50 魔物との戦い1
大聖堂の扉を抜けたところで小さくパリンという音と共に、
「ガァァァァァ!!」
という雄叫びのような声が聞こえた。
「来るぞ!急げ!」
先頭のリオに続き、私達も走る。
背後から、何かが爆発したような音と共にまた雄叫びが聞こえた。
「アイツ、魔力を使わずに扉を壁ごと壊しやがった。腕力あんのな。あれが腕かは知らねぇけど。」
後ろの様子を窺いながら、私の後ろで最後尾を走っていたゼロが報告してきた。
「お前は!軽口を言ってる場合か!」
殿下に怒られるが、ゼロはハハハと笑い流している。
「いや、ほら場を和ませようと──って、来たぞ! まずいな。思ったよりも早い! 急げ!」
話し終えるより早く空気が鋭く張り詰め、ゼロは叫んだ。
前を走る4人が大礼拝堂の扉を開け、中に入る。
私達も後に続こうとした瞬間、
ドンッ!
という音と共に背後の気配が急激に近づいた。
「チッ!」
舌打ちと共にキン──と清涼な音が聞こえた。
ゼロが結界を展開したのだと感じた。
「フィーネ!アリス!早く奥まで走れ!
これもそんなにもたねぇ!」
私達は息を切らして奥まで走り、壁に手をつき息を整えた。
振り返ると入り口に張られた結界にヒビが入っていた。
元大神官だった魔物が、8つの肢体で結界を叩き壊そうとしているのが見える。
ゼロがこちらに歩いてきた。
「よく走り切ったな。
ま、最後はちょっと危なかったが。
お陰で魔力を使いきっちまった。
フィーネ。ちょっと手、出せ。」
私が言われるままに手を差し出すと、ゼロはその手を取り口につけた。
「「は!?」」
「「おい。」」
「きゃぁっ!」
みんなの驚く声(アリスだけは何か違う気がする)が聞こえる。
仕方ないとはいえ、大勢に見られてることに羞恥心を覚えた。
(うぅ……私は充電器、私は充電器)
「こんな時になにをやってるんだお前達は。」
殿下に呆れた様子で聞かれ、ゼロの代わりに私が答える。
「魔力を補充してるんですよ。ゼロは自分で魔力を作れないから。」
そう言うと、手を口から離したゼロが説明しつつ、二人に発破をかける。
「そ。まぁ口つけなくても出来るんだけどな。
この方が効率よく吸収出来んだよ。
──さて、ボケっとすんなよ、グレン。リオ。
お前らが攻撃の要だぞ。」
「言われなくても分かっています。」
「だね。いい加減、子供みたいな扱いをするのやめてもらってもいいかな?」
「ま、子供みたいなもんだからなぁ。」
クックッと笑いながら言うゼロに、睨む二人。
緊張感があまりない人達に呆れていると、ビシッと結界の割れる音が断続的に聞こえだした。
「来るか。皆準備をしろ。」
ラウール様が皆に声をかける。
「みんな、無茶しないでね。」
私は心配になりみんなに声をかけた。
すると、ゼロが私を横目で見ながらニヤッと笑った。
「ははっ。
それ、俺が言った台詞だなぁ?フィーネ。
だが、こうなんだろ?
今無茶しなくていつするんだ、ってな?」
「うっ。……ゼロのいじわる。」
パリン──!
結界が破られ、魔物が真っ直ぐ私に飛びかかってきた。
グレンの拘束魔術ですぐさま拘束し地に伏せさせた後、立て続けに殿下が剣に水の魔力を纏わさせ斬り伏せ、ゼロもそれに合わせて氷を矢のように降らせている。
グレンは拘束している鎖の先端の刃を使い攻撃していた。
「相変わらずグレンも殿下も凄いですわね。」
「だな。このメンバーで討伐は久方ぶりか。」
「昔はよく皆で結界の外に出て魔獣の討伐に行きましたねぇ。コレより大分弱い奴ばかりでしたが。」
「アリス達は攻撃しないの?」
「私達はあの人達が疲れてからの交代要員ですわ。昔から長丁場になりそうな時はいつもこうでしたの。」
「一度、皆で一斉に攻撃を仕掛けて、ギリギリだったことがあってな。
グレンは魔力を使い果たしてしまうわ、リオも影にも戻れなくなるわで、守護結界外の森を歩いて帰ったことがあったんだ。
それ以来この形に落ち着いた。」
ラウール様が遠くを見ながら、苦笑した。
「それに、フィーネ様を守らなくてはいけませんから。」
リオが発したその言葉に、守られるだけの存在だと言われたようで、ズキっと胸が痛むのと同時に、チリっと怒りが湧き、眉根を寄せた。
「デリカシーのない男は嫌われますわよ、リオ。
それにフィーネはチャージャーですもの。居なくてはいけない存在なのですわ。」
「ちゃーじゃー、ですか?」
リオとラウール様の頭に疑問符が浮いているのが見えた。
アリスは説明する気がないのか、無視を決め込んでいる。
「お前らなぁ。緊張感持てよ。ほら、交代だ。
あまり近づき過ぎるなよ。
アイツ、動けないのが分かったのか、火魔法使って攻撃し始めてやがる。」
ゼロが戻ってきて、現状を報告した。
「魔法、ですの?」
「お前らが使うのが魔術だろ?俺らみたいなのや、魔獣の攻撃を魔法っつーんだよ。ま、この件が終わったら説明してやるから。ほら、行け。」
「ええ。では、フィーネ行ってきますわ。」
「うん。気をつけて。」
アリスとラウール様、リオが攻撃に向かうのと交代して殿下が戻ってきた。
殿下は息を切らして座り込み息を整えると、私の魔力を吸っているゼロに聞いた。
「あれは、攻撃が効いてるのか……?」
「おそらくな。傷の再生が最初より遅くなってる。
ただ……この調子だとこっちが先にバテそうだな。」
「ゼロは、魔力を吸収できるんだろう?アレの魔力を吸えばいいんじゃないのか?」
「あ──無理無理。
アイツの魔石の魔力、色んな不純物が混ざってんだよ。
あんなのを吸収したらぶっ倒れちまう。」
「ねぇ、ゼロ。私と──」
私がゼロに契約の件を話そうとしたが、何を言おうとしたのか分かっていたのか、途中でバッサリ切られてしまう。
「ダメだ。」
ゼロは私が想像していたよりも険しい顔をしていた。
「言ったろ?どんな影響が出るかわかんねぇって。
とりあえずアイツがまだ大人しいうちに削れるだけ削って──っ!フィーネ!」
ゼロが私の手を引っぱり、抱えて飛び退いた瞬間、先ほどまでいた場所が腕で押し潰されていた。
戦いは続きます。
頑張りますー!
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作者大歓喜します!
頑張れます!




