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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第一部 神殿編

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49 乙女ゲーでの戦闘

グレンが魔術を発動した。


「フィー!殿下!アリスの所まで走って!」


「え!?」


グレンからいきなり指示され戸惑うが、隣の殿下が走り出した為、つられて走る。

ソレの横を通り抜ける際、思わずその全貌を目にしてしまった。


大きさは4メートルほどか。

人の原型を留めていない巨体は、蜘蛛のようだった。

8本ある太い肢体が、拘束を振り解こうと蠢いている。

顔にある6つの目の全てが私を見ており、口と思しき穴がニヤリと笑っている気がする。

そして頭部の魔石が禍々しく光を放っていた。


私は思わず立ち止まる。


(狙いは、私?)


「フィーネ、止まるな!早く行け!」


ゼロの言葉に、再び走りながら頭を働かせる。


(……そうか、元は大神官だもの。

『聖女』への執着が残ってるのかも。

だとしたら餌をチラつかせればアイツは絶対食いついてくる。

こんなだだっ広い、目立つ場所で戦闘なんてしたら、王都の人の目につく。場所を変えなくちゃ。

けどまずはアリス達とこの場にいる人々を避難させるのが先だ。)


チラッと後ろを振り向くと、グレンは大神官だった魔物を拘束魔術で縛り、地面に押さえつけている。

ゼロが額の魔石を割ろうとしているようだったが、手こずっていた。


息を切らして、アリスとラウール様の所へ辿り着いた。

毎朝のランニングの成果が出ていて、すぐに息は整った。


「殿下、皆をこの神殿の敷地外に出してください。

そして、神殿内にまだいる影に退避の指示を。」


「わかった。」


「聞いたな。影達は全員退避しろ。

リオはこちらに来い。

騎士団は神官と共に敷地の外へ出ろ!急げ!」


殿下は影と騎士達へ命じると、リオが殿下の隣に現れた。


「殿下達も外に。」


「お前はどうする。」


「アレの狙いは私です。

私が皆と共に外に出たら巻き込んでします。

だから私はここにいないと。

いざとなったら奥の手を使うので、大丈夫です。」


「フィーネ!」


眉根を寄せ殿下が私を嗜めるが、聞くつもりなど毛頭なかった。

リオが、厳しい顔で私を見ているのを目の端で捉えた。


「今はそれが最適解です!

急いでください。

グレンとゼロが手こずってるって事は、かなり状況が良くないって分かるでしょう!?」


「フィーネ。それではだめですわ。

皆で戦わなくてはいけませんの。」


「っ!アリス?」


私がそう言うと、アリスが一歩前に出て私をふわっと抱きしめた。アリスは小声で私に囁いた。


「フィーネ、ここのベースは『戦闘あり』の乙女ゲーですわ。

ということは、攻略対象の頭数を増やした分だけ手札が増え、勝率は上がるはずですの。

ゲーマーな妹が言っていましたわ。」


アリスは私を離すと、私の顎を人差し指でくいっと持ち上げ、と勝気な笑みを浮かべた。

私は目を見開き、アリスを見る。


「大親友の私の事、信じてくださいますでしょ?」


「信じる!信じます!

うぅ、私のアリスがかっこいい。」


「という事で、皆でアレを倒しますわよ。」


それまで黙って話を聞いていたラウール様は、良いことを知ったと言わんばかりにニヤリと笑いながら、ボソリと呟いた。


「なるほど。頑固なフィーネにはアリスが効果的か。」


殿下は顎を手に乗せ目をつぶると、


「アレをここから移動させるべきだな。

ここだと人の目が多い。

王都民に余計な不安を抱かせるべきではないし、目撃者が多くなると、後々情報統制がしにくくなる。」


「場所はどうする。」


ラウール様がそう言うと、先程神殿内を捜索していたリオが案を出した。


「……大聖堂の奥にある、大礼拝堂がいいと思います。

あそこは広いし高さもありますから。」


「決まりだな。」


皆で顔を見合わせて頷いた。


その時。


「お前ら!悠長に何やってんだよ!」


いつまで経っても逃げない私たちに痺れを切らしたゼロとグレンがこちらに走ってきた。


二人に計画を話した後、私は二人に魔物の情報を聞いた。


「グレン、ゼロ、あの魔物、倒せそう?」


「魔石の中の聖女の力だろうな。何度魔石にヒビを入れてもすぐ戻っちまうんだよ。体にダメージを与えても、治っちまう。」


「特級魔術を打ち込めば、倒せるかもしれないけどね。

もし無理だった場合、魔力が尽きてしまった僕は戦力外になってしまうから、そんなリスクは負えないし……。」


「やっぱり、地道にHPを削っていくしかないのですわ。」


「「「「「えいちぴー?」」」」」


「なるほど。そこもテンプレだね。だから頭数。」


「ええ。でしたら、やはり、アレと一緒に大礼拝堂へ……。」


そう二人で話していると、置いてきぼりにしてしまっていた男性陣から疑問符がとんでいる。

代表してラウール様が私達を止める。


「まてまて、アリス、フィーネ。二人で話を進めるな。」


私が前世の言葉を使わないように説明した。


「とりあえず、攻撃して魔石の力を削っていく、みたいな。

あれ、永遠と魔力を供給するものじゃないですよね?

いつかは底がつきます。」


その説明に、ラウール様がなるほど、と頷く。


「力技ということか。まぁ、現状の案はそれしかないな。」


「それならフィーネ様は神殿の外で避難する方がいいですね。」


「そうだね。フィー。ここからは僕たちだけで……」


グレンとリオが私を実質の戦力外だと言った。

私は、ムッとして言い返そうとするが、その前にゼロが口を出す。


「いや、フィーネは必要だ。

とりあえず急ぐぞ。

こうやってアイツを拘束してても、グレンの魔力が消費されるだけだろ。」


「とりあえず大礼拝堂まで走るぞ。

転移せずに少しでも魔力を節約する。

拘束魔術の有効範囲は?」


殿下がグレンに聞いた。


「ここからあと20メートルといったところかな。

その範囲を過ぎると拘束が解けてしまう。」


「大礼拝堂までは70メートルほどです。

アリス、……フィーネ様。走れそうですか?」


「早朝ランニングの成果を見せる時ですわ!フィーネ!」


「うん!」


私たちは一斉に大礼拝堂へ走り出した。



さぁ、戦いが始まります!

これから一気に第一部クライマックスまでもっていきます。

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