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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第2部 学園編 〜欲望の種【前編】〜

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89 世界にとっての『間違い』

side:ゼロ


「──ゼ、ロ……。」


ハッとフィーネに視線を向けると、彼女はその場にへたり込んでおり、涙を流しながら恐怖で顔が強張っていた。


俺は魔法陣を壊す手は緩めず、努めて優しく、声をかける。


「フィーネ。大丈夫だ。

もうすぐこれを解除できる。

ちょっと待ってろ。」


「ゼロ……。

消えたくない。

本当は、消えたくなんか、ないの。

もっとみんなと、一緒に、いたい。

わたしも、ハッピーエンドが、いいの。

──なのに、もう、からだ、うごかせない……

うごかない、よぉっ……」


たどたどしく、泣きながらそう言うフィーネを見て背筋が凍った。

フィーネのピンクダイヤのような瞳の色が濃く輝いていた。まるで──リリスのように。


「チッ!」


俺は目を見開くと、今はもう忌々しくも思うあの瞳に舌打ちをし、全力で剣を壁に押し入れる。


「ひっ!やだ、やだぁ!リリス、やめて!やめてぇっ!」


そう泣き叫びながら、フィーネの手は俺が付けたあのチョーカーへと伸びていった。


恐らくフィーネの身体の中の俺の力は、既にリリスによって無効化されてるはずだ。

最後の砦は外部から押さえ込んでいるあのチョーカーだけ。


「くそが──っ!!」


──間に合わない。


魔法陣を壊すよりも、リリスが封じてある魔力を解放する方が早い。

あいつは、『絶対的支配』を使って俺に名前を呼ばせる気だ。

それを使われたら抗う術はない。


(どうすれば──)


その時、ふわりと風に乗って花の香りがした。

足元一面に広がる白く美しくも忌々しい花々が目に入る。


(そうか!)


俺は剣を消すと、ダン!と地面を踏みつけた。


「燃えろ!」


そう一言言うと、一面に咲き乱れていたダイヤモンドリリーが一気に燃えて消えていく。


その瞬間、甘い芳醇な香りが辺りを支配した。

懐かしい声が耳に届く。


『ゼフィロス。──私の名前を呼びなさい。』


脳が揺さぶられ、膝をつく。

抗えないと頭も身体も理解する。

だが──。


俺はニヤリと笑みを浮かべ、名前を呼んだ。


「リリス・イヴ・アスモデウス。──俺の勝ちだ。」


俺が名前を呼ぶ直前、地面に咲いていた花は全て燃やし尽くされ、その瞬間魔法陣も消えていた。


この魔法陣の発動条件は三つだった。

1つ目は、リリスを模したあの花が咲いている事。

2つ目は、フィーネがこの場に来る事。

3つ目は、俺がリリスの名前を呼ぶ事。

俺はギリギリで、1つ目の発動条件を消したのだ。


名前を呼んだ事で、身体が自由になった俺は立ち上がると、リリスの前に歩み寄った。


リリスは立ち上がり、薄く笑みを浮かべながら俺を見ていた。


「リリス(・・・)、フィーネの身体を返せ。

そんで、もう二度と使うんじゃねぇ。

もし、こいつの身体をまた勝手に使うようなことをしたら──どんな手を使ってでも、お前を消す。」


俺がリリスを睨み、威圧しながらそう言うと、リリスは笑みを深くし、目を瞑った。

フッとリリスの魔力が消え、身体が崩れ落ちる。

俺はフィーネを抱きとめると、そのまま座り込んだ。


腕の中のフィーネがゆるゆると目を開け、その瞳に俺が写った瞬間、狂おしいほどの愛おしさが心を埋め尽くし彼女をそのまま掻き抱いた。

彼女の肩口に顔を埋めながら、声を震わせる。


「フィーネ。お前、さっき言ったよな。

幸せを掴むべきだとか、幸せな時間が手に入るとかふざけた事を……。

──俺の幸せは、もう、この腕の中にある。

お前が、それを奪うなよ。」


「ふっ、ぅ……ごめ、ごめんな、さい。ゼロ、ごめっ……」


フィーネが泣きながら、俺の背中の布をぎゅっと握り締め、縋りつく。

泣き止む気配がないフィーネを抱きしめながら、その温もりとほのかに感じる彼女の香りに心の底から安堵した。


「フィーネ。」

しばらくそうしていたが、俺はしがみつくフィーネの肩をそっと掴んで体から離すと、両頬に手を添えてポロポロと流れる涙を親指で拭ってやった。

何度拭っても止まらない涙に苦笑し、その落ちる涙すら愛おしいと思う。


フィーネの額に、俺の額を合わせ言い聞かせる。

彼女に、二度と過ちを繰り返させないように。

そして、俺が、二度と過ちを繰り返さないように。


「なぁ、フィーネ。

もし、この世界の『正解』がリリスを選ぶことだとしても関係ねぇ。

世界にとっての『間違い』が、俺にとっての『正解』だ。

俺の『正解』を認めないってんなら……こんな世界、壊して消してやる。

分かったか?」


「──っ、うんっ。ゼロ、ありがとう……」


その言葉にフッと笑うと、もう一度、今度は優しく抱きしめた。

この腕の中の『幸せ』を奪うことは誰であろうと許さない。

それが、リリスでも、この『世界』であっても。


──フィーネが誰を選んでも構わない、か。


空を見上げると、大きな月と一面の星空がキラキラと美しく輝いていた。


「俺を選べよ。フィーネ。」


泣いていて聞いてないだろうなと思いながら、そうボソリと呟いた。


いかがでしたでしょうか。

この事件で、フィーネとゼロの絆がまた一つ深まったかなと思います。


「続きがよみたい!」「面白い!」と思って頂けたらページ下部の【★★★★★】で評価と、ブックマークをしていただけると、執筆の大きな力になります……!

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