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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第一部 神殿編

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9 雨

Side:リオ

リオは護送中の馬車の屋根の上から空を見上げていた。

先程まで爽やかに晴れ渡っていた空も、今は曇り空だ。


聖女が男爵に踏みつけられた際、無意識に影から出そうになっていた自分をぐっと理性で押さえつけた。

こんな事は初めてだった。

どんな任務でも忠実にこなす殿下の影。

なのにあの瞬き一つほどのあの瞬間、殿下の指示を忘れ動こうとした自分がいた。


初めは任務として、中身が入れ替わったかのような彼女を調べた。

いくら影とはいえ、人の中身まで調べる事は出来ないが、過去、現在の周りの環境や周りの評価でいくらか推測する事は可能だ。

今までもそうやって人となりを推測し、任務にあたっていた。


人間は長い時間をかけて人格、中身を作っていく。

だが、彼女には中身が大きく変わっていった転換期がこの短期間で少なくとも3つあったように感じた。


一つ目は高等部へ編入してから殿下とアリスと出会った時。

二つ目は高等部卒業パーティーのあの断罪時。

三つ目は一人で泣いていたあの夜。


面白いと思った。

そんな人間は見た事がなかったから。

そしてこうも思ったのだ。

脆さを分厚く硬い殻で覆い隠すようにしている彼女を手に入れて、少しずつ優しく丁寧に自分の手で殻を割ってやり、そして最後には──。


ありえない考えに辿り着いた事に驚き、目を見開いた。

そして深く息を吐く。


(これ以上の思考は不要ですね)


自分は殿下直属の影だ。

これ以上の自己分析は方々に影響が出てくるだろう。


幸いか、グレンが彼女に惹かれている。


(このまま連れ去ってくれるならいいんですが。

あぁ見えて馬鹿真面目ですからねぇ。

まだ自覚がないんでしょうね。)


おそらくまだグレン本人は、自分はまだアリスの事が好きなのだと思い込んでいる。

自覚するのは、いつになる事やら。


(早くしないと、横から掻っ攫われてしまいますよ?)


雨の匂いがした。


「雨が降りそうですね」


リオはふわっと笑い、空を見上げた。



♢♢♢♢♢♢



Side:ラウール

(移送の準備は完了、焦げてしまった応接室の修繕手配も完了した。

使用人達にも先程の件の口止めもし、屋敷の守りも固めてある。

あとは……)


公爵邸の執務室までの廊下を歩きながらラウールは騒動の収拾を早期にはかるべく冷静に思考を巡らせていた。


(神殿が動く前に、男爵を捕える事が出来たのは大きいな)


フィーネ嬢のおかげで証言が取れた。

神殿が聖女を圧力をかけて従順にさせ、王家を乗っ取る計画。

神殿は男爵が一人でやった事だと言ってくるだろうが、貴族に神殿への不信感を植え付ける事ができるだけでも上々だ。

もし、今後聖女の引き渡しを要求して来たとしても突っぱねる事ができる。


ふと立ち止まり、


「彼女は大丈夫だろうか。」


と呟く。


彼女が立てた2年越しの計画は成功した。

ただ本来であれば魔塔か王城で幽閉される事を想定していたのだろう。

神殿の手の及ばない場所で、男爵を断罪する。

それが本来の計画だったように思う。


アリスの発案による公爵邸での保護。

男爵本人からの接触。

これらはフィーネ嬢にとって想定外だっただろう。

しかし彼女はこれを逆手にとって王手をかけた。


「あれはわざとだろうな。」


額に手を当て今日何度ついたか分からないため息をつく。

おそらくは男爵から暴行を受けたのは、彼女の計画だろう。

いくら評判が地の底に落ちていても彼女はこの国の聖女だ。

聖女への暴行は一族まとめて処刑されるほどの重罪。

それを狙ったのだ。


彼女にとって、我々が直接現場を見ていた事は僥倖だっただろう。

なにせこの国の第一王子が証人だ。


(彼女はとても危うい。)


彼女が身を切って動いたお陰で神殿に痛手を負わせた事は事実だ。

だが、その成果を誉める事はできない。


(あんなやり方を当たり前のようにやってはダメだ。

だが、それを教える事ができる大人は今彼女の周りにいない。)


本来なら、アルカディア公爵家に聖女を養子にする提案を行う予定だったが、グレンのあの様子を見る限りやめた方がいいだろう。


「グレンに提案したらどんな顔をするのか、試してみたくはあるな。」


(…やはりヴァルハイト公爵家うちか。

妹がもう一人増えるのは悪くないが。こちらばかりに力が寄るのはな…)


この件は保留だな。陛下や父と相談をしなくては。


窓の外を見ると雨が降りはじめていた。


「殿下とグレンの食事の用意と部屋の支度を頼まなければな。

リオの戻りは明日か。朝食は用意してやろう。」


こらからの段取りを確認しつつ、書類が山のようになっている執務室へ戻るのだった。

リオ!あなたそんな事を思って!?と思われました?私も思いました。笑

ラウールはいいお兄さんですよね!けどこれから苦労しそう笑


このまま実家編完結まで突っ走ります!

ブクマ、高評価お願いします(>人<;)

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