93 お見舞い
ドアが開くと、アリスがパタパタと小走りでベッド脇に寄ってきて私を抱きしめた。
「フィーネ!心配しましたわ!
もう熱は下がりましたの!?
フルーツ、沢山買ってきましたのよ!
今盛り合わせにしてもらってるから、一緒に食べましょうね!」
「うん。熱も、もう下がったよ。
ありがとう、アリス。
──みんなも。」
アリスの後から入ってきたグレン、リオ、殿下とラウール様は、アリスの勢いに苦笑しながら私の側にやってきた。
アリスは私から離れ、ベッド脇の椅子に座った。
「熱、下がって良かったよ。
懇親会は週明けに延期したからね。
チョコレートもちゃんと冷蔵庫にとってあるよ。」
「ロイドも心配してたぞ。
お大事に、だそうだ。
城下の新鮮な果物を取り扱ってる店の情報を教えてくれた。
さすがは情報屋だな。」
「果物をアリスが山ほど買おうとしたので止めるのが大変だったんですよ。フィーネ様の好きな苺も買ってありますから。」
「皆、昨日から心配していたんだ。
──無事、戻ってきて安心したぞ。フィーネ。」
そう言って私の頭を撫でるラウール様に、ハッと息を呑んだ。
ゼロは、半眼になりラウール様を軽く睨んでいる。
「みんな、心配かけてごめんね。
もう、大丈夫だから。」
私はみんなを見回した。
──戻ってきた。
まだみんなと一緒にいられる。
嬉しくて嬉しくて、心がギュッとなった。
そして、その気持ちを込めて満面の笑みで返す。
「みんな、だいすき!」
「──っ!可愛いですわ!フィーネ!
その笑顔はいけませんわ!死人が出ますわ!
ほら、もう既に2人も!」
「なんというか、不意打ちの破壊力がすごいね。」
「本当に……想定外の破壊力ですね……」
グレンとリオが、顔を押さえて明後日の方向を向いている。チラリと見える耳は真っ赤に染まっていた。
「フィーネ。あんまうちの弟子を苛めんなよ。
可哀想に。」
「ふっ。うちの妹達はやはり可愛いな。」
「フィーネ。誰がこれを収拾つけるんだ。私か?」
そう言って頭を押さえて大きく溜息をつく殿下に、
「は?えっと。なんかすみません?」
とりあえず謝っておいた。
果物を食べながら、そういえば、と殿下に手紙を見せた。
「これ、私宛の手紙なんですけど。
こっちは、婚約の打診の手紙で、こっちはパーティの招待状です。
婚約の方は、陛下の名前を出して断りの手紙を書いておきますね。
で、問題はパーティの方なんですけど……」
「まてまて。
とりあえず婚約を打診してきた家名を見せろ。
──あぁ、これの返事はしなくていい。
陛下に書簡を出してもらおう。」
「なるほど。
筒抜けだよーって教えてあげるんですね。親切〜。」
ふふっと笑う私に、溜息をつく殿下とラウール様。
「あからさまにフィーネを求め出したな。
あの演説の効果か。」
そう言って眼鏡のブリッジを指で上げながら難しい顔をするラウール様に私は首を傾げた。
「いい事なんじゃないですか?
いずれはどこかに嫁ぐんですし。
そういう家門が多ければ多いほど、選定しやすいですよね?」
そう言うと、大きな溜息があちらこちらから聞こえた。
「なんで溜息……?」
「フィーネ、お前なぁ……無自覚に爆弾放り込みやがって……。」
そう呆れながら言うゼロに疑問符が並ぶ。
するとグレンがとてもいい笑顔をしつつ、背後にじわっと魔力が滲ませながら言った。
「フィー?
そんな有象無象のところにお嫁に行くなんて許さないよ?
むしろ、なんで他の所に行けると思ってるのかな?」
リオもいつものふわっとした笑顔なのに、黒い魔力がじわっと滲んでいて少し怖い。
「そうですねぇ。
黒い所が一切ない家門なら別ですが……そんな所ありますかねぇ?」
ラウール様はアリスが殿下と結婚する事に未だダメージを受けているらしく、私を重ねて無茶を言っている。
「アリスが行ってしまうのに、フィーネもか?
ありえんな。
むしろ2人とも嫁になんて行かなくてもいいんだぞ。」
「私はフィーネと離れるのは嫌ですわ!
お嫁に行くなら近い方がいいですわ!」
アリスは……可愛い。
私もアリスと離れるのは嫌だ。
「みんなの圧が……。
ほら、政治的判断もあるだろうし……ね、殿下。」
と殿下に話を振ると疲れたように、
「私に振るな。
……まぁ、政治的判断の上決めるのはそうだが。
フィーネを有象無象に渡すつもりはない。
それをしては失うものが多そうだからな。
──とりあえずその話は置いておいて、パーティの方の問題とはなんだ?」
と言って話を変えてくれた。
こう、ただわちゃわちゃしてるだけの話は書いてて楽しすぎます。
落ち着いたらわちゃわちゃしてるだけの短編でも描こうかなぁ。
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