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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第2部 学園編 〜欲望の種【前編】〜

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97 来訪者

私はみんなの言う通りに、大人しくベッドに入りゴロゴロしながら色々な考えをノートに書き殴っていた。

うつ伏せになって頬杖をつき、ノートにペンを走らせる。


グレンも私も、せっかくの膨大な魔力量を生かしきれてない。

問題は弱い人間の体。

魔力を他の媒体に保存することができたら、使える魔術、魔法の数も増えるだろう。


(──この件は実現可能か来週あたりにグレンと相談っと)


パタパタと足をばたつかせながら、ノートをめくる。


私の問題は、リリスの固有能力だ。

今はゼロが抑えてくれてるけど、出来ればこの固有能力を使えるようになりたい。


(そっちも外部のアイテムで制御可能かをグレンと相談したいな。これが使えたら魔族との戦いも楽になるはず)


固有能力といえば、あの丘の花々や魔法陣の設置然り、リリスは未来を知っていたかのような動きをしている。

リリスの固有能力は『絶対的支配』で『予知能力』じゃないはず。

だとしたら理由として考えられるのは3つだ。


1、固有能力を2つ持っていた。

2、悪役令嬢モノでありがちな『ループ』をしている。

3、予言書のようなものを読んだ。


(リリスと直接話せて理由を聞けたらいいんだけど、制約に引っかかるだろうし、そもそもリリスへの道が繋がらない以上会うことはできない。

──こっちは保留。

どう情報を得るのかを考えることが先決っと。)


そこまで考えると、喉が渇いたことに気付きベッドに座りサイドテーブルに置いてある水差しからコップに水を入れて飲んだ。


すると、バルコニーへと続く扉からコンコンという音が聞こえた。

私は首を傾げると、バルコニーへ近づき扉のガラスの部分を覗き込んだが、外が暗くてよく分からない。

少し躊躇したものの、少しだけ扉を開け顔を出して外を覗き込んだ。

ヒヤリと冷たい空気が室内に入り込み、ネグリジェのみの薄着だった私の肌に鳥肌がたった。


「うぅ、寒っ。──え。ロイド!?」


バルコニーの欄干に、ロイドが腰掛けていた。

闇に溶け込むような黒服を纏い、首元から覗く赤い石が、暗がりの中で怪しく淡い光を放っていた。

その手には茶色い小袋が握られている。


「こんばんは、姫さん。体調どう?」


体重を感じさせない軽やかさで欄干から飛び降りると、ロイドはこちらへ歩み寄ってきた。


「え?あ、うん。熱はもう下がったよ。

ロイド、警備を掻い潜ってよくここまで来れたね?

流石は『ウィンド』?

──とりあえず入って。」


「──は!?いやいや、ここでいいよ!流石にこの時間に部屋の中に入るのは……。」


「寒いの!また熱出ちゃったらどうするのよ。」


私はそう言うと、ロイドの事を無視してさっさと中に戻った。

温かいものでも飲もうと机の脇に置いているケトルでお湯を沸かした。


「えぇ……。めっちゃ人の話聞かないじゃん。

──お邪魔しまーす。」


ロイドは呆れたようにそう言いながら部屋に入ると、バルコニーの扉をパタンと閉めた。


「ベッド脇の椅子に座ってて。私今日ベッドから出るなって言われてて。」


「姫さんって、無防備だって言われない?」


「え。何で分かるの?

情報屋ってそんな事まで知ってるの?」


「……いや。普通にそう思っただけ。

あ、なんか飲むならこれ淹れなよ。

今日はこれ持って来ただけなんだ。

魔族の知り合いに薬師がいてさ。

薬膳茶なんだけど、熱にはこれが一番効くんだ。」


「え、ありがとう!」


茶色い袋を受け取ると、中には一つの缶が入っていた。


「ちなみにコレ、どうやって淹れるの?」


「──俺が淹れようか?」


「いいの?じゃぁお願いしようかな。」


そう言うと、私はいそいそとベッドに戻って暖かい布団の中に入った。


「缶に入ってるスプーンすり切り一杯が、1人分だから。

お湯入れたら3分蒸らして。

ちょっと癖あるけど、身体があったまるよ。」


ロイドは手際良くティーポットとカップをトレイに入れて持って来てくれた。

ベッド脇のサイドテーブルにカチャンと置き、椅子に座った。


ロイドは辺りを見回すと、少し首を傾げる。


「ゼフィロス様もいないのか?

つーか、影とかもいなくない?

警備これで大丈夫なのかよ。

『お姫様』で『聖女様』だろ?」


「ゼロは今グレンとリオの訓練中なの。

影とか、ほかの警備は付けてないの。

私の身の安全は基本ゼロが担ってくれてるし、

グレンが、私を害そうとした人を拘束するように特殊な結界をこの部屋にはってくれてるの。ゼロがいない時はそれ頼みかな。

下手に人を入れて、情報が漏れるリスクは負いたくないからね。」


「まぁ情報は戦いの要だもんな。」


そう言いながら、ロイドはティーポットからカップにお茶を注ぎ込んだ。

ふわりと懐かしい生姜の香りがして、私は目を見開いた。

前世の母が、私が風邪をひいた時に入れてくれた生姜湯の香りによく似ていた。


「出来たよ。熱いから気を付けて。」


「ありがとう。」


カップに顔を寄せると、生姜の清涼感ある香りが鼻腔をくすぐった。

ふとお母さんの優しい笑顔が脳裏をよぎり、胸の奥がギュッと締めつけられた。


一口含むと、生姜特有の刺激的な辛みが舌を刺した。

他の生薬も入っているのだろう。

ほんの少し苦味を感じたが、その直後に甘みを感じてとても飲みやすくなっていた。

そして喉を抜けた瞬間から、胃の奥がぽっぽと熱を帯びはじめ、身体がすぐに温まってきた。

ほぅ……と息をつき、また一口飲む。

寒さで強張っていた身体がほぐれていった。


するとその様子を見ていたロイドが、困惑したように眉根を軽く寄せ首を傾げた。


「姫さんさ。警戒心なさすぎでしょ。

俺が毒を飲ませてるとは思わないのか?

魔族が作った薬膳茶なんて、怪しいと思うのが普通じゃん。」



「姫さん」と言う呼びかたは、私的ツボです。

「お嬢さん」呼びも好きなんですが、分かる人います?笑


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