46 聖女研究
机の上の一冊の本とその横にあった赤黒い魔石が4つ入った箱に目がいった。
本の中を開くと、あり得ないことが書いてあり、目を見開く。
「うそ、でしょ?──ゼロ!これ見て!
って、どうしたの?」
本を持って反対側の檻をまじまじと見ているゼロに駆け寄った。
「この中、変な気配がすんだよなぁ。」
そう言うと、檻に手を触れるが、バチッといって弾かれてしまった。
「ダメだな。俺は魔道具関係はどう魔力を吸収していいか、よくわかんねぇんだよ。
グレンがいりゃ簡単に解除出来たんだろうが。」
「ゼロも魔術、使ってたでしょ?
グレン達と戦ってる時とか。」
「あー、あれは『魔術』じゃなくて『魔法』だ。
まぁその辺はまた落ち着いてから教えてやるとして。
──大神官が建物に入ってきたぞ。」
はっと入り口を見た。
頭を回転させ、最適解を出す。
「ゼロ、今何時かな?」
「6時すぎたくらいか?」
(ギリギリかな)
「ゼロ、この本を殿下に渡してきて。
あと伝言をお願い。」
「あのなぁ!言った側からコレかよ!」
「お願い。
そんなに時間、かからないでしょ?
それくらいの時間は稼げるから!」
「はぁ。お前、ほんっと、後でお仕置きだかんな。
んで、伝言は?」
私は、本をゼロに手渡すと殿下に伝えるべき言葉をゼロに託す。
「了解。すぐ戻る。
いいか!絶対無茶すんなよ!?」
そう言うと、ゼロはその場から消えた。
「ははっ。今無茶しないでいつすんの。」
私は急いで檻の中に戻ると、着ている服を乱れさせ、ベッドに座った。
目をつぶって、さっきの恐怖を思い出す。
ガチャ。
しばらくすると、入り口から誰かが入ってきた。
目を開け、ぼやけた視界で大神官一人なのを確認すると、ベッドから立ち上がりフラフラと大神官の元に歩き始める。
「大神官様……神官達がっ!
こんな、酷いです……」
はらはらと泣きながら大神官に縋り付く。
しかし彼は無表情で私を見ながら言った。
「あいつらまたやったのか。
まったく。これで聖女の有用性は損なわれんとはいえ、風紀を乱すようなことをしおって。
後で説教だな。」
「また……ってなんで……前の聖女様は!
この部屋は何なんですか!貴方達は一体何を!」
「いいだろう。最後に教えよう。
何も知らずに死ぬのは虚しかろう。
──『聖女』を『造る』のだよ。
どうやって聖女が生まれるか、お前は知っておるか?」
「前の聖女が死ねば自動的に国民の中から選ばれた聖女が……」
大神官は鼻で笑うと、馬鹿にしたような表情を浮かべた。
「はっ。そうじゃない。
聖女の体の仕組みだよ。
前日まで普通の平民だった人間が、いきなり聖女になるなどおかしいと思わんかったか?
聖女の体には『魔石』が埋め込まれておるんだ。
その『魔石』に聖女の力が圧縮され入っており、死ねば『魔石』は適合する新たな体に転移する仕組みになっておる。
これが分かった時には、天にも昇る気持ちだったわ。
代々受け継がれておった『聖女研究』に終止符を打てたのだからな。」
そう興奮したように一気に話すと、机に向かって歩き出した。
「……どうやって、それを知ったんですか?」
嫌な予感がした。まさか……この人達は……。
「生きたまま中を見たに決まっておろう。
魔術で死なんようにしながら解剖したのだよ。
大量出血で死んだ後、確認した魔石は転移した。
そして次の聖女へ受け継がれておった。」
「何人、殺したんですか!!」
「そんなもの、もう覚えておらんわ。」
どうでもいいとばかりに吐き捨てる大神官に、頭がカッと熱くなるのが分かった。
深呼吸をする。
(取り乱すな。
まだ、全部聞いてないし、ゼロも戻ってない)
「その魔石を大量に作る事ができれば『聖女』も大量に造る事ができる。
これがその魔石だ。今までの『聖女』の力を封じ込めておる。分かるだろう?
この神々しい輝き。
これが歴史を変えるのだ。
」
そう言いながら見せてきたのは先程私が見た魔石だった。
一つを手に取り、私に見せてくる。
(どこが『神々しい』のよ。
『禍々しい』の間違いじゃない)
そして大神官は檻の方へ向かうと、手を翳した。
「既に人間に埋め込む実験も行っておる。
これが、今までの実験の成果だ。」
魔術が解除され、檻の中が見える。
そこには、ベッドに伏せる3人の人影が見えた。
私は近づき、中を覗き込んだ。
全員の胸に魔石が埋め込まれ、体の一部が魔獣のように変化している。
「ひっ!」
思わず声が漏れた。
「これらは、前の不出来な魔石を埋め込んだ失敗作だ。
改良したこの完璧な魔石を埋め込めば、次こそ成功する可能性もあるだろうて。
封じ込めた魔力が桁違いだからな。
それにあの方もついておる。」
「あの方……?」
「お前はもういらん。
魔力の放出が出来んやつが魔石は作れんからな。
血にも少ないが魔力が滲んでおるからな。
血を全て抜き取り魔石を作ることにしたのだ。
一つくらいは出来ようて。
さぁ、これで疑問はなくなったか。」
(血を取られるのはダメ!)
「い、嫌。
殺すなら一息に殺してください……。
どうせ私は無能です。
……公爵邸で魔力を測った時も何の魔力も持っていないって言われたんです!」
「ふむ。
最初の覚醒時になにか魔石に不具合があったか?
解剖してみるか。」
(ひぃ!生きたまま解剖コース!)
ジリジリと後ろに下がる。
ふと、檻の中の人と目が合った。
その目は仄暗く絶望に満ちていたが、ほんの少しの希望が垣間見えた気がした。──この目を、私はよく知っている。
「死にたい、のね?」
ぐっと胸が詰まる。
「何の為に、こんな酷いことをするの!?」
「全ては国のために決まっておろう。
『聖女』などという不確かなモノに支配されておるこの国を変えるのだ!」
腹立たしい。
頭に血が昇っているのを自覚したが、もう、感情を制御することはやめた。
「はっ。嘘ね。
国の為を思うなら、仮説の段階で王家と魔塔と協力したでしょう。
魔塔は以前から守護結界の研究も行なっていたことは貴方達は知っていたはず。
貴方達は神殿の権威の向上にしか頭にない。
この国を支配したいだけでしょう?
その為に、罪のない人を犠牲にしてる。
ただの屑だわ。」
「無能聖女が!
今までの我々の苦労も知らずして何を偉そうに!」
「偉そう、じゃなくて偉いのよ。
私は『聖女』なんだから。
本来ならお前が私に跪く立場なの。
さぁ、跪き私に首を垂れなさいよ。
大神官。」
「この私を愚弄するか!無能聖女め!
……いいだろう。
望み通り殺してやろう。
──焼き殺してやる。」
大神官が魔導陣を展開した。熱い炎の塊がこちらへ飛んでくる。
(──熱い!)
真っ赤な炎が私を飲み込もうとした。
フィーネちゃんは言うことをあまり聞かないので、一度お仕置きされた方がいいと思います。
そういう回書こうかな……笑
続きがよみたい!面白い!と思って頂けたら下の★で高評価、ブックマークよろしくお願いします!作者大歓喜します!




