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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第2部 学園編〜欲望の種〜

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68 朝のもふもふとリオ

「……ーね、フィーネ。そろそろ起きろ。遅刻すんぞ。」


目をゆっくり開けると、いつの間にかベッドで横になっていた。

私の頬をペチペチと黒い毛玉がパンチしている。


「うふふ。かわいい。」


その塊をぎゅっと抱きしめると、文句を言われた。


「お前、ほんとその寝起きの悪さ、直した方がいいぞ。」


「んー……。」


もふもふが温かくて目を閉じてしまう。


「ほら起きろって!リオが来るぞ!

って、あー、ほら言わんこっちゃない。」


「……フィーネ様?起きなくては遅刻しますよ?」


リオの声が頭の片隅で聞こえる。


「んー……わかってるもん。」


「それ、ぜってぇ分かってないやつだって。

おい、リオ。助けてくれ。潰れちまう……。」


「……潰れてしまえばいいのでは?」


「はーん。

……怒りたいのは俺の方なんだがな。

『食事』の時間の邪魔しやがって。

そもそもお前がフライングして来るのが悪いんだろうが。

こいつ、見られるのいやだからって毎日朝早起きしてんのによ。

今度から時間は守れよ〜。」


「チッ。」


腕の中のもふもふが消え、パチリと目を開けると、目の前にリオがいた。


「おはようございます、フィーネ様。

急がないと時間がありませんよ?」


そう言いながら首を傾げ、左耳につけているピアスが揺らめいた。


「は!時間っ!」


私は急いで起き上がるとベルで使用人を呼ぶ。


「……あれ?ゼロは?」


「ここだよ。」


リオの肩にひょこっと現れたゼロが、リオの頬を小さい手でペチペチと叩いて抗議した。


「お前、力一杯ぶん投げんなよ。

この可愛い身体が怪我したらどうする。」


「うるさいですよ、師匠。

あとウザいです、師匠。

さぁフィーネ様、急がなくていいんですか?」


ベッドから降りて、支度をしながら、先ほどのゼロとリオを思い出し、クスクスと笑いが漏れた。


(あのお出掛けからリオがゼロに遠慮しなくなったな。

ふふ。仲良くなってなにより)


支度が終わると、鏡の前に座る。

リオが背後に立って髪をブラシでときながら、髪型のリクエストを聞いた。


「今日は、ちょっと頑張らないとだから、アリスからもらった花の髪留めでハーフアップにして!」


「分かりました。

何を頑張らないといけないんですか?」


「何をって、全部?

ほら私、高等部の時、色々やらかしてるでしょ?

まずはみんなに謝らないと。

私に対する評価は地の底だから、謝罪も受け入れてくれるかどうか分からないけど。

それに受け入れてくれたとしても、どうやって関わっていくか悩む所なんだよね。

旧神殿派や、反公爵派もいるって聞くし。

ああ、胃が痛い……。」


ゼロが鏡の前に座り、私を見た。


「お前、何やらかしたんだよ。

ま、なんにせよ、フィーネは考えすぎだろ。

お前らの年齢で、裏がある人間なんてほぼいやしねぇって。

学園の中くらい気楽にいけばいいんじゃねぇの?」


「う……。高等部で黒歴史が増産されてるの。

あんまり突っ込まないで。思い出したくない。」


げっそりとしながらゼロの疑問に答える。

思いつくありとあらゆる方法で、男子生徒にベタベタしていたのだ。

自分が蒔いた種とはいえ、名誉の回復には時間がかかるだろう。


(気楽に、かぁ)


リオが丁寧に髪を結いながら鏡越しに私を見て微笑んだ。

いつの間にか、サイドが綺麗な編み込みにされている。


「素のフィーネ様でいれば、大丈夫だと思いますよ。

旧神殿派や反公爵派も確かにいますが、それは親の代の話で、子世代は意外と柔軟なんです。

アリスの影響でしょうね。」


(なるほど。アリスのストーリー改変の余波かな)


「そっか。なら私はみんなに謝ったら、とりあえず『聖女』の評価と能力を上げることに注力しようかな。

いつまでも『無能聖女』だと、方々に迷惑かけちゃうしね。」


すると、ゼロが呆れたように言う。


「……友達、増やさねぇの?

そっちに注力しろよ。

学生っつーのは青春してなんぼだろ。」


私は、む……と口をへの字に曲げると、ふいっとゼロから目線を逸らした。


「……いいの!みんながいるからいいんだもん。」


すると、リオが嬉しそうに小さく笑いながら、私の意見に同意してくれた。


「ふ。私も他の男子生徒には関わらなくてもいいと思いますよ?

私も、アリスも、殿下もフィーネ様と一緒にいますからね。

グレンは「ずるい」と愚痴をこぼしていましたよ。

さぁ、出来ましたよ。」


「ありがとう!うん、今日も完璧だね、流石はリオ!」


「過保護は良くねぇぞ。

ま、男子生徒に限ってならそうだが。

ちゃんと女子生徒とは仲良くする努力をしろ。」


ゼロは、そう言って私の肩にぴょんと飛び乗ると、可愛い前足でぷにぷにと私の頬を押してきた。


「うぅ、分かったよ。お母さん。」


「誰がお母さんだ、誰が。」


椅子から立ち上がり、鏡の前でくるりと一周する。

学園の制服は、高等部の時とは異なり少し大人な印象なものに変わっている。


ベースの色は深い夜空を思わせる紺色。

短めの丈に仕立てられたジャケットは、凛としたダブルブレストだ。

中の白シャツには、ストライプ柄のタイが結ばれている。

左胸には繊細な金の刺繍が施された校章が付けてあった。

ウエストからふんわりと優雅に広がるロングスカートは、裾周りに細やかな金の刺繍と月と星をモチーフにした模様が散りばめられ、くるりと回ると、最下層の繊細なレースがふわっと広がった。


「ふふ。制服可愛くてテンション上がるなぁ。

アリスの制服姿も早く見たい!

……あれ?リオは着替えないの?」


「私は今から一仕事してから学園へ行きますので。

あちらでまた会いましょう。」


そう言うと、私の手を取り口付けをするとフッと消えた。


「──っ!もう!すぐそういうことするんだから!」


私は真っ赤になって叫んだが、リオには聞こえてはいないだろう。


「あいつ、段々遠慮なくなってきたなぁ。」


とゼロは肩の上で欠伸をしながらのんびりと言うのだった。



リオとゼロの小競り合い、可愛くてずっとやっていてほしいです。グレン、リオ、ゼロのトリオは書いていて本当に楽しい!第2部でもたくさん書きたいなと思います!


「続きがよみたい!」「面白い!」と思って頂けたらページ下部の【★★★★★】で評価と、ブックマークをしていただけると、執筆の大きな力になります……!ご協力よろしくお願いします!

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