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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第一部 神殿編

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62 ゆびきり

夢と現実の間をふわふわと漂っていると、ゼロ達の声が耳に入ってきた。


「こいつ、まだ寝てんのかよ。どうするかな……。」


「寝かせといてあげましょう。私は殿下のところへ報告に行かなくてはいけないので、グレン、ラウールからの伝言は任せても?」


「ああ。……いいのかい?報告は、僕が行ってもいいんだけど。」


「まだ、グレンにはフィーネ様に話す事があるんでしょう?

それにこういう時は、貴方の方がいい気がするんですよ。

ゼフィロス的に言うと『適材適所』、ですかね。」


「だな。俺も今回はグレンで『正解』だと思うぞ。

じゃ、俺もリオについて行くかな。

お前らの件を一応報告しねぇと、だろ?」


そう言うと、リオの肩にぴょんと飛び乗ったのだろう。リオから苦情が漏れた。


「勝手に乗らないでもらっていいですか。」


「いいじゃねぇか。減るもんじゃねぇし。ほら行こうぜ。」


(起きるタイミング、逃しちゃったな。

それにしても、いつの間にか仲良しになってる)


キィ、パタンと扉が開いて閉まる音がした。

部屋に静寂が戻る。


「……フィー、起きてるでしょ。」


グレンが少し呆れた様子で話しかけてきた。


「起きるタイミング、逃しちゃって。」


私が苦笑いしながら身体を起こすと、グレンが手の平を私のおでこに当てた。

ひやりとして気持ちがいい。

ふぅ、と息をつく。


「──やっぱり、少し熱があるね。」


グレンはそう言うと、私の身体をふわりと浮かせ、腕の中に抱き抱えた。


「……一人で歩けるよ。」


そう言うが、まるっと無視されベッドに優しく移動させられた。


「医者を呼んでくるよ。」


そう微笑みながら言うと、私の側を離れようとするグレンの服を咄嗟に掴む。


「……フィー?」


怪訝そうに私の名前を呼ぶグレンに、普段なら出さないだろう言葉が出てきた。


きっと、熱のせいだ。


「……行かないで。」


じわりとグレンの顔が滲む。

次いで出てきたのは、彼を責める言葉だった。


「……ずっと、側にいてくれるって、約束したのに。」


グレンはハッと息を呑んで、目を見開いて私を見る。


「どこにもいかないって、約束したのに。

戻ってきたら沢山話聞いてくれるって言ったのにっ!」


「フィー……ごめ、」


「……約束守れなくてもいいって思った?自分がいなくてもみんながいるから、大丈夫だろうって思ったの?

……いなくなっちゃやだよ……おいていかないで……!」


ポロポロと目から寂しさの雫が零れ落ちる。

縋りつくように震える私に、グレンはそっと私を抱き寄せて、背中を撫でた。


「フィー、ごめん、ごめんね。

もう、絶対自分を捨てる手段をとったりなんかしない。

そうならないように、強くなるよ。」


グレンの声が震えて聞こえた。

抱きしめられている腕が強くなる。


「もう、絶対、あんなことっ、しないで。

怖くて、死んじゃうかと、思ったっ。」


止まらない涙で、声を詰まらせながら、一生懸命に伝えた。


「うん。もうしない。絶対に。ごめん、ごめんね。」


グレンは、しゃくりあげながら泣きじゃくる私の身体を苦しいほどに抱きしめながら、掠れた声で何度も謝った。



どれくらい時間が経ったのか。

泣きすぎて熱があがったのか、頭がぼうっとする。

グレンが私の身体を離し、頬に手の平を当てながら親指で涙を拭ってくれる。その手がほてった頬に冷たくて気持ちいい。ほぅと息を吐くと、目をつぶってその手にすりっと頬を寄せる。


「グレンの手、きもちいい。」


グレンは何故かビクッとした後、大きく深呼吸をした。


そして、


「うん、フィー。熱があがってるんだね。

ほら、横になって。」


と言うと、グレンは頬から手を退け、結んでいた髪を解くと私をベッドに寝かせて立ちあがろうとした。


「医者を連れて……」


「やだ。いかないってやくそくした。」


私はグレンの服を引っ張った。

熱で頭が働かないからか、言葉が舌足らずになってしまう。


「いや、約束はしたけど、そういうことじゃな……」


「そうだ。こゆび、だして。」


「ん?小指……こう?」


私は、グレンの小指と、自分の小指を絡ませると、


「ゆびきりげんまん、うそついたら、はりせんぼんのーます、ゆびきった。」


そう歌って指を離した。


「……なんだい、その怖い歌。」


心なしか顔を引き攣らせながらそう言うグレンに、笑いが漏れ出る。


「ふふ。うそ、つかないように、おまじない。

うそついたら、はりせんぼん、なんだからね?」


「それは、絶対守らないと、だねぇ。」


優しい声で心が暖かくなる。


(あぁ──あたまがふわふわする。)


「うん。……あのね。わたしも、つよくなるから。

みんなといっしょに。

だから、ちゃんと、となりにいてね。やくそく……」


心の中にあったおもりはもう感じられない。

きっと涙と一緒に流れていったのだろう。

私はグレンがどこも行かないように、服をギュッと握りしめながら、ふわふわと夢の中へ落ちていった。


ゆびきりげんまん、懐かしいですよね。

このシーンは絶対グレンにゆびきりさせたかったんです!


さあ、第一部あと残り4話の予定です。

楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!


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