58 矜持
重苦しい雰囲気を一蹴するように、殿下がパンと手を叩き話を変えた。
「よし。なら次は私達だな。──神殿は掌握済みだ。」
殿下から神殿の調査状況と、今後の報告についての説明があった。
『聖女研究』の資料は全て回収し、機密事項として魔塔で厳重に保管するとのことだ。
他の証拠も押収済みで、こちらは司法局が精査を行っていくらしい。
その後関わった人物の取り調べに入る。
元大神官は、表向きは自身の罪の重さに耐えかねて自決した、ということになった。
そして、高等部時代の私の言動は、神殿の命令で動いていた形にし、まるっと収める手筈も整っているらしい。
「ちなみに、今回の件を全て国民に伝えることはしない。
まだ敵の目的も分からない現状では、余計な混乱を招くことになりかねないからな。
──公表できるのは、精々、代々の聖女への加害と資金の横領くらいか。
まぁ前者だけでも重罪だ。
貴族からは『神殿』と言う組織を潰すという案も出ているが、どうなるかはまだ決まっていない。
フィーネ。これからはお前も王家の一員だからな。
あまり目立った行動は取るなよ。」
「うーん。殿下、それなんですけど……」
「お兄様、だろ?」
「え?」
「お兄様」
殿下が圧をかけて催促してくるが、まるっと無視だ。
「……殿下。私が王家に養子に入ったことはまだ伏せておいてほしいんです。
やっぱり今神殿の件でバタバタしている時に余計な火種を作るのは得策じゃないですし。
それに、動きにくくなるのは困ります。
信頼できる家をピックアップして下さい。
そこに養子に入ったと言うことにしましょう。」
「お前は……。はぁ。この件はまた後日だな。──さて、これで情報共有はある程度できたか?」
ここでお開きかと思いきや、ラウール様が私と殿下が突っ込まれたくないことをぶっ込んできた。
「いや、まだだ。殿下、いつからフィーネと今回のことを計画していた?俺たちには内緒で。」
殿下の目が泳ぎ、私に振ってくる。
「……それは、必要な情報ではないだろう。なあ、フィーネ。」
(ちょっと!私に振らないで下さいよ!殿下!)
目で殿下に抗議しつつ、ラウール様を宥めようとする。
「そ、そうですね、殿下。あはは。ラウール様は、細かいところを気にしすぎ……」
「ほう?これは説教が伸びるなぁ?フィーネ。」
キラッとラウール様のメガネが光り、地獄の宣告が私を追い詰める。
「ひぃ!養子の話が出た時です!
……あの時、神殿と王家の契約の話を大神官から聞いたのを思い出して、どうせなら使えないかなと殿下に『相談』しまして。」
「いや、あれは『相談』じゃなくほぼ決定事項のような言い方だったがな。
……まぁ、それで私が陛下達に相談の上、承諾し裏で動いていたというわけだ。
ちなみに作戦立案はフィーネ本人だからな。
私じゃぁない。」
そう言い放った殿下に、私は抗議声をあげた。
「酷い!たった一人の妹を売るんですか!?」
「都合のいい時だけ妹になるんじゃない!」
「殿下、フィーネ。
お前達に言えないことがあるのは立場上仕方ないのは理解している。
だが、出来る範囲での情報共有はすべきだ。
そして、次からはもう少し身の安全を考えた作戦立案をしてくれ。
これでは我々の心臓がもたん。」
「う、すまない。」
「……ごめんなさい。」
「夜、殿下の執務室で、説教だからな。」
ラウール様はにっこりと笑いながら、そう言った。
背後に鬼の幻覚が見え、私はひぃ、と声を漏らしゼロを抱えて震えたのだった。
話を終え、皆が席を立つ。
私はアリスに一瞬目配せをした。
「グレン、リオ。」
なにやら話し込んでいた二人に、話しかける。
「今から、私の部屋に来てくれる?話したいことがあるの。」
グレンとリオは、顔を見合わせ小さく頷くと私の誘いに応えてくれた。
「……うん。分かったよ。
僕達もフィーに話があったんだ。」
♢♢♢♢♢♢♢♢
──大切だから、守りたい。
その想いは同じはずなのに
なぜこんなにも一方通行なんだろう。
このままじゃ貴方達はずっと、私が隣に立つことすら許してくれない。
貴方達にとって私は弱い存在だから。
だから、分からせてあげる。
私だって貴方達の隣に立てるってこと。
なんなら半歩前にだって出られるってことを。
後ろで大人しく護られてなんてあげない。
──これは私の矜持だ。
貴方達を強くする。
そして、私を認めさせる
その為の下準備はすんでいる。
お兄様と呼ばれたいけど、ラウール様に妹を売る殿下。そういうところですよ、といいたいです笑
次回はグレンとリオの苦難です笑
頑張って二人とも!
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