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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第一部 神殿編

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25 お願い

グレンは空になったカップを置くと、眉根を寄せながらしぶしぶと言った風に話し始めた。


「魔力の制御の時間短縮は不可能だ。

だから逆に放出する魔力を制御するのはあえて後回しにすると言う手もある。」


「どういうこと?」


首を傾げる私に、目を瞑り眉間に手を当てながら言った。


「本当は、僕はフィーの安全を第一に考えたいから凄く凄く嫌なんだけどね。

……蛇口を閉めて制御するんじゃなく、外へ溢れ出していく魔力の中からほんの少しだけをすくい取って、身体に溜める練習をするんだよ。

これなら蛇口は開いたままだから、魔力暴走する危険はない。ただね、フィー。」


そこまで言って、グレンは眉間に当てていた手を退けて、目を開けた。

深銀の瞳は、心配の色を濃く滲ませていた。


「フィー自身が『外に出ている魔力』を常に意識し続けなきゃいけない。

少しでも気を抜けば失敗する、精神的にもすごく負担がかかる方法なんだ。

……だから、本当はさせたくないんだよ。」


「心配してくれてありがとう、グレン。」


私はグレンのその瞳を真っ直ぐ見る。


「でも、早く光魔術が使えるようになるなら、その方法がいい。

……無理はしないって約束する。

だから、お願い。」


グレンは小さく溜息をつき、私の頬にそっと手を添えた。

そのまま親指が唇をなぞり、私はビクッと身体を強張らせた。

そんな私に彼はふっと困ったように笑いながら、


「フィーは、本当に困った聖女様だね。

この可愛い口で、『お願い』なんて言われたら、聞かないわけにはいかないじゃないか。」


グレンの深銀が熱を帯び、私の視線を逃さないように射貫く。

顔は真っ赤だろうし、恥ずかしくてたまらないのに……なぜだか目が離せない。


「あ、の、ぐれん……。」


「うん?」


「も、手、どけてっ。」


そう声を絞り出して言う私に、グレンはふわっと微笑んで素直に手を退けてくれた。

──けれどその直後、私の唇に這わせていた親指をゆっくりと自分の唇に押し付け、くすりと笑みを深くした。


それを見てしまった私は目を見開き、さらに顔を赤く染めた。


「な!な!な、なに、して!?」


あまりの衝撃に吃りながらも抗議の声を上げるが、グレンは楽しそうにクスクスと笑うばかりだ。


「っ──!ぐ、グレン!からかってるのね!?」


真っ赤になってグレンを睨みつける私に、膝に肘をついて頬杖をつくと明後日の方を見ながらぼそっと呟いた。


「本当にフィーは鈍いねぇ。

……どうしてくれようか。」


「ちょっと!グレン、何ていったの!?」


むぅと口を尖らせながら怒る私に、困ったように笑いながら、


「なんでもないよ。

ほら、怒ってないで魔力を掬い取る訓練を始めようか。

時間がないんだろう?」


と言った。なんだか、誤魔化されたようで納得がいかないけれど、時間がないのは事実なので誤魔化されてあげる事にする。


「はぁ。うん、お願いします。」



♢♢♢♢♢♢



それからどれくらい経ったのか、気がつくと外は夜の帳が下りる頃だった。


「ゔー、疲れたー!!」


そう言って背伸びをする。


「この短時間で随分と魔力の扱いが上手くなったね。一時的だけど魔力値が50にまで上がった。

これで初級の光魔術1回くらいは使えるね。」


よしよしと子供を褒めるみたいに頭を撫でるグレンに、


「グレンがあんなにスパルタだとは思わなかったよ。」


と遠い目をして言う私。


「ははっ。そうかい?

これでも優しく指導したつもりなんだけどな。

とりあえず、今日はもう帰ろうか。

続きはまた明日って事で。

明日はこの50に増やした魔力量を一日維持する訓練だよ。

頑張ろうね?」


「はーい。」


精神に負担がかかるというのはこういうことか。頭が痛く、身体がとにかく重い。

ふぅと、息を吐いた私をグレンが心配そうに覗き込んだ。


「フィー、これから王城に行く予定、キャンセルしたらどうだい?

屋敷へ戻って休んだ方がいい。」


そう。

これから王城で食事をした後、殿下との打ち合わせがある。

なにより。


「アリスが待ってるもの。

キャンセルなんかしない。

アリスに会いたい。

癒されたい。」


アリスに会ったら元気になる気がする。

なんたって久々に推しカプが揃ってるところを観れるのだ。


(テンション上がってきた)


私がうきうきし出したのが分かったのか、苦笑しながら


「無理はしないでね。」


と言うグレンに、私は思い出した髪留めの件を聞いた。


「あ!そういえば、朝つけてた髪留め、グレンが持ってるの?

あれ可愛くてお気に入りなの!

というか、この髪で王城ってあり?

もう少しどうにかした方がいいよね…。」


「あぁ。そっか、お気に入り、なんだね。

──リオから貰ったから?」


(なんでリオ?)


「違うよ?あれ、元々アリスのものでね、自分には甘すぎるからって貰ったの。

可愛いでしょ?」


ガタッ!


ソファーに座っていたはずのグレンが立ち上がり、隣の部屋に入っていく。

どうしたのかと首を傾げ、グレンを見送る。

ほんの数分で戻ってきたグレンの手にはあの髪飾りがあった。

しかも、中心の宝石部分にグレンの銀色の魔力が付与されている。


「魔力付与したの?」


「……どうせなら、と思って。

保護魔術をかけてある。

命の危険を察知したら発動するようになってるんだ。」


「!ありがとう!すごく嬉しい!」


思いもよらない形でどうしようかと思っていた件が解決して喜ぶ私に、グレンはなぜか複雑な顔をしていた。


「後ろ向いて。

……リオみたいにはできないけど、結んであげるよ。」


そう言われたので大人しくお願いすることにする。

リオとは違った辿々しい手つきで、髪を手櫛で整えてハーフアップにしてくれた。


「こんなのしかできないけど。」


申し訳なさそうに、そう言うグレンに振り向く。


「そんなことない!ありがとう!」


普段は自信に満ち溢れているグレンの、どこか自信なさげな姿を可愛いと思ってしまい、私はくすっと笑った。


「フィー?」


「行こっか!アリスが待ってるしね!」


私は笑ってしまったのを誤魔化すようにグレンを急かし、王城へ向かうのだった。


砂糖を吐いちゃうくらい甘いシーンをたくさんかきたいですが自制してます。フィーネちゃんが爆発しそうなので笑


続きがよみたい!面白い!と思って頂けたら高評価、ブックマークよろしくお願いします!作者大歓喜します!

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