57 情報交換
王宮の大食堂に入ると殿下達が先に座っていた。
私は一応王女のため、殿下の左側に、アリスは右側に座った。
ゼロは私の頭の上でくつろいでいる。
グレン、ラウール様、珍しくリオも私達の正面に座り談笑していた。
食事はもう中央に並んでおり、好きな物を取ることができるようになっていた。
私達が座ると、使用人は全員部屋から出て行き、グレンが空間遮断結界を張った。
殿下の合図で昼食が始まる。
「さて、始めようか。
──アリス、オムレツ好きだろう?
取ってあげよう。
ああ、好きなフルーツも沢山準備させたんだ。
どれを食べる?」
嬉しそうに甲斐甲斐しく世話をする殿下と、恥ずかしいのだろう、真っ赤になるアリス。
そんな場面を間近で見ることができる喜びに私は打ちひしがれる。
だが──。
「あぁ、我儘言っていいならラウール様かリオの場所に座りたかった……!くっ!正面だなんて、羨ましい!」
恨めしくラウール様とリオを見る私に、リオがふわりと笑いながら、
「フィーネ様、場所変わりましょうか?」
と提案をしてくれた。
しかし、真っ赤なアリスから却下される。
「いけませんわ!食事中に席を立つなど淑女としてあり得ませんもの。
うぅ……正面から観察されては食べ物が喉を通りませんわ……。」
ラウール様は、いつも通りアリスに甘々だが、私に苦言と地獄の予約を入れてきた。
「はは。恥ずかしがるアリスも可愛いな。
それにしてもフィーネ、何故俺のことを様付けで呼ぶ。
王女になったんだ。呼び捨てにしろ。
敬語もなしだからな。
──あと、今日の夜は説教だ。時間を空けておけ。」
「嫌です!ラウール様はラウール様ですもん。
──あと説教はまた今度がいいです。」
そう私が反論すると、顔を引き攣らせながらメガネをクイっと上げた。
「なぜそこに固執する。
──明日から忙しくなるからな。今日のうちに終わらせよう。」
「だって、ラウール様は私の理想のお兄様なんですもん。
なので敬意を表して様付けなんです!
──お説教やだぁ。」
(冷徹メガネの知的ビジュしておいて、中身は溺愛系で直情型な頭脳派お兄様。属性盛りだくさんな『お兄様キャラ』。正直、前世めちゃくちゃツボだったんだよね。)
アリスが私の言葉に反応してラウール様に毒を吐いた。
「まぁ……これが理想ですの?」
「これ、は酷いんじゃないのか、アリス……」
がっくりと項垂れるラウール様を、殿下が羨ましそうに見た。
「『理想のお兄様』か。」
「殿下。フィーネからお兄様と呼ばれないからといって、そんな目で見ないでくれ。」
ラウール様が疲れたようにそう言い、殿下は、私に催促し始めた。
「フィーネ。お兄様と呼べ。」
「うーん。また今度で。」
わいわいと話していたが、リオとグレンが話に入ってこないことに気づく。
「ありゃぁ、まだメンタルがやられてんな。
焦り、か?あとは、不安?
……おいフィーネ。マジで今のあの二人に喧嘩ふっかけんの?」
小声でそう聞くゼロに、少し躊躇ったが頷いた。
食事をあらかた終え、アリスが人数分の紅茶を入れてくれた。
「うん。美味しい。流石はアリスだ。
──さて。まずは、ゼフィロス。
色々と説明してくれ。
長くなってもかまわん。」
ゼロは、私の頭からテープルの上にピョンと降りて座り、尻尾をふりふりさせながら話し始めた。
リリスの事、ゼロ本人のこと、そして契約のこと。
予め、ゼロにはリリスと会った事やそこで言われた事などは伏せておくように頼んでいた。
「魔族……。やはりそうか。
初代聖女つまり王家の祖先が魔族だったことは知っていた。王太子になる際に聞かされていたからな。
自分が魔族の子孫だと。」
「そう、なんですの?」
アリスも知らなかったのか、驚いた顔で殿下を見た。
「あぁ、口外は出来なかったからな。
正直悩んだ時期もあったが、私にはアリスがいた。
皆も。だから私が何者でも大丈夫だと思ったのだ。」
ふ、と笑いながらアリスの頭を撫でた後、みんなを見回しそう言った。
「それでいうと、結局ここにいるメンバーはフィーネ以外、全員魔族の血が入ってることになるな。」
グレンが顎に手を当て記憶を辿りながら言った。
「前に言っていた、……ヴァルプルギスとレヴィアタン、かい?」
ゼロは尻尾をぴょんぴょんさせながら、答える。
「あぁ。よく覚えてんな。
それは家名な。
リリスと共に人間界に来た魔族は俺が知っている限り3人。ティナ、ネロ、グリムだ。
グレンはティナの、リオはネロの血を濃く受け継いでる。所謂先祖返りだ。」
「先祖返り……だから他の人よりも魔力量が多いんですのね。」
「そうだな。アリスとラウールはグリムの子孫に間違いねぇけど先祖返りというほどじゃねぇ。
アリスの血の方が濃いのは直系と傍系との違いか。その辺りを話し始めると終わらなくなっちまうからな。また今度だな。」
リオが心なしか不安げに、一つ疑問を投げかけた。
「魔界にいるゼフィロス以外の魔族は、全員敵ですか?」
「いや。魔族はそもそも温厚なやつが多い。
長寿だからな。
ほら、長い間生きてると丸くなるだろ。
血気盛んなやつは若い奴のごく一部さ。
そいつらは権力を持っちゃいないから本来なら人間界への侵攻なんてある筈がなかった。」
殿下が眉根を寄せ聞く。
「じゃぁ、なぜだ?」
「今代の魔王が、そうしたいからだよ。
アイツは人間を恨んでるからな。
幸いなのは追従する魔族は少ない事だな。
まぁ、一人でも魔族が攻撃してきたら、この国は終わるがな。
今のお前達じゃ相手にもならねぇ。」
重苦しい雰囲気が辺りを漂う。
特にグレンとリオは、焦っているような、苦しそうな顔をしていた。
ゼロはそんな重い雰囲気を気にせずそのまま話を続けた。
「目下の懸念はあの女と魔石だな。
今は聖女の結界で魔族がそう簡単には入ってくることは出来ねぇ筈。
だがおそらくあの女は魔族だ。
どうやって、いつ入り込んだかは分からねぇがな。」
グレンも不安そうに眉根を寄せて、目の前のカップに触れながら言った。
「あの魔石を持った魔族……。一体何をするつもりなのかな。」
「……さあな。まぁ、ろくなことしねぇのは確かだろうさ。
──とりあえず俺からは以上だな。」
ゼロ側と殿下側との情報交換回です。
あと、お兄様と呼べって殿下に言わせてみたかった回です笑
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