16 眠れません
夕食は猪肉が付きました。
僕の分は細切れにしてくれてます。うまうま。
夕食の片付けが済めばみんなで夜のお務めです。
礼拝堂でお祈りします。
ここの教会には主神であるメスティア様の像が祭壇に祀られています。
宗教について今勉強中ですので、わからないことも多いです。この国で主に信仰されているメストア教は多神教なのですが、ここにはまだメスティア様の像しかありません。
ファーザーロレンスが朝と夜のお務め時に、お話をしてくれるのですが言い回しというか言葉が非常に難しいのです。
シスタータバサは僕たち子供にもわかりやすく、噛み砕いて話してくれますが、ファーザーロレンスは子供に対する思いやりが少ないです。
お勤めが終われば就寝なので、アイリスに会いに行きたいのにシスタータバサが外に出してくれません。
「熱が下がったばかりです。春になったとはいえ、まだまだ夜は冷えますからね」
そして男の子部屋に押し込まれました。
意識が戻った当初はシスタータバサの自室に僕の寝床が置かれていましたが、今は孤児院の男の子部屋にあります。
三段ベッドが二つと、僕の寝床で他には何もありません。チェストを置く場所さえない部屋です。
女子部屋も同じです。去年までメリサが使っていた幼児用(僕の寝床と同じものです)は今は使うものがいないので空ですが。
男の子は僕を含めて六人。僕がベッドを使うようになったらいっぱいです。
女の子は四人なので二つベッドが空いてます。
「リューク、寝藁交換するつもりで空にしちゃったから、今日はベッドで寝な」
ポッドが下のベッドにおねしょシーツを広げてます。
もう一日治療室にいると思ったので、新しい寝藁をつめていなかったんですね。
治療室のベッドより固くて寝心地は悪いですが、幼児用の寝床より広くていいです。
落ちないように壁側に寄って寝ましょう。
「さあ、灯りをけすぞ」
灯の管理は年長のポッドに任されています。ポッドは全員ベッドに潜り込んだことを確認してランプの灯り消しました。
子供部屋はガラス窓が入っていないので、月明かりすら差し込まず、真っ暗です。
すぐに上段や隣から寝息が聞こえてきます。
僕もなんだか眠く……
眠く……
……
……なりません!
当然です。今日は一日中寝てましたよ。夕食前に起きたところです。眠くなるはずがありませんよ。
イビキをかくような子はいませんが、寝床が変わったせいもあるのでしょうか。一向に眠気がやってきません。
一時間ほど経ちました。
部屋の扉がそっと開けられます。ランプを手にシスタータバサが見回りに来たようです。
ランプの明かりが暗闇になれた目に眩しいです。
寝たふり、寝たふり……
シスタータバサの手が僕の前髪をかきあげ、額を撫でました。
そして静かに部屋を出ていきます。
シスタータバサが去るとまた辺りは闇に包まれました。
さて、やはり眠気はやってきません。
ちょうどいいではないですか。皆が寝静まっている間に、アイリスのところにいきましょう。
んしょ、んしょ、よっこいしょ、と。
ベッドでよかったです。いつもの寝床だったら一人で降りることができませんでした。
靴は音がなるので外に出るまで持っていきましょう。
この部屋に鍵などないのでそっと開けて廊下を覗きます。
廊下には明かり取り用の窓があるので、月明かりで少し明るいです。
この建物、礼拝堂以外は平家で、玄関側というか、表側にはガラス窓がありますが、表側から見えない部屋にはないのです。でも廊下にはあるんだよね。
さて、廊下を右に進むと空き部屋と厨房、そして裏口がありますが、当然鍵がかかってます。
左側は女子部屋、食堂、廊下を曲がるとシスターチェスタや院長室の前を通って礼拝堂です。
礼拝堂の扉も当然鍵がかかってますが、それ以前に礼拝堂の扉は大きいのとドアノブの位置が高くて手が届かない。
では、どこから外に出るか。
ふふふ。もう一箇所扉があるのです。
厨房の奥、薪置き場と井戸にすぐに行ける用勝手口が。
厨房の管理はシスターチェスタに任されています。
僕のおねしょシーツの一件でもわかるよう、シスターチェスタはうっかりさんです。
この前カレンが「シスターチェスタってば、また勝手口の鍵かけてないよ」と、ぼやいてました。
まあ、こんな貧乏な教会にお宝と言えば神様の像と、祭壇の神具くらいですが、神様関係を盗めばバチが当たりますからね。防犯意識が低いのです。
あ、裏口はシスタータバサが管理してますから、きっちり鍵が閉まってますよ。
トタトタと薄暗闇の中、厨房へ、そして真っ直ぐ突き当たりが勝手口です。
そっと勝手口のドアに手を伸ばします。
かちゃり。
はい、今日もシスターチェスタは通常運転のようです。
ここからはちゃんと靴を履いてっと。
今日もお月様は明るいです。
家畜小屋は孤児院からは少し離れたところにあります。
僕は一生懸命歩きます。
けれど病み上がりのせいか、薪置き場をくるっと回って裏口のあたりで体力の限界が……。
とほほです。家畜小屋までは倍以上の距離があるのに。
少し休憩してからがんばりましょう。裏口のステップに座って休みます。
「ワフッ」
アイリスの声が聞こえた気がして、顔を上げると家畜小屋の方からアイリスが駆け寄ってくるのが見えました。
僕たち、通じ合ってる?
ブクマ、評価などしていただけると琳太のモチベが上がるかも知れません。




