83 ロイドの推し
その言葉にギョッとする私達を尻目に、ゼロは言葉を続けた。
「俺は、そういうのに敏感でな。
目を見りゃ分かんだよ。
お前、瞳の濃さを調節してんだろ。
本来ならもっと濃い色のはずだ。」
ロイドは両手を上げると、溜息をついた。
「……こんなに早くバレるとは思わなかったな。
でも俺は人間を傷つけようとか、そんなことは思ってない。
そもそも、あんた達の人となりを自分の目で観察して大丈夫だと思ったら、自分から言うつもりだったんだ。」
「口ではなんとでも言えます。
目的は、なんですか?」
黒の魔力を纏った臨戦体制のリオがそう問いただすと、
「そうだね。前のやつの仲間かもしれないしね?」
銀の魔力を纏い、幾つもの魔導陣を展開させたグレンがそれに同意する。
ビリビリと空気が痛く、重い。
「リオ、グレン、やめろ。
2日目で学園を壊す気か?
学園からのクレームでラウールが禿げたらどうする。」
この空気の中で、気の抜けるような台詞を吐いた殿下は肘をつき顎を乗せた。
「まぁ。お兄様が禿げてしまうのはあまりに可哀想ですわ。
昔からリオやグレンが周りを壊してしまう度に、お兄様がフォローにまわっていましたものね。
またやってしまうと呼び出しの上に3時間はお説教ですわね?」
アリスは、頬に手を当てて首を傾けニコリと笑いながらそう言い放った。
昔の黒歴史をばらされたからか、ラウール様のお説教を想像したからか、はたまた両方かは不明だが、グレンとリオは顔を青くしてビシッと固まってしまった。
「まったく。お前達は昔から好戦的すぎるんだ。
相手に敵意がない以上、無駄に圧を強める必要はないだろう。
少なくとも今はゼフィロスが押さえているんだからな。」
そう言う殿下に、ゼロが感心したように言った。
「おお。流石は王太子だな。
クリスの言う通りだ。
『魔族』は確かにお前らより強い個体が多いが、基本穏健派ばかりなんだよ。
警戒する気持ちは分からないでもないが、少なくとも俺がいる時はもうちょっと肩の力を抜け。
──ラウールが禿げるのは俺も嫌だからな。」
ゼロがそう言うと、痛いほどだった黒と銀の魔力がフッと消え去った。
「お前ら帰ったら反省会な。」
はははっと笑いながらそう言うゼロに二人は顔を見合わせると肩を落とした。
「ゼフィロス──って、あのゼフィロス様ですか!?」
ゼフィロスという名前を聞いてから、目を見開き固まっていたロイドは、キラキラと目を輝かせた。
そして首に突きつけているダガーを気にせずに、横にいるゼロを見上げた。
「お前!あっぶね!急に動くなよ!怪我するぞ!?
あの、って何の噂かわかんねぇけど、おそらくそうだな?」
ゼロも敵だとは思ってなかったのか、ロイドが怪我をしないようにすぐにダガーを消すと是と答えた。
「あの!俺、ゼフィロス様のファンなんです!」
「……はぁ?」
ポカンと口を開けて首を傾げるゼロに、私達も首を傾げて顔を見合わせた。
「ロイド、ゼロのファンなの?推しってこと?」
私がそう言うと、テンション高めに答えた。
「おし?あぁ、ファンイコール推しって事か!そう、推し!
ゼフィロス様は魔界にいる時、戦闘で負けなしだったらしいんだ!
『武闘大会』での無双は今でも伝説になってる。
まっじか!本物……やっば。」
その勢いに、珍しくゼロが押されている。
「お、おう。まぁ、昔の話だ。今はそこまでの力はねぇよ。」
「へ〜。ゼロって魔界でもそんなに強かったんだ。
……あんなに可愛いのに。」
私がそう言うと、リオとグレンがいつもの訓練を思い出してか、苦い顔をしながら言った。
「でも師匠は小さくても強かったですよ?
この前も惨敗でした。」
「僕もだよ。猫のくせに強すぎなんだよね。
いちいちあざとく煽ってきて腹が立つったらないよ。」
「お前ら、猫の姿から離れろよ。」
ゼロがげんなりしながら額に手を当てる。
「まぁ。今度猫ちゃんのゼフィロスが戦ってるところを見てみたいですわ!」
「それは私も見たいな。アリス、今度一緒に訓練を見に行くか。その後、庭園で久々にお茶でもしよう。」
そう言ってアリスの手にキスをする殿下に、
「こ、こんなところでやめてくださいませ!」
と真っ赤になって手を振り払い、胸元でぎゅっと握りしめるアリス。
殿下はそれを愛おしげに見ている。
私はそれを横でしっかり目撃すると、
「くっ!また正面じゃない!!
こういうタイミングでいっつもリオが正面なのはなんで!?
ずるい!」
とリオに文句を言った。
リオは困惑しながら、シャラッと耳のピアスをゆらめかせ首を傾げる。
「なぜでしょうねぇ。強いていうなら、欲が強すぎて運が巡ってこないのでは?」
「はっ!物欲センサー的なやつか!!」
ガックリと肩を落とす私に、ゼロが疲れたように溜息をつくと私達を見回して言った。
「緊張感どこやったよ。」
私はクスクスと笑いながら、立ち上がった。
「一旦お茶でも飲んで落ち着こうか。グレン、私お茶淹れてくるね。」
「私も手伝いますわ。」
アリスはまだ少し赤い顔でそう言った。
おそらく殿下からの熱い視線から逃れたいのだろう。
「あぁ、それならこの前知り合いから貰ったクッキーがあるんだ。それを開けようか。」
にこりと笑いながらそう言うグレンと一緒に、給湯室へ向かった。
魔界でもゼロはめっちゃ強かったんです。魔力を自分で作れない代わりに、効率のいい魔力の使い方や、戦闘方法を研究してました。リリスから魔力を貰うようになってからは無双です。
いつか、番外として過去編も書けたらいいなぁ。
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