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『無能聖女』と言われている私が皆をハッピーエンドに導きます!〜悪役令嬢と親友になったら、天才魔術師達からの執着溺愛が止まりません〜  作者: 那月
第2部 学園編 〜欲望の種【前編】〜

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112/121

112 200年のその先

side:ネロ


「200年だ。」


「──?」


「お前らと別れて100年。

人間界に来てお前らが死んだことを知ってからさらに100年。

この200年、俺は孤独だった。

魔界での100年はまだよかったさ。

あっちには他に知り合いもいたしな。

それに、また会えると馬鹿みたいに信じてた。

──最後の100年は地獄だった。

お前らは死んじまってたし、いくら待ってもリリスの生まれ変わりには会えない。

そもそも、俺が生きてる間に生まれ変わるか確証もなかった。

それでも、会いたかったから待ったんだ。

1人で、地獄のような日々を過ごした。」


その時のことを思い出しているのか、ゼフィロスは眉根を寄せ苦しそうだった。


「なんで……。

それならなんで、リリスを選ばなかったのよ!」


「あの地獄を救ってくれたのは、リリスじゃねぇ。

フィーネだ。

俺の孤独に気付き、我慢するなと言ってくれたフィーネなんだよ。

お前、昔言ったよな。

愛しているのに、なぜ求めないのか。

何を犠牲にしてもかまわないと思えってさ。

俺はリリスを愛していたが、そこまで想うことは出来なかった。

あいつが幸せなら、それでいいと納得出来てたんだ。」


「今は……彼女に対しては違うというの?」


ゼフィロスはフッと幸せそうに笑った。

その瞳には固い決意がこもっていた。


「違うな。

俺は、俺の手でフィーネを幸せにしたいと思う。

誰にも渡したくねぇし、なによりフィーネを失いたくない。

あいつを失わないためなら何を犠牲にしてもいい。

フィーネを選んだあの日に決めたからな。

この『世界』があいつが消えることを望んだら、俺はこの『世界』を壊して消すってな。

──やっと手に入れた俺の幸せを奪わせはしない。

悪いな、ネロ。

お前がいると、フィーネが消えちまうかもしれねぇ。

不穏分子は消すのが定石《セオリー》だ。」


チラリと紅い瞳に懺悔の色が見えた。


分かってしまった。


ゼフィロスは、妾が眠っていた約150年という長い時間を『生きて』いた。

妾達と別れ、孤独と苦しみと悲しみと恐怖と共にあった200年の先。

今彼が手に入れた幸せが、あの希薄な欲をもつ彼女だというなら、その幸せもいつ失うか分からない恐怖と共にある。

指の隙間から零れ落ちそうな彼女を、必死に繋ぎ止める彼の欲望が、妾を殺すのだ。


振り上げられた剣を確認すると、妾はゆっくりと目を閉じた。


──リリスに、会いたかった。

──ゼフィロスに頭を撫でてほしかった。

──グリムにもっと話を聞いてほしかった。

──ティナとは会ったらまた喧嘩をするだろうけど、ほんの少しだけ、会いたい。


──消えたら愛しい彼に逢えるかしら。


目の端から涙が溢れた。





♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢





転移をすると、目の前の結界の中でゼロが剣を振り上げていた。

ネロは地面に縫い付けられているように動かない。


「──っ!ダメ──!!!」


グレンが結界に触れてそれを消したと同時に、ネロに結界をはって剣を防ぎ、その隙にリオがネロを回収した。

そして私達の周りに結界をはる。


「──チッ。喋りすぎたか。

ラウールは、足止めも出来ねぇのかよ。

──あぁ、あっちもやり合ってんのか。」


ゼロは髪を掻き上げながら舌打ちをすると、ラウール様の方を見て眉根を寄せた。

私はグレンの腕から離れると、つられてそちらに視線を向ける。アリスと殿下が何か沢山の人と戦っているのが見えた。


「なんで。」


リオの手の中でポツリと呟くネロは、先程までの勢いはなく、起き上がる気力もないようだった。


「ネ……えっと、ピィちゃん。怪我はない?」


「なんなのよ、そのふざけた呼び名は……。」


「いやだって、ピィちゃんが名前呼ぶなって言うから。

呼び名がないと不便だし。

それで、怪我は?」


「──っ!ムカつくわね!怪我はないわよ!

なんで、助けるのよ!

……もう、いいのよ。

ゼフィロスの願いは、欲望は痛いほど分かったから。

もう、消えてあげるのよ。

貴女もその方がいいでしょ?

妾をゼフィロスに渡すのよ。」


言葉を発しながら段々と意気消沈していくネロに、私は苦笑してそっと頭を指で撫でた。

指先に暖かな体温を感じる。


「嫌。

私は、ピィちゃんに生きてもらわないと困るの。

ピィちゃんの願いの全部は叶えられない。

だって私はまだみんなと一緒に生きていたいって思うから。

でも、出来る限りの事はする。

『会いたい人』に会えないのは辛いもんね。

ゼロは、私が止める。

ちゃんと話して、『納得して』もらわなきゃ。

グレン。

耳貸して。」


私がグレンに耳打ちをすると、グレンは目を見張り眉根を寄せた。


「──フィー、それは……。」


「大丈夫。お願い。」


私は真っ直ぐグレンを見ると、グレンは大きく溜息をついて頷いた。


「はぁ……。分かったよ。

リオ、行こうか。

先生を、止めよう。」


リオも大きな溜息をつくと、ネロを私の手に渡した。

そして私の頭をふわりと撫でた。


「また、無茶をするんですね?

まったく、フィーネ様はいつもいつも。

──師匠は、待ってくれているようですね。

相変わらず余裕で、ムカつきますねぇ。」


「まぁ、先生だしね。

けど、いつもより余裕はないみたいだよ。

ほら、意識がフィーにいってる。」


リオはスッと目を開けるとニヤッと笑い、拳をグレンの方に向けた。


「行きましょう。リベンジです。」


「ふふ。何度目かのね。」


グレンがその拳に自らの拳をコツンと合わせると、それを合図に2人がその場から立ち消えた。




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