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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第2部 学園編〜欲望の種〜

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69 遅刻常習犯とピアス

王立学園最高学府での学園生活は基本、合同講義とゼミの2つを軸に過ごす。

私とアリス、クリス、今年から特待生として入ったリオは『古代魔術・魔族研究ゼミ』に所属することになっている。


ちなみに担当教授はグレンと、パフィス・ミルマンという人だ。

彼女は昔から魔族研究をしており、その分野では有名な人らしい。

そして、他にもう一人、男子生徒がゼミに入るらしい。


例の件の部外者が2人もいるとやりづらそうだが、ゼミを新たに作った件と、リオの入学の件だけでも特別優遇なので、それ以上の我儘は王家でも言えないのだそうだ。


「グレン、まだかな?」


今日は学園に一緒に行くことになっており、部屋で待つように言われていたのだ。


「あいつ、マイペースだからなぁ。

大方、気になる文献でも見つけて没頭してんだろ。

来たら叱ってやれ。」


そう言いながら首に擦り寄ってきたゼロに、


「叱るのは先生の役目じゃない?」


と反論するが、否と返された。


「お前が叱った方が、ダメージがでかいんだよ。」


私はその言葉に、よく分からないなと首を傾げた。

そういえば、と肩の上のゼロを撫でながら話を続ける。


「学園長の許可が下りてゼロも学園に行けるんだよね!

よかったよ。ゼロがいてくれたら安心。」


「聖女の『使い魔』ってので王家がゴリ押したらしいな。

ラウールが、貴族とか教授への説明の資料を作るのに何日も王宮に寝泊まりしてたぞ。

今度礼と労いに行かねぇとな。」


(ラウール様、社畜の鏡だなぁ。

確か辛いもの好きだってアリスが言ってたから、今度辛い料理作ってあげようかな。私も久々に食べたいし)


「それにしても『使い魔』って概念、よく搾り出したねぇ。

古い文献でも漁ったのかな?」


「ま、リリーが魔獣かなんかを捕まえて使役してたんだろうさ。

昔魔界でもよくやってたからな。

その記録でも残ってたんだろ。」


「あぁ。なるほど。」


その時、コンコンと扉を叩く音が聞こえ、返事をすると、グレンが部屋へと入ってきた。


「おはよう!遅くなってごめんね。

面白い文献を見つけてしまって。」


「おせぇよ。この遅刻常習犯。」


私の肩からぴょんと飛び降りたゼロは、

ぷりぷりと怒ったようにグレンの足にキックをお見舞いした。

全然痛そうじゃなくて、可愛い。


「5分の遅刻だよ、グレン。

次遅刻したら、待ってあげないから。」


腰に手を当て、怒ったように言う私にたじろいだグレン。


「う……。ごめん、次は遅れないよ。」


「ふふ。なら、よし。

グレン、それ先生用のローブ?すごく似合うね。」


グレンが着ているのは、腰まである白のローブだ。

裾周りにとフードに、制服と同じ細やかな金の刺繍と月と星をモチーフにした模様が散りばめられており、右胸には金の刺繍で校章がつけてある。


ちなみに今日は入学式だからなのか、中はスーツっぽいのを着ていた。


「そうかい?ありがとう。

──フィーも、すごく可愛いね。

心配になるくらい、似合ってるよ。」


そう言いながら、私の頭を撫でた。

グレンは髪を紺色の紐で後ろで一つに結んでいた。

結いきれなかったサイドの髪の間から、お揃いの魔石のピアスがらちらりと見え、心臓が跳ねた。


「あ、ありがとう……。」


思わず目を逸らす。

グレンは笑みを深くし、頭を撫でていた手を滑らせ右耳とピアスに触れた。


「──っ。」


グレンは少し屈むと、私の耳元に顔を寄せ、


「うん。ちゃんとつけてて偉いね。いい子だ。」


どこか、大人な雰囲気を漂わせながらくすっと笑うとそう囁いた。

ぞくっと背筋を駆け抜けた甘い熱に、心臓が跳ね上がり、顔に熱が籠る。

あまりの近さと鼻腔をくすぐる甘いムスクに、息をするのも忘れてただ口をパクパクと開閉させることしかできなかった。


「おーい。遅刻すんぞー。」


呆れたようにそう言うゼロに、ハッとした私は耳に手を当てて後ろに跳び退がった。


「──っ!ぐ、グレンのばか!早く行くよ!」


グレンはクスクスと笑いながらゼロを抱き上げると、私の後に続く。


「うちの弟子たちはグイグイいくなぁ。

くくっ。フィーネもかわいそうに。」


「全然かわいそうになんて思ってないでしょ、先生。」


「バレたか。──あいつ、鈍いからなぁ。

徹底的に攻めるべきだろ?鈍いあいつが悪い。」


「あはは。フィーは鈍いよねぇ。」


そんな会話を小声で交わしている彼らに、私はバッと振り返ると、力強く反論した。


「さっきから聞こえてるんだからね!

私、別に鈍くなんかないし!」


それを聞いたグレンとゼロはお互い顔を見合わすと、苦笑しながら、


「ふふ。はいはい。急ごうね。」


「はは。遅刻だぞー。」


そう言って立ち止まっていた私を追い越した。











グレンの遅刻はいつになったら治るんですかね?

マイペースなのも考えものですね。

今日からグレン先生です。

皆ほどフィーネと会う時間がとれないので、会えると濃密な甘さになる予定です。(当社比)


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