67 どうしてこうなった
「きゃぁっ!それでは、この可愛らしい髪もリオ様が!?」
きゃぁぁ!と周りの令嬢達が悲鳴をあげる。
「え、あ、はい。えっと……。」
「私、今朝グレン様と一緒に登校なさってたのを見ましたわ!フィーネ様の頭を撫でていらしたの!
甘いお顔がさらに甘くなっておられて!
見てるだけで幸せでしたわぁ。」
まぁまぁまぁっ!とニヤニヤしながらわたしを見る令嬢達。
「いや、あのっ!」
「猫ちゃん可愛いですぅ……。
癒されます……。お腹見せちゃうの?
はぁ……、もふもふ可愛いですぅ……。」
ゼロは令嬢達に褒められ撫でられご満悦だ。
「それは、そうです!可愛いでしょう!
うちのゼロ!……いや、そうじゃなくてっ!」
その令嬢達に混じり、してやったりという風のアリス。
「うふふ。」
「──どうしてこうなった。」
♢♢♢♢♢♢♢
──数時間前。
まだ日が昇って間もない王城の一室。
白とアイボリーを基調としたシンプルで上品な空間。
──ここが私の私室だ。
大きな天蓋付きベッドと、それに向かい合うように配置された応接用のソファがある。
ベッドの横の壁際には、白く滑らかな天板の大きな机と座り心地のよいアイボリーの椅子。
そのすぐ傍らの扉を開ければ、王宮の庭園を一望できる贅沢なバルコニーが広がっている。
小さなテーブルと二脚の椅子が置かれたそこは、今日のような晴れた日に朝食を楽しむ特別な場所だ。
以前までは客間を使っていたのだが、内密にだが第一王女になり、それでなくとも聖女という肩書きがあるので王宮内に自室を作ったのだ。
ちなみに、私が王女になったことはオフレコということになった。
それは、神殿と聖女に対する悪評が思ったよりも酷かったため、王家として公表した時のリスクがあまりにも大きかったからだ。
これから、私の評判を上げることは急務だ。
ちなみに、私はヴァルハイト家の遠い分家の養子ということで通すことになった。
「フィーネ・ヴァルハイト、フィーネ・ヴァルハイト、フィーネ・ヴァルハイト……。
うぅ。緊張する……。」
私はバルコニーで、そうブツブツ言いながら人型のゼロと朝食を食べていた。
「お前、ちゃんと食わねぇと力でねぇぞ。ほら。」
そう言って、頬杖をつきながらゼロはフォークに苺を刺すと私の口にヒョイっと入れた。
口に入れられた苺を咀嚼し飲み込むと、ゼロに抗議の声を上げた。
「あのね、子供じゃないんだから一人で食べれるよ!」
「さっきから食事が全然進んでねーんだよ。
緊張するのは分かるが、さっさと食え。
早くしねぇとリオが来るだろうが。」
「う……はぁい。」
最近は毎朝こうして私が食事をとった後に、ゼロも『食事』をするのがルーティーンになっていた。
リオもほぼ毎朝私の髪をアレンジしに部屋に来る。
流石に、ゼロに血を吸われる姿を誰かに見られるのは恥ずかしいのでバッティングしないよう、毎朝気を付けているのだ。
「よし。ごちそうさまでした。」
手を合わせてそう言うと、ゼロが私の背後に立った。
優しく大きな手が、ふわりと髪を左に寄せて首筋を出した。
そして、ゼロの熱い息が首筋にかかりぐっと歯が皮膚に食い込む。
その時、チラリとバルコニーの手摺に人影が見えた──
と思った瞬間、ゼロが私の目を左手で塞いだ。
「ゼロ?──っ!?」
視界を奪われたことで、首筋に触れる唇と吸い上げられる感覚が恐ろしいほど鮮明に伝わってくる。
(あたま、まっしろに──)
私は必死で彼の腕を掴んだ。
力が入って、指先がゼロの腕に食い込む。
その背中を、強い力でぐっと右腕で後ろから抱きしめられた。
身動きすら許されないほどの強い拘束と甘い痺れに、私の身体は小さく跳ねる。
そして、はっ……と熱い吐息を首筋に感じると、温かい魔力がそこに巡った。
「まだ、早ぇだろ。あとにしろ。」
低い声で、珍しく不機嫌そうにそう言うゼロを、疑問に思うが頭がまともに働かない。
身体に力が入らずに、椅子からずり落ちそうになった。
「おっと。」
ゼロは私の目から手を離し、私の身体を抱え上げた。
そのまま部屋の中に入りソファーに座ると、私を横抱きのまま膝の上に座らせた。
私は目をつぶってぐったりとゼロに寄りかかる。
「悪いな、ちょっと吸いすぎたか。」
そう言いながら、顔にかかっていた髪を優しく退けるとそのまま頭を撫でた。
「きもちいい。」
ゼロの手が大きくて優しくて、安心する。
「……無意識に煽るなよ、阿呆フィーネ。」
「どういういみ……?」
さっき吸いすぎたと言うのは本当なんだろう。
いつもならもう回復しているはずなのに、今日はまだ動けそうにない。
「はぁ……なんでもねぇよ。」
溜息をつきながらそう言うゼロに疑問符がとぶ。
「そういえば、さっき、だれかいた?」
バルコニーの手摺。
そこに人影が見えた気がしたのを思い出した。
「……ただのせっかちな弟子だよ。」
「カラス?」
「そ。ま、気にすんな。」
そう言ったゼロは、私を支える腕に少しだけ力を入れた。
相反して頭を撫でる手はふわっと優しい。
あまりの心地良さに、考えるのを放棄してそのままうたた寝をしてしまったのだった。
第2部 学園編〜欲望の種〜
本日からまた大切に物語を紡いでまいります。
フィーネちゃん達の恋と友情。そして成長を見ていただけたら嬉しいです。
とりあえずゼロは自重しなさい!
「続きがよみたい!」「面白い!」と思って頂けたらページ下部の【★★★★★】で評価と、ブックマークをていただけると、執筆の大きな力になります……!ご協力よろしくお願いし




