↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第一部 神殿編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/73

33 おそろい

聖女の正装を纏ったのはいつぶりか。

私は、細かい刺繍のしてあるレースのベールを頭から被り、白のシンプルなドレスを身に纏っていた。

髪にはアリスから貰った髪留めをつけている。


(行こう)


一つ息を吐き、扉を開けると、目の前にグレンがいた。


「おっと。間に合ってよかった。

フィー、一旦部屋に戻ってくれるかい?

渡したいものがあるんだ。」


そう言いながら私の肩を持ちクルッと方向転換させると、グイグイと背を押して部屋の中に戻した。


「ちょっと!グレン!時間が……。」


「大丈夫。5分くらいで終わるから。」


そう言うや否や、私のベールを外し、髪留めを取った。


「あ!これは付けていくの!外しちゃダメ!」


私は抗議の声を上げるが、グレンはその髪留めを自らのポケットに入れた。


「フィー、あっちには僕と同等の魔術師がいるかもしれないだろう?

そこにこの稚拙な守護魔法の付与されたモノを持って行っても、役に立たない可能性があるんだ。

だから、こっちを付けて行ってくれる?」


そう言いながら小さな箱を取り出し、蓋を開けて中身を見せてくれた。


「……ピアス?」


そこには、銀色の宝石が一つあしらわれたピアスが二つ置かれてあった。

だが、その宝石をよく見るとさながらオパールのように、光の加減で淡く虹色に色づいているのが分かった。


「これ、普通の宝石じゃない?」


「ご明察。これはね、魔石だよ。」


「魔石!?そんな高価なもの、貰えないよ!」


魔石は結界の外でしか採れない為、とても貴重で高価な石だ。


「フィーの安全の為ならこれくらい安いものさ。

というか、忘れているかもしれないけど、そもそも僕は公爵家の人間だからね?

公爵家にはもっと大きな魔石が沢山あるんだよ?」


「因みにこれは、魔塔にあったものを使って加工したんだ。

付与したのは前回と一緒の保護魔法。

ただし、それが付与されてると分からないように隠匿魔術をかけて、その上から『おまじない』をダミーとして付与してある。

三つを重ねて付与するには魔石じゃないと割れてしまうからね。」


「すごい。三つの付与……。」


(普通の付与でさえ時間がかかるのに、三つの重ねがけをこの短時間でやってのけるなんて……)



「これ、つけてもいいかい?

取れたりしないようにピアスが良いかなって思ったんだ。

ただ、フィーが耳に穴を開けるのに拒否感があるなら、イヤリングに加工し直すよ。」


不安そうに私を見つめるグレンに、くすっと笑って、大丈夫。と答える。


「良かった。じゃぁここに座って。

痛覚を麻痺させる為に、ちょっと耳を冷やすね?

その後、ピアスの先から魔力を細く針みたいに伸ばして穴を開けるよ。」


そう言うや否や、グレンは冷却魔術で、私の右耳を冷やし始めた。


「あのね、グレン。1、2、3で開けて?ちょっと心の準備がいるから。ね?」


ちらっとグレンを見ると、冷却魔術をかけながらクスクスと笑っていた。


「笑わないでよ……。」


私はジト目で口を尖らせた。


「ごめんごめん。

普段は逞しいのに、こういうのはダメなんだと思ってね。

さぁ、終わった。」


そう言って、ピアスを取り出し、耳に当てる。


「準備はいいかい?

あぁ、ピアスを刺したら治癒魔術を少しだけかけて。

止血だけだから、ほんの少しね?

出来るかい?」


「わ、分かった!」


いきなりの無茶振りだ。


「じゃぁいくよ〜。いち、に。」


チクッとした感覚のあと、カチッとグレンがピアスのキャッチを止めた。


「はい、終わりだよ。治癒魔術をかけて。」


手を耳に当て、穴が塞がらない程度に治癒魔術をかける。


「うん。上手上手。

やっぱり、魔術の扱いが上手になってる。

少しだけだけど訓練した甲斐があったね。」


「あ、ありがとう。

──じゃなくて!私『3』で開けてって言ったのに、『2』で開けたよね!?」


そう抗議の声を上げる私に、にこにこと笑いながら、


「3だと、身構えて緊張しちゃうでしょ?」


とサラッと流すグレンに、がっくり肩を落とした。


「さて、と。」


グレンはもう一つのピアスを取り出すと、自分の左耳に当てて突き刺した。

私はギョッとして、慌てて立ち上がり治癒魔法をかける。


「ちょっと!開けるなら言って!冷やしてもないし痛いでしょ!?」


「あはは。もう時間もないしね。──ありがとう。」


そういうと、グレンは私のピアスが付いた方の耳に優しく触れ、もう片方の手で自分の左耳のピアスを見せた。


「ほら、お揃いだよ。

──ねぇ、フィー。

僕はね、本当は、行かせたくないんだ。

今も不安と心配で押し潰されそうだ。

でも、僕が行かないでって言っても君は行くんだろう?」


少しかすれた声で、苦しそうにそう言うグレンに、きゅっと心が萎んだ感じがした。


「ごめんなさい……。」


「分かってる。これは僕の我儘だからね。

君を籠の鳥にはできないことなんて分かってるんだ。

──だから、せめてこれを渡そうと思った。

ずっと側にいるって言ったからね。

僕の魔力が、君を守る。

だから、必ずここに戻っておいで。

帰ったら悔しい気持ちも、泣き言もいっぱい聞いてあげるから。」


この人はなぜ、私の気持ちが分かってしまうんだろうか。

なぜ、私が欲しい言葉をかけてくれるんだろうか。

泣きたい気持ちをぐっとこらえ、グレンの目を真っ直ぐ見る。


「ありがとう、グレン。

ちゃんと戻るから待ってて。」


「うん。」


グレンが優しく私の頭をふわりと撫でて言った。


「さぁ、行こうか。」


扉を出て馬車へ向かう。

殿下も、王国騎士団も共に教会へ向かう。

神殿にアリスが攫われるという異常事態。

王家として動き、あちらへの圧をかける算段だ。


「あれ?そういえば、『おまじない』って何?」


グレンは、横を歩いてある私を見ると、口元に人差し指を当てて言った。


「んー。ナイショ。」


フッと笑い、首を傾けると、グレンの左耳のピアスが髪の隙間から覗く。

なんだか、恥ずかしくなり目を背けた。


「な、ないしょかぁ……。」


そう言ってベールを被り直し、息を一つ吐く。

私は自らの気持ちを切り替え、引き締めるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。