44 神殿
※この回、少し刺激的なシーンを含みます。
王城からそう遠くない王都の中心部。
そこに神殿がある。
王城のスケールには及ばないものの、白い外壁の壮麗な建物はさながら第二の王城といった感じだ。
敷地内には、大聖堂と西側に古びた建物がある。
西側の建物は、昔、礼拝堂として使われていたものらしく、もしその旧礼拝堂を調べることができれば上々といったところか。
物語ではああいうところに秘密があるというのが鉄板なのだ。
神殿の大聖堂正面に転移した私たちは、ギョッとした周りの神官達を無視し、中へと入る。
ゼロはフードを深く被っており、いつもの軽口は封印していた。
私は不安げな表情を作る。
ゼロの少し後ろを歩く私は、不躾に私を見る神官達のことを懐かしく思った。
(そうだよね、それが私に対する正しい反応だった。
しばらく暖かい場所にいたせいか忘れてたな。
──私は無能聖女だった。)
「随分と──聖女サマに対する態度が不躾ですね。
これが神官の態度なのですか?」
ゼロが周りの神官を威圧しながらそう言うと、蜘蛛の子を散らしたように周りに誰も居なくなった。
「ちょっと、ゼロ!何もしちゃダメだってば。」
小声でそう言う私に、彼も小声ではいはい。と返事をする。
(本当に分かってんのかな?……でも、少し嬉しかったかも)
ふっと口角が上がってしまい、慌てて不安そうな表情に戻した。
暫く歩いていると、大神官が向かい側から歩いてきているのが見えた。
「貴様!なんて事をしてくれた!
何故アリステリア様を誘拐など!
お陰で神殿の立場がまた悪くなったではないか!」
「聖女サマを連れ戻す為に仕方なく。
方法の指定はなかったでしょう?
私に命じたのは『聖女を神殿に連れてくる事』でしたから。」
「くっ……!魔族め!」
「その魔族にいつの代も頼み事をしているのはどこの人間ですかね?
では契約は完了ということで。
報酬はもう頂いたので気にしなくて結構です。
では。」
そう言うと、ゼロはその場から消えた。
「まぁいい。
実験が上手くいけば神殿の価値は王家を凌ぐ程になる。
──さて、お帰りなさいませ、聖女様。
早速ですが、我々に協力してくれますな?
貴女は無能だが一応『聖女』。
この国の為に、全てを投げ打って尽くさなければならぬ立場なのですから。
──『西』の牢につないでおけ。」
大神官は側にいた三人の神官達にそう命じると、足早にこの場を去った。
大神官がいなくなると、一人の神官が私を蔑むような視線を向け、ついてこい、と吐き捨てるように言った。
逃げられない為だろう。
私の後ろから残りの二人がついてくる。
西の建物へ行けることになったのは渡りに船だ。
(けど、『牢』ねぇ?随分と物騒だなぁ)
建物の扉の前に着くと、後ろを歩いていた一人の神官が手を翳した。
ガチャンと鍵が開く音がする。
この中に入れるのは限られた人間のみということだろう。
建物の中は意外と綺麗だった。
ただ、人の気配がなく静まり返っている。
神官に先導され、私達はある部屋の中に入った。
書斎のようだ。
壁にある本棚に手を翳すと、本棚が動き地下への入り口が現れた。
(おお。テンプレ……。
けど、困ったな。
ここまで厳重だと思ってなかった。
逃げられるかな、私。)
背中を押され、階段を降りる瞬間、肩に何かの気配を感じた。
チラッと見ると、小さい黒い子猫が器用に肩に乗っていた。
子猫の赤いルビーのような瞳が私を見上げている。
他の人には見えていないようだ。
(ゼロだ)
そう確信した瞬間、ほっと息を吐いた。
暗い階段を下ると、開けた空間に出た。
部屋の中心に鳥籠のような悪趣味な牢がある。
中にはベッドが一つのみ。
そして、右側には檻が幾つも並べられていた。
魔道具を使っているのか、なぜかその中は見えないようになっている。
左側には大きな机があり、色々な魔道具や書籍など所狭しと並べられている。
そして、その中には注射器に似たものや、メスのような刃物もあった。
周りを見ていた私は神官に腕を引っ張られ、牢の中のベッドに押し倒された。
肩に乗っていたゼロは床に飛び降りる。
「きゃぁっ!」
魔術によって、両手首を頭の上で拘束され、身動きが取れなくなってしまう。
「な、何をするの!?」
「どうせ、あんたはもうすぐ死ぬんだ。
その前にその身体を好きに使わせてもらってもいいだろ?
むしろ、ありがたく思えよ。
無能で役に立たない聖女様がやっと役に立てるんだ。」
そう嘲笑しながら言った神官は私の上に覆い被さると、着ている服を魔術で真ん中から裂く。どこからかゴクリと音がした。
ドクドクと心臓の音がうるさいほど鳴る。
身体が無意識に震え、涙が滲んだ。
──こわい。
「や……いやぁっ!」
身を捩るが、どうする事もできなかった。
「お前が無能で良かったよ。
前の聖女は魔力で抵抗してきて押さえ込むのが大変だったんだ。
しかも年増だったしなぁ。
聖女様は見た目も身体も声もイイな。」
「おい、終わったら変われよ?
早くしねぇと大神官様が来ちまう。
おい、お前はドアの外で監視してろよ。
誰も入ってこれない様にしろ。
終わったら交代してやるからよ。」
「ちぇ。わかったよ。」
神官が私の胸と脚を触り、ニヤニヤしながら顔を胸元に近づけてきた。
ゾワっとして、気持ち悪くて、涙が溢れる。
「ひっ!──いや!やだぁっ!たすけて、ゼロぉ!」
「──言うのがおせぇよ。馬鹿。」
やっとこさ神殿へやってきました!
ここからまた、私の本当の頑張りどころがきます……!
続きがよみたい!面白い!と思って頂けたら高評価、ブックマークよろしくお願いします!
作者大歓喜します!




