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第27話 侵食される戦場

迷宮核の部屋は、もはや戦場というより“支配領域”だった。中央の黒い結晶から脈打つように魔力が流れ出し、床や壁を伝って空間全体に広がっている。その流れは目に見えるほど濃く、黒い霧となって漂い、触れたものすべてを鈍らせていた。

「……重い」

 レンが短く言う。

 その一言にすべてが詰まっていた。身体が重い。反応が遅れる。呼吸すら、どこか引っかかるような違和感がある。

「魔力の密度が異常です」

 リラが歯を食いしばる。

「これ……迷宮全体のエネルギーがここに集中しています」

 つまり、この空間そのものが“敵”に近い。

 ガルドが舌打ちする。

「チッ、動きづれえな」

 セリアが魔法を構えるが、火の勢いがいつもより弱い。

「出力が落ちてる……!」

 バルクも盾を構えながら押し返されている。

「圧が強すぎる!」

 その間にも――異形体は増え続けていた。

迷宮異形体 Lv20

迷宮異形体 Lv20

迷宮異形体 Lv20

迷宮異形体 Lv20

「……増えすぎだろ」

 思わず漏れる。

 倒しても、核から供給される魔力で再構成される。完全に無限湧きに近い状態だ。

「核を止めない限り意味がありません!」

 リラが叫ぶ。

 だが、その核の前にいるのが――

迷宮核侵食体 Lv???

 侵食体はゆっくりとこちらを見ている。動いていないのに、存在そのものが圧力になっている。

「……繋がる……」

 低く、掠れた声。

 その瞬間、黒い霧が一斉に広がる。

 ピロン。

 ──強制接続領域、拡大

「来る!」

 俺は咄嗟に分体網を使おうとする。

 だが――

 ノイズ。

 視界が揺れる。

 意識が引っ張られる。

「っ……!」

 リラが叫ぶ。

「使わないでください!」

「分かってる……!」

 これはダメだ。ここで分体網を広げたら、逆に侵食される。

 レンが前に出る。

「抑える」

 異形体を斬る。だが数が多すぎる。すぐに囲まれる。

 ガルドも突っ込む。

「全部まとめて潰す!」

 だが、その動きは荒い。強いが、無駄も多い。

「ガルド、無理です!」

 セリアが叫ぶ。

「黙ってろ!」

 連携が崩れている。

 いや、最初から噛み合っていない。

 その隙を突かれる。

 異形体の一撃がバルクを弾く。

「ぐっ……!」

 大きく後退。

 隊列が崩れる。

「バルク!」

「大丈夫だ……!」

 でも余裕はない。

 俺たちも同じだ。

「くそ……」

 分体網が使えない。

 連携が組めない。

 個々の力で戦うしかない。

 でも――

 それは紅蓮の牙と同じ状態だ。

「これじゃ……勝てない」

 はっきり分かる。

 このままじゃ押し切られる。

 その時。

 侵食体が一歩、前に出た。

 ズルリ、と身体の一部が核と繋がったまま伸びる。

「……見せてやる……」

 黒い霧が収束する。

 異形体が一斉に動きを止める。

 次の瞬間――

 爆発的に加速した。

「速っ……!」

 レンが反応するが、間に合わない。

 直撃。

 吹き飛ばされる。

「レン!」

 リラが叫ぶ。

 俺が駆け寄るが、その間にも状況は悪化する。

 ガルドが二体同時に相手をしているが、押されている。

「チッ……!」

 セリアの魔法も間に合わない。

 バルクが防ぐが、限界が近い。

「まずい……!」

 完全に押されている。

 その時だった。

 侵食体が再び俺を見る。

「……お前なら……できる……」

「……繋げ……」

 頭の中に声が響く。

 違う。

 これは“誘導”だ。

「やめろ……!」

 分体網が勝手に反応しそうになる。

 ピロン。

 ──接続要求

「くそっ!」

 意識が引っ張られる。

 繋がりそうになる。

 もしここで――

 完全に繋がったら。

「戻れ!」

 レンの声。

 はっとする。

 俺は後退する。

 息が荒い。

「今の……」

「危険」

 レンが言う。

「支配される」

 リラも頷く。

「完全に取り込まれます」

 ガルドが笑う。

「なるほどな」

「最悪の能力だ」

 でも。

 だからこそ。

「どうする……?」

 誰も答えない。

 いや、答えは分かってる。

 このままじゃ勝てない。

 何かを変えないといけない。

 その時、迷宮核が強く脈打った。

 ドクン。

 空間が歪む。

 魔力がさらに濃くなる。

「……限界が近い」

 リラが呟く。

「このままだと迷宮そのものが崩壊します」

 つまり――

 時間もない。

 戦力も足りない。

 状況は最悪。

 それでも。

 俺は前を見る。

 侵食体。

 迷宮核。

 そして仲間。

「……やるしかない」

 まだ、終わってない。

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