15 アイリスはとってもおりこうなのです
サブタイトル詐欺かも?
「リューク、リュークおきなさい」
ゆさゆさと身体を揺らされて目が覚めました。
あたりは夕暮れに染まって何もかもが赤みがかって見えます。
寝ぼけてぼんやりしていた意識が、アリアのちょっと乱暴ともいえる手で揺らされては目を開けずにいられるはずもなく……
「アリア……ちゅめたい」
いえ、アリアが冷たいと言っているのではありません。僕の下半身が今朝よりももっと冷たいのです。
「リューク……あっ!」
僕の言いたいことがわかったのか、僕に掛けられていた掛布をガバッとひっぺがされてしまいました。
「あーっ、シスターチェスタってば、おねしょシーツ敷いてないっ!」
「どうしたのアリア、リューク起きてる?」
アリアの声を聞いてかどうかはわかりませんが、戸口からカレンも顔をのぞかせました。
「聞いてよカレン。シスターチェスタってばベッドにおねしょシーツ敷いてないのよ。もうもうもう! 今からじゃ洗濯もできないわ」
掛布をめくられ、ぐっしょりの……うん、おむつだけじゃなくシャツまで濡れて冷たくて寒いです。
「アリア、とりあえず着替えさせた方がいいわ。また熱出したら大変だもの。あたし厨房でお湯もらってくるから」
カレンはそのまま部屋に入らず引き返して行きました。
僕はアリアに抱き起こされ、服もおむつもはぎ取られました。おおふ……
「とりあえずこの掛布巻いてなさい。おまるも取ってこなきゃ。リューク、じっとしてるのよ」
アリアは汚れた服とシーツを持って出て行きました。
お昼にシスターチェスタが、「熱を出した後だからしっかり水分とりな」とたくさん白湯を飲ませてきたのが原因です。そうです、不可抗力です、僕はきっと悪くないはず……
あ、カレンが戻ってきました。
「あら、アリアは? ああ、着替えをとりに行ったのね」
カレンは僕に巻き付けられた掛布を剥がすと、一人で納得しました。だって掛布とったら真っ裸ですもん。
桶のお湯でタオルを絞って僕の身体を、特にお尻周りをカレンが拭いてくれます。お湯気持ちぃぃ〜。
「カレン、ごめんね。さあリューク万歳して」
戻ってきたアリアはシャツを着せてくれました。またおむつするのかなと思ったらおまるにお座らされました。
「とりあえず座ってなさい。カレンこのマットどうしよう?」
僕をおまるに座らせて、二人はシミのついたマットを濡タオルでトントン叩き始めました。
僕が普段使っている寝床、まだ僕は小さすぎるので僕だけベッドじゃなくて、箱に寝藁を詰めて通気性の悪い何かの革みたいなのを敷いてます。あれがおねしょシーツと呼ばれるものだったのか。メリサは最近ベッドに移りました。僕ももう少ししたらベッドに移れるのかな、なんて現実逃避しつつオマルに座ってます。
今日の午後、僕のお世話係のアリアは外に出ていたので、シスターチェスタが面倒みることになっていたそうですが、シスターチェスタは僕にお白湯を飲ませた後は見てませんね。まあ、寝てましたからきたかもしれないけど僕にはわかりません。
「天日干しは明日にするしかないわね」
「匂い取れるかしら」
そしてお尻を綺麗にしてもらった後、やはりおむつを巻かれてアリアに手をひかれ、食堂に連行されました。
二人はおねしょした僕を叱りません。僕はおねしょするものと思われているからです。
ちくせう、最近は減っていたのに……
「リューク、もう平気か?」
ゼクスがやってきて僕のおでこに手を当てます。
「ゼクちゅ、アイリちゅは?」
僕は食堂を見廻しアイリスを探しますが、どこにも見当たりません。
「ファーザーロレンスが中に入れちゃダメだっていうから……」
「アイリちゅ、どこ?」
「昼間は救護室の窓の下にいたけど」
僕は靴をカコカコ鳴らして外に向かいます。けれど突然目の前に現れたものにぶつかり、ぽすんと尻餅をついてしまいました。
熱のせいでしょうか、また身体が思うように動きません。思うように動いたことないですけど、なんだか歩ける距離が短くなったみたいです。
僕は障害物を見上げます。
「リューク、アイリスでしたか? あの狼は使っていない山羊小屋です。あそこなら雨風にさらされることもないですから。昨夜は特別に部屋に入ることを許しましたが、礼拝堂や食堂に入れることはなりません」
シスタータバサが僕を見下ろしてそう言います。
うん、わかります。だって子山羊だって「獣は入れてはいけません」と普段から言われている。昨日僕の寝かされているベッドに入っていたのは特別。っていうか誰もアイリスを僕から離すことができなかったんだと思う。
アイリスはとっても頭がいいから僕たちの言葉を理解している。
あれ? そう言えばここの言葉と母さんたちが使ってた言葉って似てるようで違うんだけど、アイリスってこっちの言葉わかってるのかな?
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