39 敗北
Side:グレン
先程の土石の影から移動していたリオが男の背後をとり、闇魔術で無数の刃を生成し、男に放った。
リオ自身も体術で、男を攻撃し、拘束を試みる。
「へぇ。もう一人いたのか。
こっちは……戦い慣れてんな。
だが、格上と戦うのは初めてか?
お前自身も動いてるっつーのもあるだろうが、魔術の精度が雑だな。」
そう言い放つ間にも、襲い来る全ての刃をあざ笑うかのようにかわしながら、闇の魔力を吸収していく。
同時にリオからの攻撃をいなしていた。
(隙がない。
無理にこっちから攻撃するとリオに当たってしまう)
手が出せない事に歯噛みし、保護魔術をリオにかける。
男がふと立ち止まると、土の壁を作った。
迫り来る刃が壁に全て刺さる。
そしてその壁に手を当てると、闇の魔力が消えた。
(闇の魔力を吸収された。
他の物体を通してでも吸収出来るのか)
パラパラと土の壁が壊れた途端、男が消え、リオの背後に現れた。
「リオ!後ろだ!」
リオが振り向くが、対処できなかったのか、こちらに吹っ飛んでくる。慌てて魔力で勢いを殺しキャッチした。
「ガハッ……。す、みません。」
「闇の方はレヴィアタンの先祖返りか。
お前達、あいつらと違って仲良いんだな。
連携はバッチリだったぞ。
──まぁ、それでも俺には届かねぇが。」
男が足をダン!と踏み込むと、大小さまざまな石が空高く浮きあがった。そして片手に闇の魔力、もう片方に火の魔力を纏わせ、両手をパン!と合わせた。
空中の石すべてに赤黒い炎が宿り、爆発的な熱量を放ち始める。
あまりの禍々しさに、背筋に一筋の汗が伝う。
「さぁ、そろそろ終わりだ。
聖女サマを神殿に連れていかねぇと。
──爆ぜろ。『流星』」
男がスッと手を前へ出す。
空から弾丸のように、燃え盛る黒い炎を纏った石が風を切り裂き、射ち降ろされる。
自身とリオの周りと、殿下たちの周りに、何重にも結界をはるが、石が一つ当たるごとに一枚壊されていく。
「っ!!」
(一つ一つの石に付加されている魔力はそう大きくないのに、なぜこんなに重い!?)
「っ!グレン!」
リオが叫ぶ声が聞こえた途端、目の前に気配を感じた。
その瞬間、結界が消え、頭上から圧力がかかる。膝をつき、立ち上がることができない。
(重力操作か──!)
重力の魔導陣を発動し相殺させようとするが、なぜか魔導陣が発動しない。
「無駄だぜ。
さて、影に隠れられちゃ面倒だからな。
お前は沈んどけ。」
闇の魔力を手に纏わせるとリオの頭を片手で掴んだ。
リオの四肢から力が抜け、手を離すとリオは崩れ落ちてしまった。
「四つ目──最後だ。
どんな状況にあろうとも敵から意識を逸らすな。
こうやって懐に入り込まれたら、詰みだ。
お前ら、俺じゃなけりゃ何度死んだよ?」
パチンと指を鳴らすと空からはもう何も降っておらず、嫌味なほどに美しい紺碧と朱色のグラデーションが空に広がっていた。
ズンと指一本動かせないほどの力がさらに体にのしかかり、倒れ込む。
「なかなか楽しめたぜ?
次会う時があればもうちっと強くなっとけよ?
──さて、聖女サマ。
時間だ。行くぜ。」
ザッと土を踏み締める音が背後から大きくなって聞こえてくる。
「──っ!フィー!」
名前を呼ぶ。
行かせたくない。
あれだけ、フィーの前では聞き分けのいい事を言っておきながら、直前になって裏で殿下を説得したのは僕とリオだ。
なのに。
無様に負けて、フィーが行ってしまう。
なんとか魔術を発動させようとするが、魔力さえも押さえつけられているような感覚がし、魔導陣すら出せない。
彼女は僕達の横を、無言で通り男の隣に立った。
(くそっ!)
バチッ!バチッ!
魔力が感情につられ制御が難しくなっているのを自覚する。
魔力が暴走しかけているのを感じた。
銀の魔力が渦を巻く。
それを見た男は、大きな溜息をつきながら僕の前でしゃがみ込んだ。
「まるでお気に入りのおもちゃを取られて泣き叫ぶ赤ん坊だな。
大切なモノを守りてぇなら、まずは自分達の未熟さを自覚しろ。
そんで、地道に経験を積むしかねぇ。
とりあえず、今回お前らは負けた。
聖女サマは貰ってく。
……まぁ。あいつらの顔に免じて、悪いようにはしねぇよ。
じゃぁな。楽しかったぜ?」
その言葉を最後に、意識を刈り取られる。
目を閉じる寸前、フィーの顔が見えた。
──怒りと悲しみの入り混じった、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
戦闘終わりです!
私の戦いも終わりました……。
甘いお話が書きたい。反動で甘々にならない様に気をつけます。
次回はフィーネちゃんの秘密と男とのお話です。
続きがよみたい!面白い!と思って頂けたら高評価、ブックマークよろしくお願いします!作者大歓喜します!




