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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第2部 学園編 〜欲望の種【前編】〜

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90 ブルースター

どれくらいの時間が経ったのか。

グズグズと泣いていた私は、ゼロの腕の中から離れた。

黙って抱きしめながら、頭を撫でていてくれたゼロは、私の頬に触れ、流れ落ちた涙を優しく拭う。


「目、真っ赤だな。」


ゼロはフッと笑うと、目に手を当てて治癒魔法かけた。


「ありがとう。」


そう言うとまた、涙が一筋流れる。


「はは。涙腺、馬鹿になってんなぁ。」


そう言って笑ったゼロは、私の髪に指を滑り込ませて顔を引き寄せると、頬に残る涙の痕を優しく唇で辿った。

そしてもう片方の手で私の唇を覆うと、その手の上に唇を落とした。


私は目を見開くと、ぐっとゼロの体を押した。

ゼロはクックッと笑いながら私から少し離れると、私の唇に置いていた手を離した。


「な、な、な、なに、してっ!」


「──涙、止まったろ?」


そう言ったゼロは私の目元を指でトントンと触れた。

私はパチパチと瞬きをした。

驚きと恥ずかしさで、涙が引っ込んでいる。


「あれ、ほんとだ。えっと、ありがとう?」


「はははっ。どういたしまして。いや、こちらこそ、か。」


ニヤッと笑うゼロに、何がこちらこそなのかと首を傾げる。


「──お子ちゃまめ。

よし、帰ろうぜ。さみぃし、腹減った。

あぁ、その前に。」


そう言ってパチンと指を鳴らすと、地面からふわっとリリスが外したチョーカーが浮き上がってゼロの手の上に転移してくる。

そして、それをグッと握った後に私の首につけてくれた。


「これでよし。」


そう言って立ち上がったゼロは、私の腰に両手を置き、ヒョイと立ち上がらせた。

しかし、私は足に力が入らずふらりと倒れそうになった。


「わっ!」


ゼロはグッと腰を引き寄せて私を支えると、溜息をついた。

その声には隠しきれない心配が滲んでいる。


「あいつがフィーネの身体を乗っ取って力を使ったせいだな。

……他に具合悪いとこねぇか?」


「……身体が重いくらいかな。

あと、ちょっと寒い。」


ゼロは私をじっと見ると、フッと笑って言った。


「もう、『大丈夫』って言わねぇのな。」


「……うん。ゼロは、絶対に私の味方だって分かったから。

もうゼロの前で強がるのはやめる。」


少し恥ずかしくなり、顔を隠すようにコツンとゼロの胸に頭をぶつけた。


「はは。すっげぇ殺し文句。」


顎を私の頭の上に置きながらそう言うゼロはなんだかすごく嬉しそうだった。


私は照れて少し赤くなった顔を、夜の暗さが隠してくれる事を祈りながら、顔を上げてゼロに微笑んだ。


「帰ろ。ゼロ。」


「だな。」


その瞬間──。

ふわりと優しい風が吹き、地面に大きな魔法陣が出現した。

燃え尽き何もない地面からふわりふわりと金色の魔力が湧き上がってくる。


「──っ!」


ゼロが私を痛いくらいに抱きしめる。

緊張したのも束の間、私達の足元から広がるように一面に水色の小さい花が咲き乱れた。

まるで水面にいるかのような綺麗な水色に驚きのあまり目を見開き、ポカンと口をあけた。

ただ、花を咲かせるだけの魔法だったのか金の魔力はもうかけらも残っていない。


「びっくりしたじゃねぇか!

──あんのクソティナ!今度会ったら締めてやる!」


憤慨しているゼロを尻目に、私はその花を見てリリスの真意を知った。

顔が引き攣り、頭を抱えたい衝動に駆られる。

私の中のリリスが笑っているように感じ腹立たしく思う。


「今度会ったら一発引っ叩いてやるんだから。」


「ティナをか?」


「ううん。リリス。」


「会うなよ。何されるか分かったもんじゃねぇ。」


「──ふふ。そうだね。

ねぇ、ゼロ。

これ摘んで帰ってもいい?」


「はぁ?まぁ、いいけど。ほら。」


ゼロはパチンと指を鳴らし、片手で持てるほどの量を刈り取り、ふわりと浮かして私に渡した。


「いい匂い。ありがとう。」


──リリス。

私は狡いからゼロには教えてあげない。

あなたの意図も、想いも。

誤解されていればいい。

貴女はもう、過去だから。


──この花はブルースター。

花言葉は『幸福な愛』『信じあう心』


リリスは、『フィーネ』になっても、ならなくてもどちらでも良かったのだろう。

前者だったら、『フィーネ』としてこの世界をハッピーエンドに導いていただろうし、

後者だったら、私がゼロとの絆を深める為の礎になる。

リリスが求めていたのは、あの日置いていってしまったゼロの幸福。

そしてゼロに対する贖罪だ。


月明かりと星が煌めく夜空の元、星の精とも言われるブルースターが優しく風に揺れていた。


私は優しくその花を胸に抱くと、


「ゼロ、帰ろう。」


そう笑って言ったのだった。



一つの山場を超えましたー!

心がギュッとなるようなお話を作るのが私の一つの目標なのですが、いかがでしたでしょうか?

少しでも皆様の心の琴線に触れることができたなら嬉しいです。


「続きがよみたい!」「面白い!」と思って頂けたらページ下部の【★★★★★】で評価と、ブックマークをしていただけると、執筆の大きな力になります……!

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