24 心配性
「なるほど。これを使って、私の魔力の色を見るのね。」
「そう。……手を、繋ぐかい?」
私を見るグレンの顔に大きく『心配だ』と書いてあるようで、ふふっと笑いが溢れてしまう。
「フィー……」
グレンはジト目で見てくるが、私の笑いはまだ止まらない。
「ふふっ、ごめんね。グレンって意外と心配性なんだね。」
と返すと、彼は何かを思いついたようにニヤッと悪い笑みを浮かべ魔力を動かした。
すると、ソファーに座っていた私の身体がふわっと浮いてグレンの膝の上に降り、そのまま逃げられないように腰とお腹に腕を回され固定されてしまった。
彼の纏うムスクの香りが強くなる。
あまりの近さに心臓が早鐘を打ち、頭の中はパニックだ。
「っちょっと!!降ろしてっ!」
そう抗議して身をよじるが、ぎゅっとされて抜け出せない。
「嫌だよ。だって僕、心配性だからねぇ。
ほら、こうやってくっついていた方が安心するだろう?」
そんな声が、クスクスと笑う声と共に耳元で聞こえてきた。
私の肩口には、グレンの顎がちょこんと乗せられている。
「ねぇ、フィー。始めないのかい?
ほら、魔力測定器、届くだろう?」
グレンが喋るたびに耳元に熱い息がかかりくすぐったい。
顔に熱が一気に集中して、今にも爆発しそうだ。
「っ!もうむり……いじわる、しないで……。」
涙目になり、蚊の鳴くような声で降参すると、グレンはビクッとして固まった後、顎を乗せていた私の肩に今度は額をのせ私を強い力で一度だけぎゅっと抱きしめると、大きな溜息をついた。
暫くすると、
「あぁ、降参だ。フィーには一生勝てる気がしない。」
そう言うとクスクス笑い出してしまった。
「勝負なんかしてないよ?うぅ……いい加減離して。」
そう言うと今度は素直に離してくれて、心底ホッとする。
(ほんとうに、生きた心地がしなかった……)
ソファーに座り直して落ち着こうと深呼吸をするが、まだ心臓はドキドキしてるし、顔の熱も引かない。
横でクスクスずっと笑っているグレンをキッと睨むが、グレンの笑みは深くなるばかりだ。
「もうこのまま、測ってみた方がいいかもしれないよ?
緊張するよりいいだろう?」
そう言われ、ヤケクソになり手を魔力測定器に翳す。
すると、ふわっと水晶部分が光り、数字が出た。
「グレン!反応した!魔力を使えた、のよね?」
数字は出るが魔力の性質の色が出ない。ということは。
「うん、よかった。これで一歩前進だ。
それに、やっぱりフィーの魔力は無色透明だったね。
僕の仮説はほぼ証明されたというわけだ。」
「魔力の垂れ流し。」
「うん、だから体に残っている魔力量もこれだけしかないんだよ。」
魔力測定器に記されている数字は『10』。
同じ年の令嬢の平均魔力値は『100〜150』、平民でも『40〜60』だ。
私はそれよりもかなり低いという事になる。
ちなみに、平民が一日生活するのに必要な魔力量すら『30』と言われている。
私は一人で生活すら出来ないのだ。
さらに絶望的なのは魔術だ。
魔術の消費量の平均は、初級魔術で『10』、中級魔術は『50』、上級魔術になると『100』の魔力を消費する。
しかも私が扱えるのは他の属性よりも遥かに魔力消費が激しいといわれる『光属性』のみだ。
これでは初級の治癒魔術でかすり傷一つ治せない。
「うぅ。一つ解決したと思ったらまた問題が……。」
私は頭を抱えるが追い打ちをかけるようにグレンが新たな問題点を言う。
「フィーの場合の問題点はもう一つある。
というか、こちらの問題の方が大きい。」
「まだあるの?」
「フィーの正確な『総魔力量』を測れない事だよ。」
「総魔力量?」
聞きなれない言葉に首を傾げる。
「身体に溜めておける魔力の量の事だよ。
フィーは常に魔力を放っているから身体に溜まっているのは『10』だけ。
これじゃあ、君が普段どれだけの魔力を放出しているのか、全体の大きさが分からない。
結界維持に使う最低限の魔力量は魔塔の予想では一日『300』だ。
おそらくフィーの全魔力量はもっと膨大。
……急に蛇口を絞って『300』しか出さないようにしたら、行き場のなくなった残りの魔力が体内に溢れ返って、魔力暴走を起こしてしまうんだよ。
フィーの安全の為にも、魔力制御の前に総魔力量を測る事は必須だ。
その後に魔力制御の訓練をする。
まずは総魔力量を測る方法を考えなくてはね。
魔力制御の訓練期間は早くて2週間。
手こずると1カ月から2カ月はかかるだろうね。」
そのスケジュールに私は不満を漏らした。
「2週間でも長すぎるなぁ。
もっと早く終わらせる方法はないの?」
「フィー。」
溜息をつき、私の名前を呼ぶグレンの声は先程とは異なり、嗜める色が濃い。
「本来魔力の制御はもっと長い時間をかけてやるものなんだ。
何故かわかるかい?
命に関わるからさ。
制御を怠れば暴走が起きる。
だからじっくり時間をかけるんだ。
それほどまでに難しいんだよ。
早くする事なんて不可能だ。
フィー、焦って無茶をするのは愚策だよ。」
厳しくそう諭される。
正論だ。ぐうの音も出ない。
「ごめんなさい。」
グレンは私の頭を撫でると、私に疑問を投げかける。
「ねぇ、何故そんなにも急ぐんだい?」
私は肩をすくめてみせた。
「今、私に話せる事はなにもないの。
あくまでも私の想定しうる中での対策を講じてるだけで、確信的な何かがあるわけじゃないもの。
……それに、こういう裏工作は最小限の人数でやらないと失敗するものでしょ。
不確定要素は極力無くしておきたいの。」
「つまり、殿下と二人で何かを企んで動いているわけだ。
僕たちには内緒で。」
半眼でじっと見てくるグレンの視線を避けて、すっかり冷めてしまった紅茶を飲んだ。
「殿下が時が来たらちゃんと話すと思うから……。ね?」
私が苦し紛れにそう言うと、グレンは深い深い溜息を吐き、冷めた紅茶を一気に飲み干すのだった。
説明セリフが多いので、甘さが欲しい!とグレンに頑張ってもらったんですが、甘すぎましたか…?どうでしょう(心配)
続きがよみたい!面白い!と思って頂けたら高評価、ブックマークよろしくお願いします!作者大歓喜します!




