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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第一部 神殿編

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31 守るということ

Side:クリス

フィーネが出て行った後、ラウールはグレンに疑問を投げかけた。


「随分と静かだったな?グレン。

もっと反対するのかと思ったが。」


「ん?あぁ。フィーは存外頑固だからね。

周りがいくら止めようと聞きやしないさ。

そもそも、彼女を納得させるだけの材料もないのに説得なんて無理だ。

だから好きなようにやらせるしかない。

その代わり、こちらで最大限のフォローをするよ。」


「ほぅ。随分と寛大……」


私が感心しながら言った台詞の途中でグレンはボソリと呟いた。


「本当は、縛りつけてでも行かせたくないけどね?」


「本音はそれか。

だが、そうはしないんだな。」


「それをしたら、フィーに嫌われてしまうだろう?

僕はあの子を甘やかしたいんだよ。

ドロドロに、溶けるほどに。

やりたいと思うことはやらせてあげたい。

勿論、フィーが傷つかないように、僕の目と手の届く範囲でね。」


あまりの重さに、私とラウールはドン引きだ。


「……お前、それは、ちょっと。」


「なんだい、殿下もアリスにはそうじゃないのかい?」


にべもなく言うグレンに反論する。


「いや、そこまでじゃないと……思いたいが。」


「だが、今回は目も手も届く範囲にはいられないだろう?」


ラウールがそう聞く。


「確かに。

今回フィーネが単身で赴くのは『神殿』だ。

我々『王家』の手が届かない、実質的な『治外法権』の領域だからな。」


「うん。そうなんだよね……。

ほんと、神殿アレは忌々しいね。

でも、僕が側にいなくても守れるように対策は練るさ。

僕は天才だからね。

さて、僕もフィーの支度が終わるまでに準備をしてくるよ。」


そう言うと、ひらひらと手を振りながら転移魔術でグレンは姿を消した。


「一度ブレーキが外れると、とことん重たくなる奴だな」


ラウールが呆れながらそう言った。


「あぁ。だからこそ心配だ。

もし、フィーネに何かあれば、グレンはどうなるか……。」


眉根を寄せながら想像してみるが、安易に最悪の事態が予想できて頭が痛くなる。


「せめてフィーネが大人しく守られているタイプならよかったんだが。

まぁ、アリスもそうだが。

ウチのお姫様達はお転婆で困るな。」


未だ囚われている最愛のアリスが、おそらく大人しく待ってはいない事が想像でき、溜息が出た。


アリスには守りの魔道具をいくつか身に付けさせている。

それは幸いにも外されておらず、発動した形跡もない。

つまり、彼女の身にはまだ何も起きていないということだ。


だが、アリスが犯人を刺激しないとも限らない。

むしろそうなる可能性が高いのだ。

自分達があちらに着くのが早いか、犯人の堪忍袋の尾がきれるのが早いか。


前者であってくれと祈りながら、自らのやるべき事を成そうと動き始めた。




♢♢♢♢♢♢♢



Side:アリス

古びた神殿の中、アリスは両腕を魔力で縛られながらも毅然と犯人を睨みつけていた。


「私が誰なのか分かっていての所業ですの?」


王城から侯爵家へ向かう途中、襲撃を受けた。

犯人は黒いフードを深く被ったこの男一人。

一瞬で自分以外の護衛を地に伏せさせたと同時に私を魔力で縛って抱え、古びた神殿へ転移した。


──何も出来なかった。

火の魔術を使う間もない一瞬の出来事。

私が攫われるのは過去にも経験があった。

これでも公爵令嬢だ。

政敵など掃いて捨てるほどいるし、恨みを買うこともある。

だが今までは自らの力で脱出することの方が多かった。

こんな、一方的に攫われるのは初めてだ。

しかも──。


「フィーネを、どうするつもりですの?」


この男は言ったのだ。


『これを聖女様に渡してくれ。必ずな。

じゃないとこの女がどうなるか、分からないぞ?』


「あの子に何かしたら、許しませんわ!」


怒りのあまり、パチパチと周りの空気が炎で爆ぜる音がする。


「はぁ……。めんどくせぇ。

キャンキャン喚くなよ。

つーか火事になるだろ。」


講壇に足を組んで腰掛けている男はそう言うと、パチンと指を鳴らし、私の周辺に雨を降らせた。

火の魔力が水の魔力に押し負ける。


「あなた、何者ですの……。

こんな、グレンにしか出来ないような事を……。」


(今、魔導陣を発動していなかった……?

あり得ませんわ。

魔術には魔導陣が必須ですもの。)


そういえばこの男は転移魔術も使っていた。

あれはこの国でグレンにしか使えないはずだった。


「グレン?

──あぁ、聖女にくっついてるあの魔術師か。

あいつ、人間にしてはめっぽう強いよな。

まぁ、俺には勝てねぇだろうが。

なんせ経験が違う。

こんなヌルい世界の中じゃ、あれが限界だろうな。」


この男は、なんて言った?


「人間にしては……?」


この世界の元になっているゲーム。タイトルは忘れてしまったが、あれは『聖女・フィーネ」が、攻略対象と共に国を救う話だった。

方々に出てくる魔獣を倒してレベルアップしていく。

だが、それだけだっただろうか?何か、あったような……。


「なぁ。お前聖女と仲がいいのか?聖女はどんな人間だ?」


新キャラ登場です!

これからの展開をお楽しみに!


続きがよみたい!面白い!と思って頂けたら高評価、ブックマークよろしくお願いします!作者大歓喜します!

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