラナは、ごく普通に癒しの魔法が使える。この世に傷を治す魔法を使える人なんて、何処にも居ない。ルリラナは、この世で唯一の無二の存在“癒しの魔法が使えるエルフ”なのだ。




