104 かくれんぼ1
「じゃぁ、2分後に探しにいくね!よーいスタート!」
私が入口の扉の方を向き、そう言うとみんなの気配が遠ざかって行くのが感じ取れた。
ラウール様から貸してもらった懐中時計で時間を測る。
「──よし、2分たった!さぁどこかなぁ?」
鼻歌まじりに辺りを見回しながら真っ直ぐ突き当たりの窓の方に移動する私に、ちょこちょこと足元を歩いているゼロが、ニヤリとしながら私を見上げた。
「フィーネ、ヒントはいるか?」
「ううん。とりあえずはいらないかな。
そもそもさ、子供の頃ならともかく体が大きい男性が隠れることのできる場所って限られてるよね。本棚の影か、テーブルの下、あとは、そう。カーテンの裏、とかね?」
そう言いながら、ひらっとカーテンを捲ると、窓枠に座るグレンがいた。
「……グレン、お前隠れるの下手すぎないか?」
「無茶言わないでよ。
隠れる場所なんてほとんど無いんだよ?」
座っていた窓枠から飛び降りたグレンは、少しムスッとしながら、そう反論した。
「グレンは後で罰ゲームね。
うふふ……じゃぁ次は誰にしようかな?」
私は、ゼロにこそっと耳打ちをすると、鼻歌を歌いながら本棚の角を曲がった。
グレンは私の後ろを首を傾げながらついてくる。
1度、2度、3度と本棚の間を曲がりながら進んでいく。
そして4度目。
「ほい。捕まえた。」
素早く棚の上に登って待ち構えていたゼロが、気配を消してリオの頭の上に落ちた。
「なぜ、分かったんです?」
リオは目を見開いて唖然とした顔をしており、私は苦笑する。
「うーん。
なんでって、グレンもリオも分かりやすいんだよ。
リオは影だから隠れることに特化はしてるけど、ここには魔力を使わずに隠れる場所なんて少なすぎるでしょ?
他の人に隠れ場所を譲ると自分が隠れる場所なんてない。
そうしたら、自ずと隠れるんじゃなくて、私の背後を追う形にするかなって思ったんだよ。
そういうのも影の専売特許でしょ。」
「なるほど……。流石はフィーネ様ですね。」
「まだまだだなぁ。うちの弟子達は……。」
ゼロはリオの頭をポンポンと叩くと、私の頭に飛び移った。
リオは、若干悔しさを滲ませながらもいつもの笑顔で私に聞いた。
「ちなみに、次はどこを探すんですか?」
「もちろんラウール様だよ!」
「待ってください。
私はどこを探すのかを聞いたんですが……。
──もしかして、誰がどこにいるかをもう把握しているんですか?」
「ふふ。ナイショ。」
ルンルンとスキップをして移動する私に、ゼロが頭上からボソリと呟いた。
「俺も隠れる側の方が良かったんじゃねぇの?
すぐ終わっちまうじゃねぇか。」
「ダメだよー。
ゼロは小さいから隠れたい放題だもん。」
私はみんなと2階に上がる階段へ向かった。
「なんで2階に行ったって分かるんだい?」
「だって階段を登る足音がしたもん。
移動する方向がバレるように走っちゃダメだよね。
殿下もラウール様も甘いんだから。」
クスクス笑いながらそう言う私に、リオが苦笑しつつも楽しげに笑った。
「ふ。なんだか敵を追い詰める悪役のようですね。」
「えぇ!?悪役なんてそんなひどい!」
口を尖らせてリオに抗議する私を見て、ゼロが尻尾を頬に垂らしスリスリと撫でた。
「お前、すげぇ楽しそうだな。」
「楽しいよ!
こうやって友達と遊ぶなんてこと、殆どしたことなかったから。」
そう言いながら、私は少し遠くの方を見るように過去に思いを馳せた。
前世は、事故に遭うまでは小学校に通っていたが喘息持ちだったので走る遊びは避けていた。
私はいつも教室で本を読み、物語の中に没入しているような子供だったのだ。
今世は学校終わりは必ず両親の家業の手伝いに勤しんでいた。
あまり裕福ではなかった為、私も1人の労働力として動かなければ生活できなかったのだ。
それでも頑張って学校には行かせてくれた両親には感謝してもしきれない。
「なら、またやろうか。今度は魔術ありでね。」
グレンが私の頭を撫でながらニヤリと笑う。
それを聞いたリオは首を傾げて、ピアスをシャラっと揺らめかせた。
「いいんですか?
それなら私の一人勝ちだと思いますが。」
「リオ、影に入るのは禁止だよ?」
顔を引き攣らせて言うグレンに、私の口からクスクスと笑いが漏れる。
ゼロが私の頭上で、ククッと笑いながら鬼に立候補した。
「なら今度は俺が鬼な。」
「師匠が鬼だと、訓練になりそうでいやですねぇ。
あくまで遊びですからね、師匠。」
「先生が鬼だと秒で終わりそうだね。
先生は魔法と魔術は禁止にしたらいいんじゃない?」
「ええ、そうしましょう。」
「お前ら、それで勝てると思ってんのが未熟な証拠だな。」
「ふふっ。
今度は私も隠れる側になれるってことだね。
楽しみだなぁ。」
そう言いながら私は、階段の前を通り過ぎて階段裏をヒョイっと覗き込んだ。
「ラウール様もまた遊んでくれますか?」
「それが愛しい妹の願いなら、叶えてやろう。」
そう言いながら階段裏から出てきたラウール様が、私の頭を撫でてくれた。
「ラウールは階段裏にいたんだね。
でもフィー、さっきは階段を登って行ったって言わなかったかい?」
「うん。
何段か登って、途中1人が飛び降りた音が聞こえたから。
殿下やアリスはそんな危ないことしないだろうし、ラウール様かなって。」
「2階に上がろうと思ったが、上は隠れる場所がほとんど無いことに気づいてな。」
苦笑しながらそう言ったラウール様に、私はポケットから借りていた懐中時計を出した。
「あ、ラウール様、懐中時計お返ししますね。
──じゃぁ、あの2人を捕まえに行こうか!
こそっと!」
私はニヤニヤしながら、みんなを見回す。
するとリオがシャラリとタッセルピアスを揺らし、訝しげに首を傾げた。
「なぜ、こそっとなんです?」
そう問われ、私は一瞬きょとんとしたが、何を当たり前のことを言っているのだと言わんばかりに不満げに腰に手を当てた。
そして、堂々と宣言する。
「なんでって。
何のためにあの2人を最後にしたと思ってるの?
──推しカプの2人がいちゃいちゃしてる所を見るために決まってるでしょ!!?」
「お前、ほんとブレねぇなぁ。」
静かに、ルンルンと階段を登る私にゼロが頭上で呆れたように尻尾を下向きに揺らめかせた。
最初に見つかったのはグレンでした。笑
いつも魔術を駆使するグレンは、こういった頭を使って身一つで何かをすることが苦手です。
罰ゲーム、何にしようかな〜笑
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