↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第2部 学園編 〜欲望の種【前編】〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/121

115 信じて待ってて

「ごめんね。」


ポロリと言葉が零れ落ちる。

離さないようにゼロの首に抱きつきながら、先程までのピリピリとした空気が霧散していることにホッとすると共に、罪悪感が心の中を埋め尽くす。


「私の我儘で、ゼロを苦しめて。

──こんなことさせちゃって、ごめんね。」


はぁ。と深い溜息が肩口から聞こえた。


「フィーネは悪くねぇよ。

俺が、お前の意思を無視して勝手にやったことだ。

あの日の恐怖と……お前を失うかもしれねぇっていう不確定の恐怖に勝てなかっただけだ。

──情けねぇ。」


そんな弱々しい声に、心臓のあたりがぎゅっとしてジワリと涙が溢れた。

ゼロを力いっぱい抱きしめる。


「私も、怖いの。

ものすごく、怖い。

本当は、リリスなんか呼びたくなんかないし……もう、帰りたいの。

でも、ここで逃げたらこの先の未来できっと後悔すると思う。

だから──ごめんね、ゼロ。」


「だから、謝んなって。泣くなよ。」


「泣いてないもん。」


「──フィーネ、下すぞ。ちゃんと立てよ?」


「まって!」


私の制止も聞かずに、ゼロはそのまま私の身体をゆっくりと足元から下ろした。

彼の首に回した腕を解かないまま、なんとか足先を着地させるが、膝にまったく力が入らない。

ゼロが首から私の手をそっと外した瞬間、私はその場にペタンと座り込んでしまった。

ゼロは私の目の前にしゃがみこみ、膝に肘を乗せて頬杖をつくと、私の様子に思わずといったふうに笑いをこぼす。


「ふっ。腰抜けてんのか。

まぁ、すげぇ勢いで落ちてたもんなぁ。」


そして、スッと目を細めて私の頬に大きな手をそっと添えると、目から溢れては零れ落ちる涙を親指で拭った。


「──やっぱ泣いてんじゃねぇか。」


涙でぼやけて、ゼロがどんな表情をしているのか分からない。

ただ、私にそう言ったゼロの声は包み込むように優しく、穏やかだった。

私は、頬に添えられている優しい手にそっと自らの手を重ねた。


「絶対に戻ってくるから。

ゼロが選んでくれた『私』を消したりなんかしないから。

信じて、待ってて。」


「……信じて、待つか。

仕方ねぇなぁ。いいさ。

待つのには慣れてるからな。」


ゼロは顎を私の頭に乗せると、ククッと笑ってそう言った。


申し訳なさと不安、そこに混ざる喜びと安心感。

──それに加えて、今まで感じたことのない、輪郭の曖昧なあたたかい感情。

ぐちゃぐちゃに絡み合った心のまま、私は彼の与えてくれる優しさに身を委ね、静かに泣き続けた。




♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢





腰を抜かしてしまった私はゼロに抱えられ、みんながいる場所に戻った。


リオがすぐさま私の側にやってきて心配そうな表情を浮かべながら聞いた。


「フィーネ様。お怪我は?」


「ないよ。大丈夫。

えっと、ところでみんなは何やってるの?」


ぐるりとあたりを見回すと、ラウール様は正座をしており、その前でアリスは仁王立ちになっている。──説教中だろうか。


殿下はその隣で鳥籠のようなものを持ち、目の前に掲げながらなにやら話している。おそらくあの籠の中にネロがいるんだろう。時折籠の中に指を突っ込み、ちょっかいをかけているようだった。


グレンは少し離れた場所で私達に背中を向け、何やら空中に魔導陣をいくつも出していた。

魔導陣を展開させる度に、この空間が歪んだり、色が変わったりしている。

この空間の解析でもしているんだろうか。魔法に目がないグレンらしい。

どうやら私が戻ってきたことにも気づいていないらしく、先程の転移で物申したい気持ちの私は、ムスッと頬を膨らませた。


「グレンはずっとあの様子ですよ。

何をしているんだか。

フィーネ様が戻ってきたことにも気付かないとは。」


腕を組みながら呆れたようにそう言ったリオは、スッとダガーを一つ手に出すと躊躇いもなくグレンに投げた。

グレンはこちらを振り向くことなく魔導陣でダガーを止め、くるりとダガーを反転させるとこちらに飛ばしてきた。


リオは飛んできたダガーを危なげなくキャッチしながら、グレンに話しかけた。


「グレン!師匠と、フィーネ様が戻りましたよ!」


「うん!もうちょっとだから!」


こちらをチラリとも見ずに、そう言うと魔導陣を次々出していく。


「あいつ、フィーネよりも魔法かよ。」


呆れたようにそう言ったゼロに、リオは苦笑してグレンを擁護した。


「グレンがネロを連れて戻ってきた時は、大変だったんですよ。

皆、ネロに対する怒りと、フィーネ様や師匠への心配が入り混じって、収まりがつかない状態だったんです。

それをグレンが「あの2人なら大丈夫だから」と、皆を落ち着かせるように諭してくれたんです。」


その言葉に、不思議そうにゼロは首を傾げた。


「俺のことも心配してたのか?フィーネだけじゃなく?」


「当たり前だろう。」


ラウール様が、眼鏡のブリッジを指で押し上げながらゼロの言葉に肯定しつつこちらに歩いてきた。

アリスにこってり絞られたのか、心なしかやつれた顔をしている。


「お前が転移する瞬間の表情を見たら、心配しない方がおかしいさ。

随分と追い込まれた顔をしていたからな。

──ネロのことは、もう、いいのか?」


ラウール様の瞳の奥に心配の色が見える。

その視線を受けると、ゼロは肩を落として項垂れた。


「まじかよ。ダセェ……。

──ネロのことはもういい。

フィーネに捕まっちまったからな。

信じて待つことにした。

悪かったな、ラウール。

お前に片棒を担がせるところだった。」


ラウール様は、ホッとしたように目元を和ませるとゼロの肩をポンと叩いた。


「ふっ。そうか。

謝らなくていい。

俺がゼフィロスについたのは、俺もお前と同じ意見だったからだ。

──ゼフィロス。

これからは1人で背負い込むんじゃなく、俺も共に背負わせろ。

昔とは違う。

もう、お前は1人じゃない。

そうだろう?」


ゼロが、目を見開いた後グッと眉根を寄せた。


「あぁ、それと後でアリスの説教が待ってるぞ。

……かなりお冠だ。覚悟しておいた方がいい。」


「ははっ。そりゃ、最悪だな。」


ラウール様が真剣な声でそう言うと、ゼロは目元を歪ませ、泣き出しそうなのを必死にこらえるようにして笑ったのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。