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ゼェゼェと荒い息をはき、体が汚れるのも厭わず横になった。
(まだ30分くらいしか経ってないよね。体力無さすぎじゃない?いや、リオがスパルタなだけ?)
そう思いながら、リオを見るとにこりといつもの笑顔。
(あ、鬼教官モードが終わった)
「大丈夫ですか?聖女様?」
くすくすと笑うリオに、
「もう…指一本、動かせない…。」
と返す私。元凶を恨めしく睨む。
そんな私に苦笑しながら、
「聖女様は体力作りから始めたほうがいいのでは?」
と言い、体を起こしてくれた。
「時間はあるから並行してやるよ。とりあえず毎日朝走ろうかなぁ。」
そんな事を言っていると、騎士数人がこちらに走って来るのが見えた。
「リオ様、我ら騎士団の者達と手合わせをお願いできないでしょうか!」
そう言って頭を下げる騎士達に、
「今、聖女様の護衛の任務中なので。」
と断るリオに、私は、
「え〜!私リオが戦ってる所見てみたい!ほら、先生のお手本って大切でしょ!?それに騎士団が強くなればアリス達の守りも固くなって、そうすればクリス殿下も喜ぶだろうし?
一石二鳥だね!ここは護衛がいらないくらい騎士が沢山いるし!ね、リオ!」
そう捲し立てると、溜息をつきながら
「…では、少しだけなら。」
と私を抱えて訓練所端の椅子に座らせ、騎士達を見ると笑顔を消した。
死屍累々。
「すっご…。」
最初は10人ばかりの騎士と戦っていたが、人数が少なくなったところで次々と他の騎士達も参戦していき、その数合わせて30ほど。
その全てがリオに翻弄されていた。
(流石最強の影)
目で追えない程のスピードで騎士を沈めていくリオにいつの間にか私の周りに来た騎士達が感嘆の声を上げた。
「目で追うのも難しいが、殆ど一撃だな。」
「やっばい、めっちゃかっこいいっす…。」
「この目で最強の片鱗を見ることができるなど…うぅ…我が人生いっぺんの悔いなし!」
(いや、それは悔いれよ。まぁ、分からなくはないけど。カッコ良すぎだよね)
「あの、そういえば聖女様はなぜ訓練を?あんな強い護衛がいれば必要ないのでは?」
そう1人の騎士が話しかけてきた。周りの人もうんうんと同意しつつ、私を見る。世間に流れる私の噂を知っているだろうに、その目には純粋な疑問のみで嘲りの色は浮かんでいない。
(流石は公爵家の騎士。出来た人ばかりだなぁ)
「えっと、確かにリオは強いし、アリス達も私なんかより全然強いけど。だからって私、守られるだけの聖女にはなりたくないの。彼女達を守れる聖女になりたい。想定できうる最悪の事態を潰す為にできる事は何でもやるつもり。」
そう言うと、騎士達は皆目を丸くして私を見た。
(変な事言ったかな?)
すると、1人の騎士が私の手を取った。
「強い人ですね、聖女様は!自分感動しました!自分も聖女様の力になりたーーー」
その瞬間その騎士の真後ろにリオが現れ、騎士の首元に短剣の切っ先をピタリと添えた。
「聖女様に触れるな。」
いつものふわっとした笑みもなく、ビリビリと殺気を漏らしながらリオが言う。
周りの騎士を見ると、無意識なのだろう。鞘に入った剣に手を添え震えていた。
「リオ、あの、彼は私の力になりたいって言ってくれてただけだから。」
私がそう言うと、リオの殺気が霧散した。首元の刃を退けながら、
「ええ。ですが、何かあってからでは遅いですから。」
と言うと、リオの顔にはいつもの笑顔があった。
「うん。分かってる。ありがとう、リオ。」
「私の部下が、大変申し訳ありません。」
騎士団団長が頭を下げ、私の手を握った騎士が90度のお辞儀をしながら謝罪する。
「大変な無礼を!本当に申し訳ありませんでした!」
「いやいや、こちらこそ騒がしちゃってごめんなさい。あの、また明日もこの訓練所の一角を借りてもいいかな?」
(騒ぎを起こしちゃったし、断られたらどうしようか…)
「もちろんです!聖女様が居られると士気も上がりますので。」
(お世辞だろうけど、少し嬉しいな)
「よかった…。あ、私の休憩時間だけ、リオと模擬戦したらどうかな?もちろんリオが良ければ、だけど。」
横に立ってるリオを見ると、にっこり笑いながら騎士団を見回し、
「構いませんよ。少し、弛んでいるようですし。」
と言った。
彼らを見るとブルブル震えていたが、リオが弛んでると言うならきっとそうなんだろう。頑張ってもらおう。いざという時に遅れをとることのないように。
騎士達は稽古に戻っていった。私ももう一度、リオに稽古をつけてもらいたいが、歩くのでいっぱいいっぱいの為、部屋に戻ることにした。
「聖女様、戻る前に髪を整えましょう?」
そう言うや否や、リオが私の髪留めを取った。ふわっとピンクブロンドが広がる。
「ちょ!リオ!大丈夫だよ!すぐお風呂入るし!それに…汗いっぱいかいてるから、その…」
「はい、じっとして下さいね。」
(うわぁ聞いちゃいない)
諦めて大人しくしていると、優しく髪を手櫛で整えてくれているのが分かる。たまに手が耳に触れてくすぐったい。
(無心無心無心!!)
目をぎゅっとつむって念仏のように唱えて時間が経つのを待った。
「ーーはい。終わりましたよ。」
そう声が聞こえて、緊張から解き放たれた。
ホッと息をつき、リオにお礼を言った。
「ありがとう、リオ。」
「いえ。では戻りましょうか。」
そう言いながら手を差し出しだされ、その手を掴み椅子から立つと、足がガクガクしているのが分かった。
「抱えて戻りますか?」
くすくす笑いながら言うリオに、
「大丈夫!!ぜんっぜん大丈夫だから!」
と答え歩き始めた。
(公爵邸を抱っこで戻るなんて、羞恥心で死んじゃったらどうするのよ!!…明日からの朝のランニング、頑張ろう!)
初日の失態を繰り返さないよう、決意を新たにする私だった。
明日はリオサイドのお話しです。
実は「このシーンが書きたい!」というのが入ってまして。お楽しみに〜!
続きがよみたい!面白い!と思って頂けたら高評価、ブックマークよろしくお願いします!作者大歓喜します!




