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断罪後に前世を思い出した無能な元ヒロイン聖女は元悪役令嬢に保護されました!?  作者: 那月


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「ですから!グレンの魔術が失敗したんじゃないんですの!?」

「僕が失敗?ありえないね。フィーネちゃんは深く眠ってるだけだよ。精神の回復に時間がかかってるんだ。」

「あれからもう2日ですのよ!?このまま目覚めなかったら、私…。」

「アリス、大丈夫さ。医者も体は問題ないと言っていたろう?」

「そうですけど…。」

「そうだぞ、アリス。それにそんなに騒いでいたら煩くて起きてしま…」

パチリとラウール様と目が合った。あ、目がまん丸になってらっしゃる。


「聖女様。お水飲みますか?」

起き上がり頷くと、リオがコップを渡してくれたので有り難く頂いた。

体に水分が行き渡り、寝ぼけていた頭もシャキッとした気がした。


「ふぅ、美味しい…ありがとうございます、リオ。」

そう言うといつの間にか静かになった部屋を見渡した。


「えっと…おはようございまっすっ!」

アリス様が私に抱きついてきた。

「あの、アリス様…、皆様も。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。」

アリス様の背に手を置きながらそう言うと、何故か全員にため息をつかれた。

「フィーネ!」

私に抱きついていたアリス様がガバッと離れ、涙目で私の顔を下から覗き込む。所謂、上目遣い。

(ぐぅ…破壊力が凄すぎる…)

「迷惑じゃありません。心配したのです。すごくすごく心配したのですわ!今度一人で何もかもやろうとしたら、許しません!お仕置きですわ!今度から、報!連!相!です!」


そう一息で言うと、アリス様は「お返事は?」と涙目上目遣いで睨んだ。


(報連相、懐かしいな…。そしてアリス様のお仕置きはちょっとだけ興味がある)

私はくすっと笑うと、

「善処します。」

そう答えた。

「善処、ねぇ…」

グレン様が半眼になり、体をかがめて私の顔覗き込んできた。

「ひぃっ」

(近い近い近い!!)

「フィーネちゃんには僕からお仕置きが必要、かな?」

にっこり笑いながら全然目が笑っていないグレン様の肩をポンと叩き、

「こら、グレン。そう虐めてやるな。」

そうラウール様が言った。

ほっとするのも束の間、続けて

「大丈夫だ。まだ公爵家での教育は3週間ほどある。そういう所も含めてビシバシ教育してやろう、フィーネ。」

メガネのブリッジをくいっとあげて、ニヤッと悪いお顔で仰られた。


(もはや「嬢」もつけなくなった!こ、怖いんだけど〜!)


助けを求めるようにアリス様を見るが、うんうん、と頷いているし、殿下はそんなアリス様しか見ていない。最後の頼みとばかりにリオを見たがこちらもにっこり笑っているだけだ。うーん、味方がいない。


「それと、フィーネの処遇だが。男爵家はお取り潰しになる。聖女を平民のままにしておくわけにはいかないのだが、神殿が横入りをしてこない家門となると選定が難しくてな。

ヴァルハイト家か、アルカディア家か。またはその下の侯爵家にするか。絶賛会議中だ。決まり次第伝えよう。ちなみに、希望はあるか?」

「私の希望も聞いてもらえるんですか?」

一応私の意見も聞いてくれるのかと驚いた。

すると殿下が、

「何を言っている。当たり前だろう。君の今後の人生に関わる事だぞ。」

と真っ直ぐに私の目を見て言った。

「ありがとうございます。…アリス様をお姉様と呼んでみたい気持ちはありますけど、ヴァルハイト家だと権力が集中する為よくないでしょうねぇ。アルカディア家ならなんの問題もな…」

「ダメだよ。うちはダメ。」

最後まで言う前にグレン様が口を挟んだ。

「え…?あ、まぁ、確かに、評判の悪い聖女が一族の名前を冠するのは好ましくないですよね。」

「いや、そういう事じゃないんだ。…ただウチは皆基本魔塔に住んでいるもの同然だから、公爵家としての教育も出来ないだろうと思ってね。」

「なるほどですね…。では侯爵家で私を引き取っていただける場所がありましたら、そちらで。…本来なら『聖女』ですし、神殿に帰属するのが『正しい』んでしょうけど。」


神殿には私を排除しようとする輩が沢山いる。今この世で一番危険な場所だ。

(うーん、だとするなら侯爵家じゃなくて…)

考えに夢中で、ふと気付くと皆が私をじっと見ていた。

クリス殿下が口を開く。

「なぁ、フィーネ。私は君の『希望』を聞いたのだが。それではただの取捨選択でしかない。」

「えっと…」

「聖女様は、ダメな『いい子』ですね。」

そういうとリオは私の頭を優しく撫でた。

(?どういう事だろ?)

よく分からないと、首を傾げた。

分からないけど、頭撫でられるのって思ってたより気持ちいいな。

口元がふにゃと緩むのが分かる。

ピタッとリオは頭を撫でている手を止めた。珍しく目を少し見開き、鳶色の瞳に動揺の色が見える。

「リオ?」

名前を呼ぶと、

ハッとした彼はまたいつもの表情に戻り、

「なんでもありません。」と

私の頭をひと撫でして、影に消えていった。


(私なんかやっちゃった?)

そう首を傾げていると、殿下が、

「驚いた。珍しいものを見たな。」

と呟いた。

グレン様は何故か眉根を寄せてリオが消えた場所を見ており、ラウール様は、何か思案しているようだ。

アリス様は…何か興奮してらっしゃる?


三者三様のリアクションに困惑していると、ラウール様が、

「とりあえず、フィーネは食事を。胃に優しいものを運ばせる。今回の件の聴取や、これからの話はまた明日にでもしよう。ほら、皆部屋からでるぞ!」

そう言ったラウール様が皆様を部屋から出す。

だが、グレン様は一番最後に部屋から出る寸前で止まり、そのまま扉を閉めた。


そしてそのまま、『空間遮断結界』を張った。

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