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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第2部 学園編 〜欲望の種【前編】〜

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98 感情の正体

ロイドの言葉に、首を傾げながら、もう一口飲んだ。


「思わないねぇ。

無駄に警戒なんてしてたら、疲れちゃうよ。

ロイドがベアトリス様を守ろうとしてる限り、私には手を出さないでしょ。

それに魔族だからって疑ってかかるのはナンセンスだよ。」


「……姫さんってさ、常に色んなこと考えながら言動してる節があるよな。

感情でつい動いちゃうことってないの?

例えば……その、気付いたら誰かに触れてたとか、さ。」


少し言いづらそうに視線を泳がせるロイドに、私は首を傾げた。


「……ベアトリス様に、何かしたの?」


途端にロイドの瞳が揺らぎ、気まずそうに私から目を逸らした。


「……いや、俺の事じゃなくて……。」


「……何したの?」


にこりと笑って圧をかけると、ロイドは頭を抱え観念したように話し始めた。


「……気がついたら頬、撫でて、唇に触れてた。

ベティ、真っ赤になって……怒っちゃって。

まじ、どうしよう。」


この世の終わりかのように嘆くロイドに、私はパチパチと目を瞬かせると口元に手を当て思案する。


「それ多分怒ったんじゃなくて、恥ずかしかったんだよ。

私もよくそうなるから分かるの。

っていうか、それってどんな感情に動かされたの?」


された経験はある。

だからベアトリス様の反応の意味はすぐに分かった。

だけど私は、それを行ったロイド側の『感情の正体』を知りたかった。


ロイドは顔を上げると、少し安心したように肩の力を抜いた。

だらしなく背もたれに寄りかかると、どこか遠くを見るかのように空中に視線を彷徨わせた。


「恥ずかしい……そっか。怒ってないならいいんだ。

ちゃんと明日謝るよ。

どんな感情……自分でも良くわかんないんだよな。

ただ触りたいって思って。

ん?──姫さんは、誰にそれをやられたんだ?」


ロイドも分からないのかと肩を落としていると、彼はハッと気づいたように私に視線を合わせ、首を傾げて尋ねてきた。


「ゼロに、グレンに、似たような事をリオにもされたかな。

恥ずかしくて心臓爆発するかと思った。

その行為はさ、愛情表現なんだよね、きっと。

本で読んだことあるから知ってるの。

でも、それが何で自分に向けられてるのか、そもそもその感情が友愛なのか、家族愛なのか、恋愛なのか……考えれば考えるほど良くわからなくなってきちゃって。

まぁ、今はそもそもそっちに思考のリソースを割けないからもう放置してるんだけどね。」


溜息をついて、少しぬるくなって飲みやすくなった薬膳茶を喉に流し込んだ。


「まじでそれな。急に親近感わいてきた。

……そっか。姫さんもずっと1人だったもんな。

何なんだろうな。この感情。

ベティのこと大切なんだよ。

泣かせたくないし、守りたいと思う。

その感情すら初めて知ったんだ。

これ以上はキャパオーバーなんだって……。」


確かに親近感はすごく感じる。

彼も私も一人で生きて来た時間が長い。

だからそういう感情に疎いのだ。

理解したいと思う反面、理解したくないとも思う。

分かってしまったら、今の幸せが壊れる気がして怖いのだ。


もう一度大きく溜息をつくと、ロイドに視線を向けた。


「これってさ、私達で何時間話し合ったところで絶対解決しないやつじゃない?」


「……言えてる。やめよう。

あ、聞きたいことあったんだった。

──その首のやつ。ゼフィロス様の血で作ってるのか?」


ロイドは自分の首元に指をトントンと叩き、目をキラキラと輝かせた。


「そうだよ。これ、私の力を抑える役割をしてるの。

ゼロのお手製。

……羨ましい?」


クスクスと揶揄うように言うと、ロイドが羨望の眼差しで私の首のチョーカーをジッと凝視した。


「羨ましい!

……けど、恐れ多くてそんなん貰ったら金庫の中に厳重に保管しなきゃなんない。

身につけるなんて無理だ。」


オタク感満載で語るロイドに苦笑する。


「ロイドのその胸のペンダントは、ゼロの推しカラーで赤なの?」


「そう!分かるか!?

この色、ゼフィロス様の瞳の色にそっくりだろ?

──つっても、ゼフィロス様は絵でしか見たことなくてさ。この魔石、その絵の瞳の色味にそっくりでつい買っちゃったんだ。

ちなみにこれは存在の濃さを調節できるように魔法を付与した特別製。

こういうのを加工するのが得意な魔族がいてさ。

偏屈ジジイなんだけど、腕は確かなんだよな。」


私はそれを聞いて目を見開くと、カップをサイドテーブルに置いて、ガバッとロイドの方へ身を乗り出した。


「その魔族の人と会えたりするかな!?

あ!薬膳茶を作ってくれた人にも会ってみたい!!

紹介してよ、ロイド!」


「──っ!ちょ!姫さん、近い!近いって!

分かったからもうちょい離れ──」


その瞬間、背後から伸びてきた腕にぐっと腰を引き寄せられ、強引にロイドから離された。

耳元で大きく溜息をつかれ、背中に確かな熱を感じた。


「何やってんだよ、阿呆フィーネ。」


フィーネは鈍いですがアホな子ではないのです。

自分に向けられている意味や、愛情分別する術が分からず、知る勇気がありません。

その事に自覚しつつ、今の幸せを享受しています。

いつか、この壁にぶち当たるんですよ……。頑張れフィーネ!




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