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12 春の水はまだまだ冷たいのです

ブクマ100です*\(^o^)/*

そして誤字報告ありがとうございます



 はい。あの後も大変でした。

 ブラザーニックとシスターチェスタが駆けつけましたが、ブラザーニックはアイリスに驚き腰が抜け、シスターチェスタは雄叫びをあげ……すみません。シスターチェスタは女性ですので雄叫びではなく『雌叫び』と言ったほうがいいのでしょうか? 言葉というものは難しいですね。


 アイリスのことはゼクスやカレンたちが説明してくれて、ようやく危険ではないと納得してもらうまで、小一時間かかりましたよ。もうお腹すきました。



「中に入ることは許しません」


 ようやく落ち着いたシスタータバサが僕に向かってそう言いました。


「え、でも従魔だってわかってくれたんじゃあ……」


 ゼクスがシスタータバサの言葉に「なぜ?」と疑問と不安を表情の僕とシスターを見比べます。

 シスタータバサは厳しい目で僕だけではなく、みんなを見回しました。

 全員、その視線に思わず居住まいを正し、ピシッと姿勢をよくたちます。

 僕もアイリスの上で固まりました。


「リュークだけではありません。あなたたち全員です! 何ですかその姿は! 泥だらけではありませんか。泥だけではありません。イノシシの血も。そのような汚れたまま食堂に入ることは許しません! 全員井戸で洗ってらっしゃい!」

「「「「「はい! シスター!!」」」」


 叱られているのに、皆が笑顔に変わっていくというおかしな空気です。

 全員、揃って返事をした後、井戸に向かって駆け足です。アイリスもそのあとに続きます。


「綺麗になったらお食事にしましょう」


 僕たちの後ろ姿に向かってシスタータバサの声が追いかけてきます。

 みんな足を止めず、振り返って「「「「「はい! シスター!!」」」」と元気に返事をしました。



「ちゅめたい、ちちゅた」

「さあさあ、リュークはこっちにいらっしゃい」


 シスターチェスタが全員の着替えを取りに行っている間に、ポッドとカレンが桶で水をくみ、全員にぶっかけていきました。

 春といえ、井戸の水は非常に冷たいです。

 僕はシスターチェスタに服をひん剥かれ、ボロ(きれ)でゴシゴシと全身を擦られます。


 ちょっと待ってください。僕は転んでないので泥汚れは付いていないし、ベリーを食べていないので果汁も付いていないし、解体に参加していないので獣血も付いていないのですが。


 え、狼の毛がいっぱい付いてます? それは仕方ありません。


「リューク、アイリスも洗ったほうがいいんじゃないか? 俺手伝ってやるよ」


 ゼクスがそう行ってます。アイリスも一緒に食堂に入るためには綺麗にしなければなりませんね。


「アイリちゅ?」

「ワフ」


 アイリスは、みなまで言うなとゼクスに近寄ります。

 僕にアイリスを洗うのは無理ですもん。皆にお願いします。アリアがどこからか鉄櫛を持ってきました。あれは家畜ようですか? ブラッシングも必要ですね。



 そんなこんなでみんなが綺麗になった頃には、僕はクッション入りの箱に放り込まれており、夢の中でした。





「……ク、リューク」


 誰かが呼んでます。でも身体はだるくて、熱くてうまく動かせません。


「ほら、スープだよ。これだけでも飲みな」


 身体を抱き起こされ、スプーンが唇に押し当てられたので、少し口を開くとぬるめのスープが流し込まれました。

 野菜と肉の旨味が溶け込んだスープは、いつもの薄味ではなく、こんな状態じゃなければかぶりつきたくなる味でした。


「やはりリュークに水浴びは早ずぎでしたね」

「ですね。最近元気にしていたけれど、皆と同じように扱うには早すぎたようです」


 ゼクスが差し出すスープをもう一口飲み込むと、ゼクスの後ろにぼんやりとシスタータバサの姿が見えました。


 ああ、そうです。皆が身ぎれいにして食堂に集まった時には、僕は熱を出してぐったりでした。

 井戸水での水浴びは、僕の身体をすっかり冷やしてしまったようです。


 イノシシの内臓料理、食べそこねました。


 ゼクスとシスターチェスタの介護により、スープをいただいた後、オムツをぐるぐる巻きにされベッドに戻されました。


「クゥン」


 あれ、アイリスではないですか? 


「本当に狼と寝かせるんですか?」

「狼の体温で毛布を増やしたくらいには暖かいです」

「風邪がうつってはいけないので、今日はこちらの部屋に寝かせますが、1人にするより安心できますが、ゼクスはその、狼と一緒で大丈夫ですか」


 僕たちがいる部屋は、いつもの大部屋ではなく、孤児院調室の近くにある救護室、病気や怪我をした人を休ませるための病室です。


「大丈夫です。アイリスは具合の悪くなったリュークから離れませんし、誰かが一緒にいた方がいいなら、一番従魔に慣れている俺が適任でしょ」


 心配そうなシスタータバサに向かって、ゼクスがいい笑顔で答えます。

 ゼクスってば僕を心配してと言うより、アイリスと一緒にいたいだけなんじゃないですか?


「仕方ありません。ゼクスにお願いしますね。何かあれば院長室まで知らせてください。

「はい、シスター」


 シスターたちのやり取りは意識の外で、僕は綺麗に洗われてブラッシングもされてフカフカのアイリスのお腹のあったかさにまぶたを落としました。


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